Physical Therapy Japan
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Research Reports (Original Article)
Calf Circumference Cut-off Value for Identifying Severe Sarcopenia in Community-dwelling Older Women Undergoing Outpatient Rehabilitation
Takehiro FUJIMOTO Taisei ISHIMOTOHikaru HAYASHIRisako HASHIMOTOKen HISAMATSUNaoki AKAZAWA
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2026 Volume 53 Issue 1 Pages 23-28

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要旨

【目的】本研究の目的は通所リハビリテーションを利用する地域在住高齢女性における重症サルコペニア判定の下腿周径のカットオフ値を調査することである。【方法】対象は通所リハ利用中の高齢女性114名であった。アウトカムは重症サルコペニアおよび下腿周径とした。統計解析は重症サルコペニアを目的変数,下腿周径,body mass index,Food Intake Level Scale,食欲不振,傾向スコア(年齢,服薬数,改訂版チャールソン併存疾患指数により算出)を独立変数としたロジスティック回帰分析を実施した。また重症サルコペニアに対する下腿周径のカットオフ値を算出した。【結果】対象者のうち重症サルコペニアに該当する者は54名であった。ロジスティック回帰分析の結果,下腿周径(オッズ比=0.673)のみが有意な変数として抽出された。下腿周径のカットオフ値は31.5 cmであり,感度,特異度は71.7%, 75.9%,曲線下面積は0.807であった。【結論】通所リハビリテーションを利用する地域在住高齢女性における重症サルコペニア判定の下腿周径のカットオフ値は31.5 cmであった。

Abstract

Objective: The aim of this study was to determine the calf circumference cut-off value for identifying severe sarcopenia among community-dwelling older women undergoing outpatient rehabilitation.

Methods: This study included 114 older women undergoing outpatient rehabilitation. The outcomes measured were severe sarcopenia and calf circumference. Logistic regression analysis was conducted, with severe sarcopenia as the dependent variable and calf circumference, body mass index, Food Intake Level Scale, appetite loss, and propensity score (calculated from age, number of medications, and revised Charlson Comorbidity Index) as independent variables. Additionally, the calf circumference cut-off value for detecting severe sarcopenia was determined.

Results: Of the 114 participants, 54 had severe sarcopenia. Logistic regression analysis revealed that only calf circumference (odds ratio=0.673) was a significant predictor of severe sarcopenia. The calf circumference cut-off value for identifying severe sarcopenia was 31.5 cm, with a sensitivity of 71.7%, a specificity of 75.9%, and an area under the curve of 0.807.

Conclusion: A calf circumference of 31.5 cm serves as a useful cut-off value for identifying severe sarcopenia in community-dwelling older women undergoing outpatient rehabilitation.

はじめに

サルコペニアは加齢に伴う骨格筋量,筋力,及び身体能力の進行的かつ全身的な低下と定義され1,高齢者において転倒,骨折,日常生活動作(activities of daily living:以下,ADL)能力の低下,生活の質の低下,死亡などの健康への悪影響や25,医療費と社会的負担の増加につながることが報告されている6。サルコペニアがより進行した状態として重症サルコペニアが存在し,重症サルコペニアは骨格筋量,筋力,身体能力それぞれの低下により判定される1。先行研究において,重症サルコペニアはADL能力低下の強力な予後指標であることが報告されている79。さらに重症サルコペニアは生存期間,生活の質,抑うつ症の独立した予測因子であることが明らかとなっている10。よってサルコペニアの予防のみでなく,サルコペニアを有する高齢者に対するサルコペニアの重症化予防も重要である。その予防策を講じるために,早期から重症サルコペニアを判定することは重要である。特に,機器設備の問題で客観的な骨格筋量の測定が行えない在宅医療などの環境において重症サルコペニアの判定を可能とする簡便なスクリーニングが必要であると考える。

サルコペニアのスクリーニングにはIshii test11や指輪っかテスト12などの評価指標が存在する。Asian working group for sarcopenia 2019(以下,AWGS 2019)ではサルコペニアのスクリーニングとしてSARC-F, SARC-CalF,下腿周径が推奨されている1。特に下腿周径は測定が簡便な身体計測法として,広く使用されている。しかしながら重症サルコペニアをスクリーニングするための下腿周径のカットオフ値は不明である。重症サルコペニアのスクリーニングにおいては超音波画像診断装置において大腿直筋の横断面積を測定したものが存在するが,area under the curve(以下,AUC)は女性において0.597であり,判定精度が良好であるとはいえない13。その他のスクリーニングとしてIshii testが存在するが,Ishii testで判定を行うためには下腿周径に追加して握力測定が必要であり11,在宅医療や通所リハビリテーションの現場では,測定環境の制約により実施が難しい場合がある。

以上より,重症サルコペニアのスクリーニングとして,下腿周径のカットオフ値が明らかとなれば,早期から重症サルコペニアを判定することにより,予防策を講じることが可能となる。また下腿周径は測定が簡便なことから,地域のセッティングにおいても実用的な測定方法であるといえる。したがって,本研究の目的は通所リハビリテーションを利用する地域在住高齢女性における重症サルコペニアを判定するための下腿周径のカットオフ値を調査することである。

対象および方法

1. 研究デザインおよび対象

本研究は横断的観察研究デザインを採用した。対象は,2022年4月~2024年3月の期間に赤ひげクリニックの通所リハビリテーションを利用している地域在住高齢女性であった。除外基準として,65歳未満,データに欠損がある者と設定した。合計122名のうち,65歳未満1名,データ欠損7名の計8名を除外し,最終的な研究対象者は114名であった。本集団では男性参加者が少なく(n=46),性別ごとの層別解析を行うには検出力が不足していた。そのため,十分なサンプルサイズを確保できた女性のみを解析対象とした。また高齢女性は男性よりもサルコペニアの有病率が高いことが報告されており1,臨床的にもスクリーニング指標の検証がより重要な集団であるといえる。以上の理由から本研究では女性のみを解析対象とした。対象者の介護度内訳は,要支援1:14名,要支援2:27名,要介護1:43名,要介護2:23名,要介護3:7名であった。対象者は週に1~3回の頻度で通所リハビリテーションを利用していた。リハビリテーション内容は関節可動域練習,筋力トレーニング,有酸素運動,バランス練習,歩行や階段を中心とした動作練習などの標準的な運動療法であった。測定に際しては,対象者およびその家族に対し,個人情報の保護に関する配慮や検査,測定内容について文書で説明し,書面による同意を得た。また,本研究は貴志川リハビリテーション病院倫理委員会の承認を得て実施した(承認番号:3)。

2. 測定項目

測定項目は,重症サルコペニアの判定に必要な筋力,筋肉量,身体機能および下腿周径である。その他の測定項目は年齢,身長,体重,body mass index(以下,BMI),服薬数,利尿剤使用の有無,合併症,心不全・肝疾患・腎不全の有無,認知機能,ADL能力,嚥下機能,栄養状態とした。

3. 重症サルコペニア判定

対象者はAWGS 2019の基準に基づき1,健常群,サルコペニア疑い群,サルコペニア群,重症サルコペニア群に分類した。本研究では重症サルコペニア群とそれ以外の群を比較する目的から,健常群,サルコペニア疑い群,サルコペニア群を一括して非重症サルコペニア群と定義した。AWGS 2019における重症サルコペニアの判定基準は,身体機能,筋力,骨格筋量の3つの要素で構成されている。身体機能は5 mの歩行路とその両端にそれぞれ3 mの予備路を設け,通常歩行速度を測定した。評価者は,対象者が自然な速度で5 mの距離を歩く際の時間をストップウォッチで計測し,その時間を歩行路の長さ(5 m)で除し,通常歩行速度を算出した。なお,通常の歩行速度が1.0 m/秒未満の場合を身体機能低下とした1。筋力はスメドレー式握力計(松宮医科精器製作所,HAND DYNAMO METER)を用いて測定し,利き手で2回測定したうちの最大値を採用した。握力のカットオフ値は18 kg未満とした1。骨格筋量については,生体インピーダンス法(InBody Japan, InBody 470)を用いて測定し,四肢骨格筋量を身長の二乗で除し,骨格筋指数(skeletal muscle mass index:以下,SMI)を算出した。SMIのカットオフ値は,5.7 kg/m2未満とした1。これらの測定項目すべてがカットオフ値を下回った場合を重症サルコペニアと判定した。

4. 下腿周径測定

下腿周径の測定は,対象者が椅子に座った状態で行い,プラスチック製のメジャーを使用した。測定は,下腿の長軸に対して垂直な平面上で行い,0.5 cm単位で記録した14。それぞれの脚について2回ずつ測定を行い,左右いずれかの最大値を採用した。

5. その他の測定項目

BMIは体重(kg)を身長の二乗(m2)にて除することで算出した。体重はデジタル体重計を使用し,対象者の状態に合わせて立位もしくは車いす座位にて計測し,計測は0.1 kg単位とした。身長は立位にて身長計を使用し,0.5 cm単位で計測を実施した。対象者の嚥下機能評価はFood Intake Level Scale(以下,FILS)15,栄養状態はSimplified Nutritional Assessment Questionnaire(以下,SNAQ)16,合併症は改訂版チャールソン併存疾患指数(Updated Charlson Comorbidity Index:以下,UCCI)17を用いて評価した。FILSは嚥下状況のレベルを評価する指標であり,1(嚥下訓練を行っていない)から10(摂食・嚥下に関する問題なし)の10段階で評価される15。SNAQは5段階評価で回答する4項目からなる質問票である16。SNAQ得点を基に,13点以下を食欲不振,14点以上を食欲不振なしと判定した18。食欲不振は低栄養との関連が報告されていることから1921,本研究ではSNAQにより判定された食欲不振を低栄養の指標として採用した。UCCIは慢性疾患に関連する12の状態についてスコア化して評価する指標で,スコア1として慢性肺疾患,リウマチ疾患,慢性合併症を伴う糖尿病,腎疾患,スコア2としてうっ血性心不全,認知症,軽度の肝疾患,片麻痺または対麻痺,白血病やリンパ腫を含む悪性腫瘍,スコア4として中等度~重度の肝疾患,AIDS/HIV,スコア6として転移性固形腫瘍があげられ,これらの合計を点数化したものである17。認知機能は改訂版長谷川式簡易知能評価スケール(Hasegawa Dementia Scale-Revised:HDS-R)を用いて評価した22。ADLはBarthel Index(以下,BI)を用いて評価した。BIは(i)食事,(ii)車椅子からベッドへの移乗あるいはベッドから車椅子への移乗,(iii)整容,(iv)排泄動作,(v)入浴,(vi)平地歩行,(vii)階段昇降,(viii)更衣,(ix)排便コントロール,(x)排尿コントロールの10項目から構成される22。BIは臨床現場で広く用いられており,得点が高いほどADLの自立度が高いことを示す23

6. 統計学的解析

すべてのデータについてはShapiro–Wilk検定により正規性の確認を行い,正規性が確認された変数に対してはパラメトリック検定を,その他の変数にはノンパラメトリック検定を選択した。重症サルコペニア群と非重症サルコペニア群の各変数の比較には対応のないt検定,Mann–WhitneyのU検定およびχ2検定を実施した。次に,重症サルコペニアを目的変数,下腿周径,BMI, FILS, SNAQにより判定した食欲不振,傾向スコアを独立変数とした強制投入法によるロジスティック回帰分析を実施した。ロジスティック回帰分析における傾向スコアは年齢,UCCI,服薬数から算出した。その後,下腿周径が有意な変数として抽出された際には,下腿周径におけるreceiver operating characteristic(以下,ROC)曲線を作成し,Youden indexを用いてカットオフ値を算出した。さらにROC解析の内部妥当性を確認するために,1000回のブートストラップ法を用いてAUCの補正および95%信頼区間を算出した。統計学的有意水準は5%とし,解析にはR 4.0.2およびPython 3.13を使用した。

結果

解析対象となった114名のうち,重症サルコペニアと判定されたのは54名(47.3%)であった。重症サルコペニア群と非重症サルコペニア群の各変数を比較した結果,重症サルコペニア群では身長,体重,BMI,HDS-R,握力,通常歩行速度,SMI,下腿周径が有意に低値を示し,UCCIは有意に高値を示した(表1)。また,重症サルコペニアに対するロジスティック回帰分析の結果,下腿周径は重症サルコペニアと有意に関連しており,オッズ比は0.673(95%信頼区間:0.523–0.867)であった(表2)。Youden indexに基づいて算出された下腿周径のカットオフ値は31.5 cmであり,このカットオフ値における感度と特異度はそれぞれ71.7%, 75.9%,AUCは0.807(95%信頼区間:0.728–0.885)であった(表3図1)。またブートストラップ法による補正後のAUCは0.807(95%信頼区間:0.728–0.881)であった(表3)。

表1 重症サルコペニア群と非重症サルコペニア群における群間比較結果

全体(n=114)重症サルコペニア群(n=54)非重症サルコペニア群(n=60)P値95%信頼区間
年齢(歳),平均値(標準偏差)84.6 (6.5)85.5 (5.0)83.8 (4.7)0.18a−4.1–0.8
身長(m),中央値(四分位範囲)1.48 (1.44–1.52)1.47 (1.41–1.50)1.49 (1.45–1.54)0.01b
体重(kg),平均値(標準偏差)49.9 (9.7)44.7 (7.6)54.6 (8.8)<0.001a6.8–13.0
BMI(kg/m2),中央値(四分位範囲)22.2 (20.4–24.6)21.0 (18.9–23.2)23.8 (21.5–27.6)<0.001b
利用開始からの経過(日),950.1 (502.9)900.1 (495.0)995.1 (509.9)0.32a−91.9–281.8
服薬数,中央値(四分位範囲)5.0 (4.0–8.0)5.5 (4.0–8.75)5.0 (4.0–8.0)0.77b
利尿剤使用者,n (%)23 (20.2)11 (20.4)12 (20.0)0.96c
UCCI,中央値(四分位範囲)0 (0–2.0)2 (0–2.0)0 (0–2.0)0.03b
心不全,n (%)8 (7.0)3 (5.6)5 (8.3)0.56c
肝疾患,n (%)0 (0)0 (0)0 (0)NA
腎不全,n (%)3 (2.6)2 (3.7)1 (1.7)0.50c
HDS-R,平均値(標準偏差)21.5 (6.8)19.1 (7.6)23.7 (5.2)<0.001a2.2–7.0
Barthel Index,中央値(四分位範囲)95 (85–100)92.5 (85–100)95 (90–100)0.21b
FILS,中央値(四分位範囲)10 (10–10)10 (10–10)10 (10–10)0.85b
握力(kg),平均値(標準偏差)12.3 (5.9)9.6 (3.9)14.6 (5.1)<0.001a3.3–6.6
通常歩行速度(m/秒),平均値(標準偏差)0.67 (0.30)0.59 (0.28)0.74 (0.30)0.008a0.03–0.25
SMI(kg/m2),中央値(四分位範囲)5.4 (4.9–6.0)5.1 (4.5–5.3)6.0 (5.7–6.3)<0.001b
下腿周径(cm),平均値(標準偏差)31.9 (3.4)30.0 (2.6)33.5 (3.1)<0.001a2.5–4.6
食欲不振,n (%)27 (23.7)15 (27.7)12 (20.0)0.32c

BMI: body mass index,UCCI:Updated Charlson Comorbidity Index(改訂版チャールソン併存疾患指数),HDS-R:Hasegawa Dementia Scale-Revised(改訂版長谷川式簡易知能評価スケール),FILS: Food Intake Level Scale, SMI: skeletal muscle mass index.

a対応のないt検定,bMann–Whitney検定,cχ2検定.

 

表2 重症サルコペニアに対するロジスティック回帰分析結果

オッズ比95%信頼区間VIFP値
下腿周径0.6730.523–0.8672.1750.002
BMI0.9620.784–1.1802.1000.708
FILS1.3900.692–2.7801.0470.356
食欲不振0.8080.279–2.3501.0760.696
傾向スコア*6.2400.116–335.01.0790.367

*傾向スコアは年齢,UCCI,服薬数から算出した.

BMI: body mass index, FILS: Food Intake Level Scale, VIF: variance inflation factor.

 

表3 下腿周径における重症サルコペニア判定のカットオフ値および判定精度

カットオフ値感度特異度陽性的中率陰性的中率AUC 
(95%信頼区間)
AUC(ブートストラップ補正) 
(95%信頼区間)
下腿周径31.5 cm0.7170.7590.7060.7670.807 (0.728–0.885)0.807 (0.728–0.881)

AUC: Area Under the Curve.

図1 Receiver operating characteristic曲線:下腿周径における重症サルコペニアの判定精度

考察

本研究は通所リハビリテーションを利用する地域在住高齢女性における重症サルコペニアを判定するための下腿周径のカットオフ値を調査した初めての報告である。結果として,重症サルコペニアを判定するための下腿周径のカットオフ値は31.5 cmであり,感度,特異度はそれぞれ71.7%, 75.9%であり,AUCは0.807であった。

本研究において導き出された重症サルコペニアを判定するための下腿周径カットオフ値は31.5 cmであった。先行研究では,高齢女性における中等度,重度下腿周径低下のカットオフ値はそれぞれ,33 cmと31 cmであるとの報告がなされている14。またAWGS 2019においてサルコペニアのスクリーニングに使用される女性の下腿周径のカットオフ値は33 cmであり1,前述の報告14における中等度下腿周径低下と同値である。上記を加味すると,本研究において明らかとなった重症サルコペニアの下腿周径カットオフ値である31.5 cmは,先行研究14における女性の重度下腿周径低下のカットオフ値である31 cmと近似する値であった。さらに,Kissらの報告では,下腿周径が筋肉量の指標として有用であることが示されており,女性において31.5 cm未満の下腿周径が低筋肉量を示すカットオフ値として最適であると報告されている(感度78%,特異度79%)24。この結果は,本研究で導き出された重症サルコペニアのカットオフ値31.5 cmと一致しており,下腿周径が筋肉量の簡便な評価指標として信頼性が高いことを支持している。また,アジア8カ国を対象とした大規模コホート研究では,65~69歳の女性における下腿周径の20パーセンタイル値が31.5 cmと報告されており25,これが低筋肉量のリスクを示す指標として提案されている。このように,複数の国際的研究において31.5 cmという値が低筋肉量やサルコペニアのリスク指標として示されていることから,本研究のカットオフ値の妥当性がさらに裏付けられる。本研究ではROC解析に加え,ブートストラップ法による内的妥当性検証を行った。その結果,ブートストラップによる補正後のAUCの95%信頼区間は補正前のAUCにおける95%信頼区間と同程度であった。以上より,本結果は過学習による影響は小さく,下腿周径を用いた重症サルコペニア判定の内的妥当性が支持された。

本研究には二点の強みが存在する。一つ目は,本研究は通所リハビリテーションを利用する地域在住高齢女性における重症サルコペニアを判定するための下腿周径のカットオフ値を調査した初めての報告である。二つ目として,下腿周径は臨床現場において計測が簡便な測定であり,多くの現場にて取り入れることが容易な点である。特に在宅医療や通所リハビリテーションにおいては,限られた人的・物的資源の中でも実施可能であることから,スクリーニング普及の促進が見込まれる。さらに本研究で示したカットオフ値を用いて重症サルコペニアを判定することで,栄養指導や運動指導などを用いた重症サルコペニアの対策を早期から実施することが可能になると考える。加えて,ROC解析においてAUCが0.8を超える結果は,下腿周径が単一の指標としても重症サルコペニアを高精度で捉えうることを示しており,臨床的にも有用性が高いといえる。今後は,縦断的研究を通じて本カットオフ値による予後予測の妥当性を検証する必要がある。

本研究には三点の限界が存在する。一つ目として,本研究は通所リハビリテーションを利用する地域在住高齢女性を対象とした研究である。そのため,男性や通所リハビリテーションサービスを受けていない地域高齢者には適応とならない可能性がある。下腿周径や骨格筋量には性差があり114,男女共通のカットオフ値を設定することは妥当ではない。そのため,本研究で算出されたカットオフ値は高齢女性に限定される結果であり,男性への適用はできない。またリハビリテーションサービスを提供されていた本対象者は身体機能低下が抑制されていた可能性があり,本研究の対象者は通所リハビリテーションを受けていない地域高齢者に比べて下腿周径の低下が緩徐であることが考えられる。そのため,本研究で示したカットオフ値はリハビリテーションサービスを受けた女性高齢者集団における結果として解釈する必要がある。二つ目として,浮腫を有する高齢者では下腿周径を過大評価することが明らかとなっているものの26,本研究では浮腫の定量化を行えておらず,浮腫を有する可能性がある疾患有病率や利尿剤使用率の提示にとどまっている。したがって,今後は浮腫の評価を実施し,浮腫の有無によりグループ化することで詳細な解析を行うことが必要であると考える。最後に,本研究で示した下腿周径カットオフ値の外的妥当性が検証できていない点である。そのため,今後は上記の検証が望まれる。

結論

通所リハビリテーションを利用する地域在住高齢女性における重症サルコペニア判定の下腿周径カットオフ値は31.5 cmであった。この結果は通所リハビリテーションを利用する地域在住高齢女性の重症サルコペニアを判定する上で,下腿周径を測定することの重要性を示すものである。

利益相反

本研究において,著者らが開示すべき利益相反(COI)は存在しない。

文献
 
© 2026 Japanese Society of Physical Therapy

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