【目的】本研究の目的は急性期を含む重症の脳卒中片麻痺患者を対象に,ウェルウォーク練習開始時情報から平地歩行自立時期を予測するノモグラムモデルを作成することである。【方法】社会医療法人三栄会ツカザキ病院急性期病棟に入院し,ウェルウォーク練習を実施した患者79名を対象とした。発症30,60,90,120日の平地歩行自立獲得をアウトカムとし,開始時の基本情報,身体・認知機能から獲得率を予測するモデルを求めた。【結果】年齢,発症後日数,Stroke Impairment Assessment Set体幹合計,Functional Independence Measure認知項目合計,Gait Ability Assessmentが有意な予測因子であった。【結論】急性期を含む重症例においても,本モデルにより平地歩行自立率の予測が可能であり,退院計画や目標設定を支援できる可能性が示唆された。
【目的】本研究の目的は,通所系サービス利用者の参加と生活空間に関連する環境因子の特徴を横断的研究により明らかにすることである。【方法】対象は,65歳以上の通所系サービス(通所介護,通所リハビリテーション)利用者99名とした。参加の指標はCommunity Integration Questionnaire, 生活空間の指標はLife Space Assessment, 環境因子の指標はHome and Community Environmentの下位尺度とした。仮説モデルを作成し,構造方程式モデリングにて検証した。【結果】参加の種類に応じて関係する環境因子が異なり,参加と生活空間には交通,住民の態度,コミュニケーション支援用具に関する環境因子が直接的または間接的に影響していた。【結論】参加の種類に応じて異なる環境因子が参加や生活空間に影響を与えることが明らかとなり,参加に関係する環境因子は,参加を介して間接的に生活空間へ影響を及ぼすことが示唆された。
【目的】他者との運動実践のどのような側面が,高齢者の運動継続に影響しているのかと,この影響の心理的メカニズムを検証した。【方法】65~74歳の社会調査会社の登録モニターにオンライン調査を2回(事前,半年後)行った。事前調査で他者と運動実践しており,かつ半年後調査へ有効回答した376名を解析対象とした。【結果】重回帰分析の結果,事前調査で運動の時間や場所を固定していることや,運動前後などに立ち話をする人がいることが,半年後の運動継続へ有意な正の影響を示した。ただしパス解析の結果,これらの影響は,運動ソーシャルサポート,運動への態度,運動の自己調整,および運動セルフ・エフィカシーを媒介していなかった。【結論】他者と運動を実践する際に,時間や場所を固定していることや,運動前後などに立ち話や挨拶をすることが,運動継続へ好影響を及ぼすことが示された。一方で,これらの心理的メカニズムは明らかにならなかった。
【目的】本研究の目的は,入院患者の移動方法に関わる要因を示し,妥当性を検討することである。【方法】348名の患者情報から,移動方法を3クラスに分類する複数の機械学習モデルを構築し,特徴量重要度の算出,知識蒸留による決定木の取得,および精度検証を実施した。【結果】Random ForestモデルのArea Under the Curveのマクロ平均(Macro-averaged AUC:以下,Macro-AUC)は0.95であり,Permutation Importance(以下,PI)により,Functional Balance Scaleの点数(PI=0.074),徒手筋力検査法の膝伸展スコア(PI=0.044),入院時からの経過月数(PI=0.023),改訂長谷川式簡易知能評価の合計点(PI=0.020),入院疾患分類(PI=0.016),半側空間無視の有無(PI=0.010)が上位要因と特定された。蒸留後の決定木は深度5でMacro-AUC 0.93であった。【結論】複数の要因が主要な因子であることが示され,説明可能な意思決定プロセスが可視化された。
【目的】本研究は,急性期脳梗塞患者に対する歩行学習支援ロボットOrthobot(以下,Orthobot)を用いた歩行練習の効果を検証することを目的とした。【方法】対象は発症4日目の急性期脳梗塞患者1例である。BABデザインを用い,従来の歩行練習期(A期)とOrthobotを併用した歩行練習期(B1期,B2期)を比較し,歩行速度,歩幅,歩容(Wisconsin Gait Scale)を評価した。データ解析には視覚的分析を用いた。【結果】全期間で歩行速度の改善が認められたが,Orthobot練習期における顕著な向上はみられなかった。一方,歩幅は経時的に増加し,Orthobot練習期でより大きな改善を示した。歩容も全般的に改善し,最終的に平地歩行の自立に至ったが,麻痺側の立脚期時間の短縮は限定的な改善にとどまった。【結論】急性期脳梗塞患者において,Orthobotを用いた歩行練習は,歩幅の改善に有効であり,歩容の改善にも寄与する可能性が示唆された。
【目的】脳卒中発症後に心疾患が判明した多疾患・重複障害(multimorbidity and multiple disabilities:以下,MMD)の心臓外科手術後に,理学療法によって運動耐容能の向上を経験した症例を報告する。【対象】70歳代後半,男性,脳梗塞を発症したが,運動機能および日常生活動作は良好な改善が予測された。その後重篤な大動脈弁狭窄症,虚血性心疾患が判明し心臓外科手術方針となったが,MMDであり運動耐容能改善は難渋すると予測された。【経過】脳梗塞発症32日後に心臓外科手術が施行され,急性期から段階的な身体活動量向上を促し,回復期と維持期での患者・家族教育を含めた包括的理学療法を実施し,心肺運動負荷試験の結果から運動耐容能の改善を認めた。【考察】MMDを有する脳卒中患者が心臓外科手術を享受する場合には総合的な予後予測と包括的理学療法が有効である。
【目的】プロポフォール注入症候群が疑われ,横紋筋融解症を伴う重症ICU獲得性筋力低下(Intensive Care Unit-acquired weakness:以下,ICU-AW)を発症した患者を担当し,低負荷高頻度での運動を実施してMedical Research Council Score(以下,MRCスコア),日常生活動作の改善に至ったため,その経過を報告する。【症例と方法】細菌性肺炎による気管支喘息重責発作で人工呼吸器管理となった50歳代男性。第13病日にプロポフォール注入症候群が疑われ,横紋筋融解症を伴う重症ICU-AWとなった。その後,早期離床と低負荷高頻度の運動療法を過負荷に注意しながら実施した。【結果】約3ヶ月でMRCスコアが5点から52点,機能的自立度評価法(FIM)が123点まで改善し自宅退院となった。【結論】横紋筋融解症を伴う重症ICU-AW患者に対して,過用性筋力低下に注意して低負荷高頻度の運動療法を実施することは安全で有効な治療法である可能性が示唆された。
【目的】メトロニダゾール脳症(Metronidazole-induced Encephalopathy:以下,MIE)とビタミンB6欠乏症を呈し,その神経症状によって日常生活動作(Activities of Daily Living:以下,ADL)が高度に低下した症例を報告する。【症例紹介】80代,男性,入院前はADLが自立していたが,肝膿瘍治療中に低下し,当院に入院した。経過中にMIEが診断されたが,原因薬中止後も神経症状が残存し,ビタミンB6欠乏症も明らかとなった。【経過】失調症状,感覚障害に対して段階的な運動療法を実施し,リハビリテーション目的の転院を経て,自宅退院に至った。退院3ヶ月後も神経症状は残存しているが,改善傾向にありADLはほぼ自立している。【結論】MIEやビタミンB6欠乏症は稀であるものの,ADLの回復に長時間を要することがあり,リハビリテーション職種のアセスメントによる早期発見と長期支援が必要である。