Physical Therapy Japan
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Research Reports (Original Article)
Factors Influencing Home Discharge for Intensive Care Unit Patients
Hitoshi ITAGAKI Ken MIYAGAWAMasayuki YAGI
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2026 Volume 53 Issue 1 Pages 29-35

Details
要旨

【目的】本研究の目的は集中治療室入室患者における自宅退院の可否に影響を与える因子を検討することである。【方法】対象は,48時間以上集中治療室に入室しリハビリテーションを実施した216名を自宅退院群106名と転院群110名の2群に分類した。単変量解析および自宅退院の可否を目的変数としたロジスティック回帰分析を実施した。加えて,Receiver Operating Characteristic(以下,ROC解析)を実施し臨床的妥当点を求めた。【結果】ロジスティック回帰分析では,入院日数,集中治療室退室時のFunctional Status Score for the Intensive Care Unit(以下,FSS-ICU)が自宅退院に影響する独立した因子として抽出された。ROC解析による集中治療室退出時のFSS-ICUのカットオフ値は20点であった。【結論】集中治療室退出時までに,基本動作や移動能力を獲得することが,自宅退院の可否に影響を与える可能性がある。

Abstract

Objective: To examine the factors influencing the feasibility of home discharge for intensive care patients.

Methods: The study population consisted of 216 patients who were admitted to the Intensive Care Unit (ICU) for 48 hours or more and underwent subsequent rehabilitation. Patients were classified into two groups—a home discharge group (n=106) and a transfer group (n=110)—and univariate and logistic regression analyses were performed with home discharge feasibility as the dependent variable. Additionally, Receiver Operating Characteristic (ROC) analysis was conducted to determine clinically valid cutoff points.

Results: Logistic regression analysis identified length of hospital stay and Functional Status Score for the ICU (FSS-ICU) at ICU discharge as independent factors influencing home discharge. The ROC analysis-based cutoff value for the FSS-ICU was 20 points.

Conclusion: Acquiring basic motor skills and mobility capabilities by the time of ICU discharge may influence the likelihood of home discharge.

はじめに

在院日数の短縮化1が進む急性期医療において,どの程度までの患者の回復が可能であるかの予後予測をすることは容易ではない。予後予測に基づき,自宅退院の可否や転院の必要性などの転帰先をあらかじめ予測し,早期に調整する役割が急性期医療には求められる。このような一連の転帰の検討は,日々の臨床場面で繰り返し用いられている。一般的に予測時期が早ければ転帰を予測する精度は下がり,遅ければ予測することの意義が薄れるもの2とされている中で急性期,とりわけ集中治療室入室患者の転帰予測をすることは更に困難を極める。集中治療室入室患者の転帰予測を難しくさせる原因として,重症度が高く,複数の疾患が組み合わさるという特性を有し,刻々と患者の病態に変化が生じること3が挙げられる。集中治療室で治療を受けている患者の多くは,人工呼吸器や補助循環装置などの医療機器を装着している割合が高く,生命維持と並行しリハビリテーションを実施している4。また,鎮静剤や循環作動薬などの薬剤の影響を受けやすい他,緊急手術や処置などにより,安静を余儀なくされることもある。

しかしながら,集中治療室という特殊な環境下でのリハビリテーション医療を取り巻く環境は大きく変化しており,急性期治療において標準化されたものとなりつつある。段階的な離床プロトコルの導入5や早期リハビリテーション介入効果6など様々な知見が得られ,指針の公表7や重症患者リハビリテーション診療ガイドライン8の作成が行われてきた。そのような背景を踏まえ,我々リハビリテーション職種は,客観的な評価に基づいて転帰予測という臨床判断をすることが求められている。早期から転帰予測をすることにより,様々な専門職種間での共通の目標が設定され,多職種連携を促進するとされる9。自宅退院に向けた取り組みや早期からの転帰先への調整など,転帰予測を踏まえ,多職種による意思決定がなされる。

本研究における転帰予測は,自宅退院の可否に焦点を当て調査を実施したものである。自宅退院の可否の転帰予測において経験則とは異なる科学的根拠に基づいた形での臨床判断の一助としての活用が期待される。先行研究においても自宅退院の可否に影響を与える因子の研究は,急性期脳血管障害患者10や回復期リハビリテーション患者11での報告が多数を占める現状である。集中治療室入室患者の身体機能評価の妥当性1213は報告されているものの,自宅退院の可否に影響を与える因子に焦点を当てた検討は極めて少ない。

そのため,本研究の目的は,集中治療室入室患者における自宅退院の可否に影響を与える因子の検討をし,判断に至る根拠を提示することである。本研究から得られる知見は,集中治療室入室患者特有の医学的背景を考慮した,転帰予測の構築および臨床場面の活用に寄与するものと考えられる。

対象および方法

1. 対象

本研究は,単一施設で行われ,診療録による後方視的調査を実施したものである。期間は,2022年4月1日~2023年3月31日までとした。

解析対象のフローチャートを図1に示す。集中治療室に48時間以上入室しリハビリテーションを実施した436名のうち選択基準を満たした216名を解析対象とした。選択基準は,重症度の判別が可能かつ離床を実施したものとし,自宅退院群106名(49%)と転院群110名(51%)の2群に分類し調査を実施した。

図1 対象者の取り込み基準の説明

集中治療室に入室した436名のうち,除外基準(220名)を除き取り込み基準を満たした216名を対象とした.自宅退院群106名,転院群110名の2群に分類した.

本研究における離床の定義は,集中治療医学会が定めるエキスパートコンセンサス7に基づき立位の実施をもって離床開始とした。除外項目は,死亡退院例,欠損データ例,離床困難例,入院以前のActivities of Daily Living(以下,ADL)が床上活動レベル例,施設退院例とした。

2. 倫理的配慮

本研究は,ヘルシンキ宣言(2013年10月修正)に基づく倫理原則,および「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」(平成26年12月)を遵守した。松戸市立総合医療センター倫理委員会の承認(R5-29)を得て行われた。本研究の目的および内容については,松戸市立総合医療センターのホームページにてオプトアウト方式により対象者に告知した。得られた調査項目は研究目的以外では使用せず,匿名化し,患者のプライバシーに配慮した。

3. 調査項目

評価項目は,1)基本属性,2)臨床指標,3)集中治療室入室時からの経過,4)理学療法評価に分類した。

1)基本属性

基本属性は,年齢,性別,Body Mass Index(以下,BMI),入院以前のADL,同居家族の有無とした。入院以前のADLは,自立・介助歩行・車椅子上での生活が主となる対象に分類した。入院以前のADLや同居家族の有無については,入院時に医師または看護師の問診により対象者または家族に確認した。対象者や家族からの聴取が困難な場合には,リハビリテーション開始時や退院調整の段階で診療情報提供書やソーシャルワーカーを通じて情報を取得した。

2)臨床指標

臨床指標は,重症度の判別をAcute Physiology And Chronic Health Evaluation(以下,APACHEII score),人工呼吸器装着の有無,人工呼吸器装着日数,外科的侵襲の有無,最低Albumin値(以下,Alb値),最大C-reactive protein(以下,CRP値)を調査した。人工呼吸器装着基準は,術後の一時的な管理を除外するため,48時間以内の人工呼吸器装着症例は除外した。外科的侵襲の有無は,血管内治療例は除外し,侵襲を伴うものを基準とした。CRP値は入院経過中の最大CRP値とした。Alb値は,半減期が長いことを考慮しBromocresol Purple Modified Method(BCP改良法)を用いて測定したものとし,経過中の最低値を検査結果とした。

3)集中治療室入室時からの経過

集中治療室入室時からの経過は,入院日数,集中治療室在室日数,リハビリテーション開始までの日数,Intensive Care Unit-acquired Delirium(以下,ICU-AD)を調査した。集中治療室に再入室した際は,前回入室時との合算での在室日数とした。リハビリテーション開始までの日数は,集中治療室に入室した後に実際に理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が直接介入を実施した日とした。集中治療室入室経過中に発症したせん妄をICU-AD1415とし,看護記録よりConfusion Assessment Method for the Intensive Care Unit(CAM-ICU)で陽性と判断された場合に,せん妄ありとした16

4)理学療法評価

理学療法評価は,集中治療室退出時のFunctional Status Score for the Intensive Care Unit(以下,FSS-ICU)1718,離床開始までの日数(立位・車椅子乗車もしくは歩行開始までの日数)を評価した。FSS-ICUは,臨床経験5年以上を有した理学療法士が測定した項目を採点した。評価項目は,「寝返り」,「起き上がり」,「端座位保持」,「立ち上がり」,「移動項目(45 m)」の5項目から構成される。配点は,Functional Independence Measure(FIM)の評価法に準ずるものであるが,「医学的および身体的制限があり,動作自体が困難な状態」は,0点とし,0~7点の8段階で評価を実施した。移動項目では,Needham19が定める採点方式に基づき,歩行および車椅子自走も採点対象として扱った。離床開始までの日数は,職種を問わず初回離床を実施した日とした。

4. 統計学的解析

自宅退院群と転院群の2群に分類した。Shapiro-Wilk検定を実施し,変数の正規性を確認した。正規分布を示す場合は,平均値±標準偏差(mean±SD),正規分布を示さない場合は,中央値[四分位範囲]で表記した。

単変量解析では,自宅退院群と転院群の各種評価項目の比較を目的に,正規分布を示す場合はt検定,正規分布を示さない場合はWilcoxon順位和検定を実施した。カテゴリー変数に対してχ2検定,Fisher正確度検定を実施し,度数(%)で表記した。

多変量解析では,自宅退院の可否に影響を与える因子の抽出を目的にロジスティック回帰分析を実施した。目的変数を自宅退院の可否とし,自宅退院群を「1」,転院群を「0」のダミー変数として投入した。説明変数は,単変量解析で有意差を認めた項目(p<0.05)を選択し,過剰適合に配慮したうえで強制的に投入した。この際,Spearmanの順位相関関数を用い相関係数|r|が0.7以上を多重共線性ありと判断し2021,臨床的意義が高い方の項目を採用した。ロジスティック回帰分析のモデル適合性の判断は,モデルχ2検定を実施した。説明変数の適合度はHosmer-Lemeshow検定を実施した。

加えて,ロジスティック回帰分析から得られた独立した因子のカットオフ値および正確度の検討を実施した。Receiver Operating Characteristic(ROC)曲線を描写し,Youden indexを基にカットオフ値の算出をした。正確度の検討は,Area Under the Curve(以下,AUC)により算出し,得られた面積により評価を実施した。AUCの予測能は0.5~1.0の範囲で表され,0.7以上は中等度以上,0.9以上であれば高度と「1」に近い程優れた結果を示すとされる22

統計ソフトは,R version4.2.3を使用し,有意水準は5%未満とした。

結果

1. 対象者全体の特性

本研究における対象者全体の特性(表1)として,年齢65.5[53.8–78]歳,BMI 22.7[19–25]kg/m2,男性126名(58.3%),女性90名(41.6%)であった。ICU入室時のAPACHEII scoreは24.1±8.1と高値を示し,外科的侵襲を要した割合は98名(45.4%)と半数近くを占めた。人工呼吸器装着の割合は104名(48.2%),人工呼吸器装着日数は,14.6[5.8–19]日であった。ICU-AD発症率は111名(51.4%)であり,人工呼吸器を装着した患者のICU-ADの発症率は80名(76.9%)と高値を示した。最大CRP値は15.7[7.1–23.2]mg/dLと高値を示し,最低Alb値は2.39[1.9–2.8]g/dLと低値を示した。同居家族を有する割合は,169名(78.2%)であり,入院以前のADLでは,自立が191名(88.4%),介助歩行・車椅子上での生活が25名(11.6%)であった。集中治療室退出時のFSS-ICUは,17.1[5–24.5]点,離床開始までの日数は,立位13.5[5–14.3]日,車椅子乗車もしくは歩行開始までの日数は14.7[5–18.6]日であった。なお,離床の基準と合致しないため,本研究の解析対象ではないものの,端座位開始までの日数は11.1[4–13]日であった。

表1 対象者の基本属性・臨床指標・集中治療室入室時からの経過・理学療法評価

全体(n=216)自宅退院(n=106)転院(n=110)p値
年齢(歳)65.5 [53.8–78]66 [52–75]72.5 [58.5–80]<0.01
女性n(%)90 (41.6)50 (23.1)40 (18.5)0.11
BMI(kg/m222.7 [19–25]22.3 [19–25.1]20.1 [19–24.2]0.32
APACHEII score(点)24.1±8.121.5±7.826.6±7.7<0.001
Alb値(g/dL)2.39 [1.9–2.8]2.6 [2.1–3]2.2 [1.7–2.5]<0.001
CRP値(mg/dL)15.7 [7.1–23.2]10.6 [5.8–21.6]17.4 [9.6–24.6]<0.01
入院日数(日)47 [23–61.3]25 [16.3–35.6]56 [33.3–86]<0.001
集中治療室在室日数(日)14.4 [6–18]8 [5–13.8]14 [8–22]<0.001
リハビリテーション開始までの日数(日)5.5 [2–7]3 [2–6]5 [3–8]<0.001
人工呼吸器装着
装着ありn(%)104 (48.2)39 (18.1)65 (30.1)<0.01
装着なしn(%)112 (51.8)67 (31)45 (20.8)
呼吸器装着日数(日)14.6 [5.8–19]9.7 [3.5–12]17.6 [7–22]<0.01
ICU-ADありn(%)80 (76.9)28 (26.9)52 (50)0.34
ICU-ADなしn(%)24 (23.1)11 (10.6)13 (12.5)
外科的侵襲
侵襲ありn(%)98 (45.4)45 (20.8)53 (24.5)0.4
侵襲なしn(%)118 (54.6)61 (28.2)57 (26.4)
せん妄(ICU-AD)
ありn(%)111 (51.4)42 (19.4)69 (31.9)<0.001
なしn(%)105 (48.6)64 (29.6)41 (19)
同居家族
ありn(%)169 (78.2)81 (37.5)88 (40.7)0.52
なしn (%)47 (21.8)25 (11.6)22 (10.2)
入院以前の日常生活自立度
自立n(%)191 (88.4)98 (45.3)93 (43.1)0.053
介助歩行n(%)20 (9.3)8 (3.7)12 (5.6)
車椅子上での生活n(%)5 (2.3)0 (0)5 (2.3)
集中治療室退出時FSS-ICU(点)17.1 [5–24.5]24 [19.3–31]8 [5–18]<0.001
端座位開始までの日数(日)11.1 [4–13]5 [2.6–8]9.5 [5–16.8]<0.001
立位開始までの日数(日)13.5 [5–14.3]6 [4–9]11.5 [8–22]<0.001
車椅子乗車・歩行開始までの日数(日)14.7 [5–18.6]6 [4–10]13 [8–22.8]<0.001

平均値±標準偏差,中央値[第1四分位数–第3四分位数].カテゴリカル変数:度数(%)で表示.

BMI: Body Mass index, APACHEII score: Acute Physiology And Chronic Health EvaluationII, Alb: Albumin(血清アルブミン値), CRP: C-reactive protein, FSS-ICU: Functional Status Score for the Intensive Care Unit.

2. 自宅退院群と転院群の各種評価項目の比較

結果を表1に示す。基本属性では年齢の項目のみ有意差が認められた。臨床指標では,APACHEII score,人工呼吸器装着の有無,人工呼吸器装着日数,最大CRP値,最低Alb値で有意差が認められた。集中治療室入室時からの経過では,入院日数,集中治療室在室日数,リハビリテーション開始までの日数,ICU-ADで有意差が認められた。理学療法評価では,集中治療室退出時のFSS-ICU,立位開始日・車椅子乗車もしくは歩行開始までの日数の各離床開始までの日数で有意差が認められた。

3. 自宅退院の可否に影響を与える因子の抽出

ロジスティック回帰分析の結果を表2に示す。自宅退院の可否に影響を与える独立した因子として,入院日数と集中治療室退出時のFSS-ICUが抽出された。入院日数は,オッズ比:0.97,95%CI:0.96–0.98,p<0.01であった。集中治療室退出時のFSS-ICUは,オッズ比:1.16,95%CI:1.10–1.20,p<0.001であった。また,ロジスティック回帰分析を行う際,多重共線性の確認では,Spearman順位相関検定において,集中治療室在室日数と人工呼吸器装着日数で|r|は0.83,立位開始までの日数と車椅子乗車もしくは歩行開始までの日数で|r|0.95という結果が認められた。

表2 ロジスティック回帰分析結果

変数名オッズ比95%信頼区間p値
下限上限
入院日数0.970.960.98<0.01
集中治療室退出時FSS-ICU1.161.101.20<0.001

モデルχ2検定:p<0.001,Hosmer-Lemeshow検定:p=0.564.

ロジスティック回帰分析の結果,入院日数と集中治療室退出時のFSS-ICUが抽出された.入院日数が1日減ると1.03倍自宅退院しやすくなる.集中治療室退出時のFSS-ICUからは,点数が1点増えると1.16倍自宅退院しやすくなるという結果が得られた.

4. 抽出された因子の正確度

正確度の検討結果を図2表3に示す。集中治療室退出時のFSS-ICUのカットオフ値は20点であった。AUCは0.847となり,感度87.3%,特異度67.9%であった。カットオフ値に対する判別適中率は,自宅退院群で76.6%,転院群で78.0%,全体で76.4%となった。

図2 FSS-ICUのカットオフ値

集中治療室退出時のFSS-ICUのCut off値は20点という結果になった.AUCは0.847となり,感度87.3%,特異度67.9%であった.

表3 カットオフ値に対する判別適中率

対象者予測グループ判別適中率
自宅退院転院
自宅退院群(n=106)792776.6%
転院群(n=110)248678.0%
全体(n=216)76.4%

FSS-ICUのカットオフ値20点に対する判別適中率を示す.自宅退院群の判別適中率は76.6%,転院群78.0%,全体76.4%という結果が得られた.

考察

本研究は,集中治療室入室患者の自宅退院の可否に影響の与える因子を,診療録による情報を基に後方視的に調査を実施したものである。

本研究の対象は,年齢の中央値65.5歳であり,65歳以上の高齢者の割合が,約半数の124名(57.4%)を占めた。人工呼吸器装着の割合は104名(48.2%),人工呼吸器装着日数は,14.6日であった。ICU-ADの発症率は111名(51.4%)に認められ,人工呼吸器を装着している対象者のICU-AD発症率は,80名(76.9%)と非常に高い割合を示した。

康永23のDiagnosis Procedure Combination(DPC)データベースを用いた報告では,本邦ICUでの人工呼吸器装着の割合は24%とされており,本研究の対象者は一段と高い水準を示した。また,Elyらの研究24では,人工呼吸器装着患者のICU-ADの発症率83%と高い割合を示すとされており,本研究の対象も先行研究と同様の結果であった。APACHEII scoreでは有意に高い水準を示したが,軽症例に対し,静脈血での採血しか採用しておらず重症度の判別が困難であったため,除外対象となった症例が一部含まれることが原因として挙げられた。そのため,本研究の取り込み基準は,リハビリテーションを実施した対象の中でも,とりわけ重症度の高い集中治療室入室患者に焦点を当てたものであると考えられた。

1. 自宅退院群と転院群の各種評価項目の比較

自宅退院群は,治療経過より早期にリハビリテーションが開始され,離床が実施されていた。人工呼吸器装着の割合は低く,装着日数が短い傾向にあり,ICU-ADの発症率も低かった。Schweickertら6の報告でも,72時間以上の人工呼吸器患者における早期離床の有用性が示されている。その効果として,身体機能の改善や呼吸器装着期間の短縮,ICU-ADの予防に寄与すると報告されている。先行研究同様に,自宅退院群では,転院群と比較して重症度や人工呼吸器装着の割合,ICU-ADの発症率も低かった。そのため,医学的管理が比較的良好に推移し,治療と並行した早期のリハビリテーション導入が可能となったと考えられた。これらにより,早期からの離床が促進され機能障害回復の一因となった可能性がある。

2. 自宅退院の可否に影響を与える因子の抽出

橋場ら25は,集中治療室における長期滞在患者は,重症度スコアが高く,長期の集中治療室在室日数が入院日数にも影響を与えると報告している。本研究においては,集中治療室在室日数と入院日数の相関係数は,|r|が0.63という結果であった。そのため,先行研究と同様に集中治療室在室日数の長期化が入院日数にも関連していると考えられた。FSS-ICUに関しては,相川ら13の先行研究同様に,早期の身体機能の再獲得が自宅退院に寄与するものと考えられ,転帰予測を判断する因子としての妥当性が示された。Huangらの米国,オーストラリア,ブラジルの3カ国5施設でのICU入室のべ819名を対象とした報告26では,FSS-ICUの点数が自宅退院の可否に関連したと報告している。FSS-ICUが1点上がるにつれ,自宅退院が11%上昇するとされる。本研究でも,FSS-ICUが1点上がるにつれ,自宅退院となる可能性が16%上昇する結果が得られた。自宅退院が可能であった対象者はFSS-ICUの点数が高いことと関連しており,集中治療室在室時からの基本動作や移動能力を獲得することが自宅退院に影響を与えていると考えられた。

3. 抽出された因子の正確度の検討

集中治療室退出時までにFSS-ICUを20点以上獲得すると自宅退院の可能性が高くなると考えられた。得られた結果との関連を感度および特異度から算出する予測能の指標であるAUCは0.847となり,良好な結果が示された。カットオフ値に対する判別適中率は,自宅退院群76.6%,転院群78.0%となり,全体で76.4%となり偏りは認められなかった。そのため,本研究より得られたカットオフ値は,自宅退院の可否の予測能として臨床上有用であると考えられた。

FSS-ICUにおける評価の妥当性として,Tymkewら18は,ICU入室患者1,203人を後方視的に調査し,FSS-ICU, ICU Mobility Scale(IMS),Activity Measure for Post-Acute Care “6 clicks” Inpatient Mobility Short Form(AM-PAC “6-Clicks”)の異なる3つの評価法から,FSS-ICUが最も精度の高い身体機能評価であると報告している。その際に集中治療室退出時のFSS-ICUが19点以上あれば,自宅退院の予測をすることが可能であるとされ,感度82.9%,特異度73.6%,AUC 0.80であった。しかしながら,Tymkewらの先行研究は,対象者の移動能力に焦点を当てたものであり,重症度や人工呼吸器装着の有無,ICU-ADなどの医学的背景を調査項目として持ち合わせていない。本研究の特徴として,臨床指標や集中治療室入室時の経過などの医学的背景を見据えたうえで,転帰予測の判断基準を明確にしたことが挙げられ,より臨床場面に即したものであると考えられる。

カットオフ値における解釈には,対象疾患の相違を考慮し,区別する必要がある。安達ら12は,長期集中治療管理を要した高齢心臓外科術後症例のICU退室時の身体機能と自宅退院の関連を報告しており,そのカットオフ値は21点であった。待機手術症例が選択基準であり,入院以前より100 m以上の連続歩行が可能かつADLが自立していたものが対象であるため本研究の対象と比較し活動レベルが高いことが推察された。宮沢ら27は,48時間以上の人工呼吸器装着患者の自立歩行獲得の目安は,集中治療室退出時のFSS-ICUが24点であると報告している。本研究の,自宅退院症例では,自立歩行を獲得していない症例も含まれているため先行研究とのカットオフ値の相違が認められた。

集中治療室退出時のFSS-ICU20点以下の症例に対しては,一般床退出後の介入頻度や介入職種を増やすなどの長期的かつ集中的な介入環境を考慮する必要がある。

本研究の限界として,単一施設からの調査であり,患者の多様な背景を反映していないことが挙げられ,施設間での偏りが生じた可能性が考えられた。鎮静深度や昇圧剤の使用,各種デバイス類の管理や入院以前の生活背景など患者の質的な評価が不十分であり今後の検討課題である。今後の展望として,単一施設のみにとどまらない多施設を含めた研究や疾患群ごとのリハビリテーション介入の評価の必要性がある。

結論

集中治療室入室患者の自宅退院に影響を与える因子は,入院日数と集中治療室退出時のFSS-ICUであった。FSS-ICUのカットオフ値は20点であり,集中治療室退出時までに,基本動作や移動能力を獲得することが,自宅退院の可否に影響を与える可能性がある。

利益相反

本研究に関して,開示すべき利益相反はない。

文献
 
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