目的
多発骨折とそれらの部位の遷延治癒により部分荷重(partial weight bearing; PWB)期間が約20週必要となった症例に水中トレッドミルを使用した歩行練習を実施した。本報告の目的は,本症例のリハビリテーション介入の内容と本症例を通じて見出された水中トレッドミルの有効性について,症例考察から検討することである。
症例紹介および方法
30歳代,男性。交通事故により,骨盤輪骨折,右大腿骨骨頭および転子下骨折を認めた。リハビリテーションでは,水中トレッドミル「Hydro Track model 1102(FERNO社製)」を使用した歩行練習を実施した。1日あたりの平均歩行時間は約2時間で,これらの運動は入院から全荷重前日まで継続して実施した。
結果
1/3PWB期の水中トレッドミルを使用した歩行練習は23日間行い,合計歩行距離は81,930mであり,平均歩行距離は1日あたり約3,500mであった。退院時には,疼痛は軽減し,下肢筋力や筋肉量は増加し,全荷重当日にT字杖ならびにフリーハンド歩行で自立に至った。
結論
PWB期から水中トレッドミルを使用した歩行練習を実施することは全荷重後の早期の自立歩行に影響を及ぼす可能性が示唆された。