2019 年 46 巻 2 号 p. 73-82
【目的】癌性悪液質に伴う骨格筋萎縮に対する運動介入効果を検証し,骨格筋タンパク質代謝制御の分子機構に与える影響を明らかにする。【方法】CD2F1 系マウス(雄性,7 週齢)を対象とし,マウス大腸癌由来細胞(C26)の皮下移植による実験的悪液質誘発モデルを作成した。また自発走運動を行わせ,悪液質に伴うタンパク質代謝制御機構の変化に対する運動介入の影響を解析した。【結果】C26 細胞移植に伴い体重および骨格筋重量は有意に低下し,ユビキチン- プロテアソーム系タンパク質分解の指標であるAtrogin1 タンパク質発現量の増加,およびタンパク質合成系の制御因子であるmTOR のリン酸化の低下が認められた。一方で身体運動介入により,悪液質誘導性の変化はCON 群と同レベルに抑制された。【結論】走運動介入を行うことで,悪液質に伴い負に傾いたタンパク質代謝制御機構が是正され,骨格筋量の維持に貢献している可能性が示唆された。