【目的】急性期くも膜下出血患者の脳血管攣縮期における受動的立位時の脳血流動態について,超音波画像診断装置を用いて明らかにすること。【方法】急性期くも膜下出血患者13名に対してtilt tableを用いて60度head up tiltを実施し,経頭蓋カラードプラ法(transcranial color-coded sonography)で安静臥位および60度head up tilt時の脳血流動態を測定した。脳血流動態は中大脳動脈血流速度(収縮期,拡張期,平均),内頚動脈血流速度(収縮期,拡張期,平均),内頚動脈血流量および中大脳動脈/内頚動脈収縮期血流速度比を測定した。【結果】中大脳動脈平均血流速度は安静臥位時と比較して60度head up tilt時で有意に低下した。【結論】急性期くも膜下出血患者において60度head up tiltは脳血管攣縮を引き起こさないが,中大脳動脈平均血流速度を低下させる可能性がある。
【目的】本研究の目的は,気腫合併肺線維症患者に対する運動療法の多様性を要約すること,および研究ギャップを明らかにすることである。【方法】本スコーピングレビューは,2024年3月に9つのデータベースにて検索を行った。肺気腫と肺線維症の両方を有する参加者に運動療法を行った研究を対象に,研究の特徴,介入の特性,報告された介入後の結果について要約した。【結果】29件の研究が特定され,対照群と比較した介入研究はなく,ほとんどが学会抄録の形式で報告されていた。運動療法の内容は,全身持久力トレーニングおよび筋力トレーニングが低強度から実施されていた。介入後の結果について,呼吸機能や最低percutaneous oxygen saturation,自覚症状,身体機能,健康関連quality of lifeや身体活動性などが報告されていた。【結語】今回の結果から,気腫合併肺線維症患者に対する運動療法のエビデンスは不十分であることが明らかとなった。
【目的】呼吸筋を主とした筋力低下を呈した重症筋無力症(Myasthenia Gravis:以下,MG)症例に対して呼吸パターンの変化に着目して離床基準を設定し理学療法介入した結果,MG症状の増悪なく,自宅退院に至ったため報告する。【症例紹介】症例は40歳代の男性。MGクリーゼと診断されて入院し,内科的治療と並行し第2病日からリハビリテーション治療を開始した。非侵襲的陽圧換気療法中は,ストレッチや呼吸筋リラクセーションを中心に介入した。呼吸状態の改善がみられた第59病日より,過負荷に留意した離床基準を設定し離床を開始した。呼吸パターンは,グレイド評価法を用いて離床基準の一つとして設定した。呼吸状態の増悪なく入院前日常生活活動(Activities of Daily Living:ADL)を再獲得し,第103病日に退院した。【結論】呼吸パターンの評価は,クリーゼを呈したMG症例の離床基準の一つとして有用である可能性が示された。また,グレイド評価法は呼吸筋の改善を経時的に追うことができる簡便なツールであった。
【目的】足部配置戦略障害を呈する歩行障害に対し,急性期から速歩条件での歩行練習を実施した理学療法の経過について報告する。【対象】胸椎硬膜内髄外腫瘍手術例で足部配置戦略障害による歩行障害を呈した68歳の女性である。【方法】術翌日から4輪型歩行車歩行を実施したが,足部の接地が不規則となる足部配置戦略障害を認めた。足部配置戦略障害による歩行障害の改善を目的に,術後2日目から吊り下げ型体重免荷式歩行器歩行練習,12日目からトレッドミル歩行練習を開始した。【結果】足部配置戦略障害は改善傾向を認め,術後2週時に歩行は4輪型歩行車で自立した。術後3ヶ月時には独歩での屋外歩行を獲得していたが,術後6ヶ月まで立位姿勢制御の異常は残存し,階段昇降に手すりを要した。【結語】速歩条件での歩行練習は足部配置戦略障害による歩行障害の改善の一助となる可能性がある。