イノベーション・マネジメント
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研究ノート
フランスにおける新規就農の現在
―農業食料主権省のプロジェクト研究から―
須田 文明
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2026 年 23 巻 p. 159-174

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要旨

新農業基本法の制定とその実施に資するべく、フランス農業食料主権省は2023年に、「新しい農業就業者」について研究プロジェクトの公募を行なった。採択された5つのプロジェクトは2025年に成果を公表しており、本稿はそのうちの3つのプロジェクトについて紹介する。フランスの新規就農者、とりわけ農外からの新規参入者のプロフィール、その経営プロジェクトなどの検討から、こうした新規参入者が農業経営をダイナミックに進化させていることが確認できる。

Abstract

To contribute to the enactment and implementation of the new Basic Law on Agriculture, France’s Ministry of Agriculture and Food Sovereignty launched a call for research projects on new farmers in 2023. The five selected projects published their findings in 2025, and this article reviews three of them. Analysis of the profiles of new entrants to farming in France, particularly those from non-agricultural backgrounds, and their business plans confirms that these newcomers are fostering a dynamic evolution in agricultural management.

1.  はじめに

我が国と同様に、フランスでも農業における世代刷新が重要な課題をなしている。2020年時点で農業者の平均年齢は51.4歳で、2030年までに農業者の40%が引退年齢に達するからである(MASA, alimagri, no.1567)。このような背景において、2025年3月には「食料主権と農業における世代刷新のための基本法」(no.2025-268)が成立した。同法は食料主権を最優先課題とし、2035年での40万経営、50万人以上の農業経営者を確保することを目標として掲げる。

現在、フランス本土(海外県含まず)には35万経営があり、2022年の新規就農者は1万3,578人で、多少の増減はあるものの、2003年の1万3,427人から就農者数は横ばいで推移している。このような背景において、フランス農業食料主権省MASAは、新農業基本法の制定を準備する過程で、2023年に「新しい農業就業者」についての研究プロジェクトを公募し、5つのプロジェクトを採択した。2025年に5つの研究報告書が提出され、本稿はそのうちの3つのプロジェクトを紹介することでフランス農業における最近の新規就農の動向を検討しようとするものである。

2.  農業構造転換の兆し

2.1  マイクロ経営の減少と実態

2023年に農業構造の転換が急速に進行する兆しが見えている。フランス農業省は2023年農業経営構造調査の結果を公表している(MASA, 2025)。それによれば同年にフランス本土で34万9,600の農業経営が存在している。2010~2020年に年率2.3%経営数が減少したのに対し、2020~2023年では3.6%の減少が見られた。しかしマイクロ経営(標準生産額25,000ユーロ(補助金含まず)以下)は同期間でそれぞれ年3.7%、9.4%減少しているのである。2023年の経営全体34万9,600戸のうち、マイクロ経営は7万6,200戸(22%)で、2020年の29%から顕著に減少した。この経営は農地面積の4%を占めるに過ぎないが、労働力(フルタイム換算)の7%を占めている。こうした経営の平均経営面積は14haで(2020年には11ha)、経営での労働力は0.5人である(フルタイム労働換算)。彼らは兼業で高齢者(平均年齢56歳、マイクロ経営以外では49歳)であり、経営の40%以上は67歳以上である(マイクロ経営以外では8%のみ)。また35%は女性(同24%)であり、高齢の男性経営者の離農後に一時的に妻が経営を引き継いでいることも多い(MASA, 2025)。

上述のようにマイクロ経営の減少率が近年、急速に高まったのは、CAP改革の結果であり、これは2023年に、アクティブファーマーしかCAP補助金(直接支払いを含む)を受給できず、67歳以上では、年金受給権とCAP補助金を重複して受給できないとしたからである。農業経営の80%以上がCAP補助金を受給しているため、高齢の農業経営者が離農したのである。こうして2020年に67歳以上の経営者の割合が11%を占めていたのに対し、2023年には8%となった。年金受給に際しては、自分が経営している農地がどうなるか、誰が耕作することになるかを、あらかじめ農業社会共済MSAに通知し、この農地での経営停止を条件としているが、自給用農地の保持(所有であれ、賃借であれ)は可能である。しかしその面積は(県によって異なるが)最低課税面積の5分の2を超えてならず、これを超える部分については、農業者が所有権を譲渡したり、小作人に賃貸しすることができない場合に限って、2年間(更新可)これを耕作することが許可される、という例外措置がある。2023年に導入された規定により放出されることになるであろう農地が、近隣の経営の規模拡大ないし新規就農につながっているのかどうか、追加的な情報が求められる。

他方で、こうしたマイクロ経営の急速な消失については批判的な意見がNPOなどから寄せられている。2026年には統一地方選挙が行われるが、フランス首長連合会(AMF)の第107回年次大会(2025年11月18~20日)に合わせて、農地出資NPO「絆の大地Terre de Liens」は、この3年間だけで4万のマイクロ経営が消失したことに触れ、地方の高品質で多様な農産品を供給する市町村の能力が脅かされており、首長こそが小規模農家維持の行動力を有する、との呼びかけを行なっている(同団体HPより)。大規模単作経営は地方市場よりも全国、ないし輸出向けの作目を優先しがちとなるからである。

2.2  マイクロ経営以外の実態

他方でマイクロ経営を除く経営の平均経営規模が拡大し、2010年の76haから2020年の89ha、2023年の93hとなった。中でも200ha以上の経営数が増加し続け、2010~2020年、2020~2023年、ともに年率2.8%増加し、この層は2023年に経営の10%を、経営面積の33%を占めている。また作目別では2020–23年で家畜生産経営で年2.8%減少しているのに対して、作物では0.8%の減少にとどまり、それが可能な地域では家畜生産から作物(穀物)への転換という長期的傾向が進んでいる。また有機農業を行う経営の割合は2023年に14.9%(2020年には13.3%)、直売活動を行う経営の割合は25.8%(同24.4%)である。

さらに労働力で見ると、マイクロ経営を除く全経営で60万8,900人、フルタイム換算59万1,800人が農業に従事しているが、このうち経営者の全農業就業者中に占める割合は2010年の59%から2023年53%へ減少しているのに対して、非家族常雇では19%から24%へ、季節雇では11%から16%へとそれぞれ増加している。また外部のオペレーターに作業委託している場合もあり、その雇用数(フルタイム換算)は2020年の2万2,500人から2023年の3万5,000人へと急増している(MASA, 2025)。

3.  農業担い手:新規就農者のプロフィールから

今後展望される食と農業の移行をどのような農業者が担うのであろうか。フランス農業食料主権省(MASA)は2024年に、「新しい農業就業者」について、5つの大規模な研究プロジェクトを支援した。本稿ではそのうち、三つの研究プロジェクトの成果の概要を紹介することにしよう。

3.1  新規就農者のプロフィール

(1)  出自に応じた就農者の特徴

研究プロジェクトProjet Agrinovo(アンジェ農業大学ESA d’Angersが実施、最終報告書Mazaud et al., 2025)は、2018年から2022年に新規に就農した2万6,188人に対してアンケート調査を行い、そのうち3,436人からの回答を分析している。その新規就農者のプロフィールを見てみることにしよう(以下Mazaud et al., 2025より)。

新規就農者の学歴資格は43%が高等教育(短大や大学)を卒業しているのに対して、2020年センサスによる全体農業者では27%にとどまる。新規就農者のうち、親が農業者でない者が45%であるが、一方で親族に一人も農業者がいない者は23%でしかない。農業者の子供ではないにしても、全く農業の環境と無関係であったものは少ない。しかし74%は就農以前に農業以外の職業に従事していた。新規就農者の19%のみが25歳以下で就農しているのに対して、全体では38%であり、近年、年齢を経てからの就農が多いのも、そのためである。それは、新規就農者の71%が就農時点に結婚していたことにも示されている(結婚に準じるパートナーシップPACSを含む)。また彼らの24%が農業者と、6%が農業労働者と結婚していたのに対して、24%はホワイトカラー労働者と、15%は中間的職業(公的機関従業員や教員など)と、11%が上級管理職層と結婚していた。女性の新規就農者の割合が39%であるのに対して、全体では22%であり、女性の就農が多くなっている。平均経営面積は新規就農者が77haに対して、全体では69haである。個人経営の割合は前者が49%で、後者は59%である。逆に法人経営の「共同経営農業集団GAEC」の割合は前者が26%に対して、全体では11%で、新規就農者は、GAECにより就農していることがわかる。この法人はとりわけ酪農部門において親から子供への経営の潤滑な移譲を行うために利用されることが多い(Mazaud et al., 2025)。

またこの研究プロジェクトでは、2018年から2022年の新規就農者が、その出自(農業者の子弟か否か、親族に農業者がいるか)に応じた就農様式について以下の表1のようにまとめている。親にも親族にも農業者がいない就農者は、自ら新たに経営を創出する割合が68%であり、13%は配偶者もしくは義理の親・親族の経営していた経営を取得ないし、組合員となって就農している。農業者と結婚した非農家出身の妻が、引退した夫に代わって一時的に経営を維持する場合なども考えられる。また農家の子で新たに経営を創出する場合、親の経営の近くに就農し、しかる後に親の経営と合併ないし、法人を形成することで規模を拡大することが考えられる。

表1 出自に応じた就農様式(%)

出自
旧経営者
非農家子弟 農業者の子 親族にいる 全体
新規に経営創出 68 19 42 35
家族・親族 13 70 40 50
第三者 19 10 18 14

(出所)Mazeau (2025), p.15より。

(2)  新規就農者のタイプ分け

このプロジェクトの調査によれば新規就農者は以下の5つに分類される(以下、Dain et al., 2025Mazaud et al., 2025より)。

①周到に準備された後継者による就農(新規就農者の34%、1,170人)

これに該当するのは、81%が男性である。80%は就農時点に35歳未満で、25歳未満も50%おり(回答者全体ではそれぞれ47%、8%)、96%は親が農業者である。かなり若いうちから周到に就農を準備している。88%は家族外での別の経営で働いていたことから、親ないしその他の親族の経営での就農を見越して、第三者の経営で研修ないし農業労働者の形で働いていたと考えられる。3分の1は親の経営を取得する意思を持ち、経営を新たに創出したのは15%のみであり(全体では30%)、4分の3は、親を含めた親族の農場を取得している。こうした就農者の親にとっては「自分が働いてきたことは決して無駄ではなかった」こと、経営への投資は子供にとっての利益になった、と確信することになる。これらの就農者の多くは主流派の農業者組合に加盟し(青年農業者組合JAが15%、全体では8%)、左派・エコロジスト系の農民連盟には2%のみである(全体では7%)。このグループでは36%が牛飼養(全体では25%)、20%が穀物・油糧種子(全体14%)で、果樹野菜が7%(全体17%)である。有機農業は18%で、全体の28%より少ない。総じて、親の経営の延長線上にある。

②意図せざる後継者による就農(22%、752人)

このグループの71%は農業者の子供であるが、61%は女性で、40%は40歳以上である。彼らの92%は就農前に農業以外の職業に従事しており、多くは、就農を予定していなかった。3分の2は農業教育を受けず、3分の1は経営で働いていたこともない。33%はたまにしか親の農業の手伝いをせず、18%はほとんど手伝いをしたことがない(よく準備した就農ではそれぞれ、10%、1%)。また配偶者以外には、他の農業者との関係がないという。このグループには夫の農業引退に合わせて一時的に経営を維持し、子のために家産を守るための就農が多いと考えられる。後継者を確保するために親は、一般的に娘よりも息子をあてにしており、このグループで女性が多いことに示されるように、彼女らが就農したのは偶然である。作目としては牛飼養31%、ブドウ15%(回答者全体では10%)が多い。

③農村民衆階級による就農(16%、551人)

97%は農業者の子ではないが、4分の3は親族に農業者がいる。90%が農村で暮らしていた。3分の1はほとんど全く親族の農業の手伝いをしたことがなく、40%は親族外での就農であり、25%は親族の経営での就農である。また3分の2は第三者の経営の農業労働者であった。62%は男性で、56%は労働者家庭の出身、20%はホワイトカラー労働者家庭の出身である。就農前の職業はブルーカラー労働者もしくはホワイトカラー労働者であった(それぞれ30%)。果樹野菜が22%と多く、穀物・油糧種子が10%と少ない。穀物や家畜飼養が少ないのは、彼らが農業者の子でないことによる。

④中産階級による職業転換(20%、667人)

これは農業的、農村的根付きがないにもかかわらず、就農がなされたという意味で農業への分岐(bifurcation)のケースである。4分の3は非農家出身で、82%は自分で経営を創出している。20%は不動産会社を通じて農場を取得していることからも(全体では6%のみ)、農業とは、ほとんど関係がなかったことが窺われる。それに対して回答者全体では80%は親や親族から農地を提供され、9%は農業会議所や土地整備公社SAFERを仲介してなされていたのである。またこのグループの41%は就農前に都会に住んでおり(全体では21%)、4分の3は就農以前に二つ以上の職業を経験していた。31%は40歳以上で(全体では21%)、就農前の職業として39%はホワイトカラー労働者、10%はブルーカラー労働者、4分の1は中間的職業(役場職員や看護師、教員など)、16%は職人・商人であった。出身階層については37%が上級管理職層、20%はホワイトカラー労働者、16%はブルーカラー労働者家庭出身である。男女比はほとんど同じで、しばしば配偶者はホワイトカラー労働者(21%)、職人・商人(14%)、中間的職業(15%)であり(全体ではそれぞれ5%、17%、10%)、就農時点で、就農資金を持っていたことが窺われる。4分の3はもっぱら直売を実践し(全体では3分の1)、47%は有機農業を経営し(全体では28%)、36%は野菜部門である(全体では15%)。いずれの作目にも分類されない分野が17%(全体では5%)と、観光や加工などに従事しているものと推測される。総じて、都会からの移住者、いわゆる新農村人のプロフィールを持ち、13%は農民連盟を支持しているが、72%はいかなる農業組合にも所属していない(全体では64%)。

⑤都会の上流階級(8%、257人)

このグループの80%以上は、就農以前に上級管理職層、知的職業についており、3分の1は配偶者も同等の職業についていた。62%は上級管理職層、中間的職業家庭出身であり、85%は修士修了以上(Bac+5)であり、61%は都会に住んでいた。興味深いのは、彼らの42%は農業者の子であり(全体では55%、中産階級では12%のみ)、同じく職業転換とはいえ、中産階級によるそれとは異なり、いわゆる新農村人ではなく、より有利な職業経験ののちに、農業に戻ってきた、という姿が見られる。3分の1以上は親族の経営を取得、もしくはその組合員となっており、半分は自らで経営を新たに創出している。親の経営の近隣に新たに経営を創出していることが推測される。学歴資格を見ても30%は農学や農業経営の修士以上(bac+5)の資格を有しており、当初から親の大規模法人経営での就農も選択肢にあったようである。本人自身も就農に際して経済的な困難はなかったであろう。また男性は58%のみであり、女性の就農も多い。しかしこのグループは農業者の子であるか(親元就農)、否か(職業転換)に応じて二つに分かれる。親元就農では穀物・油糧種子が32%で圧倒的に多く、牛飼養は18%と少ない。それに対して職業転換の場合、野菜・花卉で40%と極めて多く、有機農業も60%で突出している(全体では28%)。農民連盟にも24%が加盟しており、このサブ・グループもまた新農村人の特徴を有している。

以上、Dain et al.(2025)らの研究を見てきたが、こうした新規就農者のプロフィールを見るに、今後の農業・食料の移行の担い手として、一つ目のよく準備された就農と5つ目の都会上級階層の一部による、大規模で効率的な農業の担い手としての就農が、フランス農業の国際競争力向上に資することであろう。またその他のグループも、多様な農業・農村の維持にとって重要な役割を演じよう(Gazo, 2023)。さらにRaffray(2025)は、この調査で示されているように、最初のグループと最後のグループが、同世代よりもより多く、農業経営者組合や農業団体に積極的にコミットし、農政に影響力を行使しているが、就農者全体の64%はいずれの農業者組合にも加盟していないことから、彼らがどの程度、農業者を代表しているだろうか、と指摘している。

3.2  非農家出身NIMA農業者の実態

次の研究プロジェクトはRevouvAgriであり、これは「農業・農村空間応用経済学社会学センター」(CESAER, INRAE Bourgogne-Franche-Come)のIndaらにより行われた(Inda et al., 2025)。彼らはまず、全国での2020年センサス結果に言及し、2010年以前の就農者と2011年以降のそれとの就農者のプロフィールを比較している(表2)。この表から見られるように、非農家出身者による就農、もしくは親元ではない経営、すなわち家族外(HCF)での就農が顕著に増えていることがわかる。また同様に、女性就農者、直売や有機農業を実践している農業者も多く、小さな規模での経営者も近年、増加していることがわかる1

表2 2010年以前と以降との就農者のプロフィール比較(%)(2020年センサスより)

2010年以前 2011年以降 経営全体
HCFの経営主 23 39 28
女性経営者割合 18 32 22
マイクロ・小規模経営 52 61 54
直売 20 32 23
有機農業 12 19 12

(出所)2020年農業センサス、Agreste(2022)より筆者作成。

また別の研究(Gorge, 2024)によれば、2023年11月時点での調査で、10年以内での農業法人就農者79人のうち、配偶者を組合員としている場合が26%で、11年以前での法人就農者528人のうちでは42%である。また経営に関わらない組合員を擁する法人では10年以内の法人就農者が19%であるのに対して、それ以前での法人就農者では11%である。個人経営での就農の割合は、それぞれ56%、54%で差はない。このように近年の法人就農では、ますます家族的性格が消失し、外部資本を導入している経営が増大している。

RenouvAgriによる研究は、こうした全国レベルでの一般的特徴を踏まえた上で、ブルゴーニュ・フランシュ・コンテ州ニエーヴル県での非農業出身者NIMAの41人の農業者の軌跡を辿る。標本数こそ少ないものの、NIMAを通じて社会階層間の移動のロジックを見ることができる。この研究チームが同県を研究対象としたのは、この州の中で最も農業就業者の更新率(離農者に対する新規就農者の比率)が低い県だからである。その対象者の年齢は21~52歳で、彼らの出身階層は、民衆階級8人、中間層13人、上級管理職層20人である。彼らの就農以前の職業は農業労働者、ブルーカラー労働者、公共団体コーディネーター、民間の管理職、公務員(学歴に応じたカテゴリによりAとB、Cに分類される)、自営業、自由業、などである。こうした出身階級からの移動により、これらの就農者の軌跡は以下のように分類される。階級零落déclassement2、職業的離脱、社会的上昇もしくは水平移動、早期の農業順応である。

以下Indaら(Inda et al., 2025)によりながら非農家出身者の就農のタイプを見ておこう。

(1)  階級零落(10人)

彼らは中間階級(公共部門の中間的職業)や上流階級(芸術、知的職業、自由業、民間企業の管理職層など)の家庭の出身である。学歴資格を重視する家族の中で成長し、社会的出自としては農業世界から遠かった。高い文化的資本を相続したにもかかわらず、このグループの6人は混乱した学業経歴を辿り、留年やバカロレア取得以前もしくは学士号取得以前に学業を放棄している。彼らの職業生活は、最初の期待にそぐわないような多様な職業(農業季節労働者、ベビーシッター、家事代行手伝い、労働者など)経歴を辿ることになり、しかも何度かの長期にわたる失業期間により経歴が中断している。

このグループの他の4人は、上級学歴資格を取得し、期待通りのキャリアを辿ることになった。写真家や陶芸家、地方公共団体でのコーディネーターなどである。しかしその身分は脆弱で、生活するのに十分な給料ではなく、その学歴資格に似合わないような部門での就業を甘受せざるを得なかった。家事代行やホテルでの雇用、労働者、建築作業員などである。

こうして彼らは出身家族の社会的状況に照らして階級零落を体験することになり、当初の希望に対して、フラストレーションを抱え、その多くは、経済的脆弱性にも直面している。彼らは32~44歳で就農し、所属階級変更reclassementを行う。農業の環境的価値や社会的効用という観点で、自らが象徴的に賞賛する仕事に就くことで、自身の社会的希望と、自らの職業的な客観的状況との間の格差に折り合いをつけることができた。彼らの家族的出自として農業との関係はなかったが、彼らの体験が農業への職業転換を検討させるに至った。すなわち彼らは、季節労働での農業労働(収穫、ブドウ摘み、剪定など)、ウーファー(有機農業経営でのボランティアなど)を体験したり、家庭菜園での野菜の収穫などを行なっていた。また6人はさまざまな社会運動や自律的共同生活プロジェクトに参加しており、その軌跡は70年代の新農村人に近い、という。

(2)  職業的離脱の軌跡(14人)

このグループは最初のグループよりもよりヘテロな社会的出自を有している。上流階級出身者は9人(親の職業は知的職業、エンジニア、民間の管理職層、企業主、自由業など)いるが、3人は中間的階級出身(職人、商人、カテゴリBの公務員、テクニシャン)、2人は民衆階級出身(労働者、公務員カテゴリC)である。

彼らの学歴資格は上級ディプロム(短大卒BTSから修士まで)、農学エンジニア学校、機械系エンジニア、政治研究院IEP、商業学校などを卒業した後に、公務員や民間の管理職層となっている。具体的には教師や地方公共団体コーディネーター、エンジニア、企業の管理職などであり、十分な所得を得ていた。

第一のグループよりも、このグループは、それほど農業と無縁であったわけではない。6人は農業と関係があった。その家族的出自の点で、一人は祖父が、もう一人は叔父が農業者であったし、学歴資格の点で農学エンジニアであった。また彼らは農業と関係した仕事に従事しており、自然保護地区Natura2000や州自然公園のコーディネーター、国立農業環境研究所INRAEの研究エンジニア、農村振興NPOの事務局長であった。

しかし彼らはそもそも、農業者になろうとは思っていなかったという意味で、転換であった。彼らの軌跡は1970年代の大地への帰還運動とも区別される。それは70年代の抵抗運動の延長線上ではなかったからである。

これらの人々にとって、こうした職業的転換は、以前の仕事についての職業的幻滅によるところが大きく、とりわけ彼らが環境問題に関する部門で働いてきたことによる。彼らが農業の中に、彼らの好みと信念にあった仕事を見たのも当然である。

彼らの以前の職業からの離脱は、これらの仕事の制約条件により示されており(ストレス、時間、しばしばの移動、家からの遠さなど)、彼らは、就農することで、より良いワークライフバランスを求めたのである。彼らの転換は社会空間における移動と、所得の減少をもたらしたが、14人中、男性の4人、女性の1人について、配偶者が良い収入があったことで就農が可能となっている。

(3)  社会的上昇もしくは水平移動(7人)

このグループは、社会的にも、地理的にもそれほどの移動を伴わない。彼らの親は労働者やホテル従業員(給仕、料理人)、職人(理容師、自動車修理工)などである。こうした社会的出自により、上級管理職層や知的職業、中間的職業の階層からよりも、農業への参入はより容易であった。

彼らは地方への根付きにより特徴づけられ、そのうち5人は、ニエーヴル県内で成長し、他の2人はパリ周辺の出身で、配偶者が同県出身である。農村地帯で生まれたので、この最初の5人は子供の頃から農業と親しかった(家族や友人を通じて)。しかし、早期から就農の準備を始めていたわけではなく、上の職業離脱のタイプと同様に、以前の生活では農業者になろうとは望んでいなかった。

学校では、職業向けの教育をうけ、バカロレア以下の学業資格(職人的職業適格証CAP、事務的職業教育免状BEP、職業バカロレア)を有し、農業とは関係のない分野であった(販売、流通、対人支援、会計、経理など)。その学歴資格格付けにあった職業に就き、労働者、従業員(販売店員、経理、家事支援)、現場監督などになった。長い職業経験(6年、10~22年)を経て、就農した。

彼らが就農したのは農業への魅力とかではなく、前職の労働条件のキツさ、ヒエラルキー的従属、賃金の低さ、長時間労働などのためである。労働の自律性の回復、自分で時間を自由にできること、プライオリティ決定の自律性、ワークライフバランスを考えて、就農を決断したのである。

こうした目標は、上級管理職層による職業離脱とも重なるが、こうした分岐の象徴的関与は全く異なる。上級管理職層の再転換は社会階層零落、所得の喪失を伴うが、民衆階級のそれはむしろ、上昇移動(現場監督の場合を除く、そこでは水平的移動)、独立した地位を保証するものであった。

(4)  早期の農業順応(10人)

このグループは子供の頃から、あるいは成人してから、農業に強い関心を持ち就農している。彼らの出自は多様であり、5人は労働者家族や従業員、現場監督、自営業の家庭出身であり、上の事例のグループと同様である。そのほかは中産階級、上流階級(親は教授やエンジニア、企業の上級管理職層、心理士、教員など)で、階級零落や職業的離脱と似ていている。農村で成長したものと、都会で成長したものと、二つに分かれる。

社会的、地理的出自の多様性にもかかわらず、これらすべての人々は同じ軌跡を共有している。すなわち、早い頃から農業労働への順応がなされていたことである。農村で育ったものについては、近隣の農場や学友の農場への訪問があり、そのほかについては、農村でのヴァカンス、農業者との直接的接触が農業への強い関心を持たせた。

彼らは農業高校に進学し、9人は農業バカロレア、7人は「農業短大BTSA農企業の分析、行動、戦略」、「家畜生産」を修了している。8人は学校のヴァカンスの時にボランティアないし報酬を受けて、農作業を行なっている。学業を終えると、8人は農業関連雇用労働に従事し、しばしば、技術普及、商業、運転手を行いつつ、農業経営での見習い実習を経験している。こうして彼らは遊びや学校、職業を通じて、徐々に就農の準備を行なっていた。彼らにとって就農は、転換ではなく、若い頃からのプロジェクトを具体化したものであり、賃金雇用されている期間は比較的短い(8人は2–4年、2人は6年と12年)。

ここに示唆されているように、非農家出身者による就農促進において、農業高校の役割が重要であるように思われる。農業食料主権省の報告書(MASA, 2023)によれば農業高校における農業者及び農業労働者の子弟の割合は、1990年に35%であったが、2020年には10%と減少し、非農家出身の生徒が世代刷新の大きなポテンシャルを有するとされているからである。Indaらの研究は、こうした農業高校における早くからの農業への順応について重要な示唆を与えてくれよう。

(5)  新規就農者の作目分野と職業集団との関係

職業離脱では野菜が多く(8人/14人中)、上昇移動・水平では養鶏(4/7)、早めの農業順応では、草食獣(10/10)、階級零落の場合は、非典型的な生産が多い(薬用香料作物、小麦=パン作り、羊毛生産、小さな果実、苗木)。階級零落と職業離脱では有機農業(20/24)が多く、早めの農業順応もしくは上昇移動・水平移動では、慣行的農業が多い(11/17)。

早めの農業順応では、周辺への社会的統合は容易で、その農業への考え方は、相続した経営や、地域の支配的経営モデルを継続することである。こうした周辺環境との協調性は、相互扶助的関係を促し、農業機械の共同購入、近隣農業者との共同作業を容易にさせる。これらの新しい農業就業者は、さまざまな農業組織にうまく統合され(農業機械協同組合CUMA、農協、農業者組合、クレディアグリコールなど)、こうした組織の中で彼らは代議員を務めている。

階級零落や職業離脱の場合、事態はより複雑である。彼らは農業の目標を単に生産だけでなく、環境保全と考え、こうして彼らに経営を委譲したかつての農業者と緊張を引き起こし、生垣の保全を主張する一方で、化学肥料の利用や狩猟に批判的で、集落の農業者から孤立する傾向にある。

以上がIndaら(Inda et al., 2025)による研究の概要である。標本数が少なく、また一つの県での調査ということもあり限界があるだろうが、一口に非農家出身者NIMAの就農といっても、多様である。

3.3  新規参入者のプロフィールとその就農プロジェクト、生産組織との関係

本稿で紹介する、フランス農業省による「新しい農業就業者」研究プロジェクトの三つめはAgriDinamoプロジェクトであり、これはトゥルーズ農業大学(INP-AgroToulouse)により取り組まれた。ここではGazoらの研究報告書(Gazo et al., 2025a)とその概要(Gazo et al., 2025b)を紹介することにしよう。

(1)  研究の背景

まずGazoら(Gazo et al., 2025a)は彼らの研究の背景を述べている。すなわち2010~2020年の二つのセンサスの間に10万の経営が消失し、経営主は減少し続け、2023年の更新率(離農者数に対する新規就農者の比率)は83%(MSA 2024)でしかなく、今後2030年までに13万7,000人が離農するものの、多くは決まった後継者はいない(CCMSA、2022年8月)、という。しかも参入する人々の企業家的意欲は、離農により解放される経営構造とほとんど一致しない(Cour des Comptes, 2023)。現在の新規就農の新しさは社会人口的プロフィールにではなく、以下の三つのタイプの非典型的結合にある。すなわち就農者の社会人口的プロフィール(新規就農者の年齢や性別、家族状況、農家出身か否か、教育資格レベル、職業的軌跡)、経営プロジェクト(動機、有機農業や地理的表示など、販売方法、兼業か否か、多角化など)、そして生産組織(個人経営か法人か、農地・生産設備、働き手、経営作目)である。こうしてGazoらはこうした三つの次元、すなわち「プロフィール、プロジェクト、組織」を接合することで、新規就農者が、どのようにその職業的プロジェクトや生活プロジェクトを実施し、経営構造(移譲される)と折り合いをつけるのか否か、農業に留まるのか否か、農業経営をダイナミックに進化させることになるかを理解しようとする。

(2)  経営の分類

LegagneuxとOlivier-Salvagnacは2010年センサスを利用して、フランスの農業経営を分類した(Legagneux & Olivier-Salvagnac, 2017)。すなわち経営の法的構成(個人経営か法人か)、経済規模(経営面積、販売額)、資本構造(家族資本か、外部資本か)、ガバナンス(組合員数、その血縁関係)、労働組織・働き手(常雇、季節雇、外部への作業委託)などによって、経営タイプの分類がなされた。Gazoらは彼らの経営分類手法を踏襲して、2020年センサスのデータから、2014年以降、新規に就農した経営者がどのような経営に就農し、経営を行なっているかを示そうとするのである。

彼らはまず、二つの大きな経営分類を行う。第一の分類は、経営標準粗生産額(PBS)6,000ユーロ未満のマイクロ経営(T0a, T0b, T0c)で、3万3,439経営ある。第二の分類はPBS 6,000ユーロ以上で、かつフルタイム換算就業者数(ETP)が0.4以上の経営35万5,275経営(T1a, T1b, T2, T3, T4, T5, T6, T7, T8)である。

彼らによる経営タイプは以下のように、さらに12に分類される。

①T0a:「ホビー、高齢マイクロ穀物経営」:最低限の就業による、単作的で家族資本の老齢個人経営で、穀物部門に多い(2020年センサスの経営全体の2%)。経営の特徴としては個人経営、平均面積3ha、PBS平均・中央値1,600ユーロである。また労働組織としては、30年以上前に経営主として就農し、経営主のみが経営に従事し、ほとんど農作業を行わず(平均ETP、0.1)、24%の経営のみが外部作業委託を行う。

②T0b:「作業委託マイクロ穀物経営」:家族資本のマイクロ経営で、顕著に作業委託を行う、活動量の少ない、穀物単作の高齢経営である(全経営の4%)。構造的特徴としては個人経営で、PBSの平均・中央値がそれぞれ2,000ユーロ、1,400ユーロである。また労働組織としては、ほとんど高齢経営者一人の働き手によるが、ほとんど農作業をしない(作業委託以外の平均ETPは0.1)。57%の経営が作業委託を行なっている。

③T0c:「少活動多角化家族マイクロ経営」:家族資本の高齢経営だが、季節雇と作業委託の働き手により活動多角化を維持している(全経営の1%)。個人経営でPBSの平均・中央値ともに2,500ユーロである。労働組織としては高齢経営者一人により、その時々に家族働き手がおり(作業委託を除いたETP、0.3)、19%は作業委託を、11%が季節雇を利用する。生産組織としては多角経営で耕種部門、ブドウ・ワイン、多様な家畜飼養も行う。直売や多角化活動(ツーリズムなど)も行う。

④T1a:「雇用労働者利用、少ない活動、穀物、ワイン小規模経営」:家族資本の小規模高齢個人経営で、少ない単作的活動に従事し、雇用や家族手伝いによる混合的な働き手による(全経営の11%)。PBS平均4万2,000ユーロ、中央値1万9,000ユーロで、高齢経営者(ほとんど70歳以上)か、兼業による。配偶者の支援もあり(ETP平均、0.2)、10%の経営が作業委託を行う。

⑤T1b:「少ない活動での家族小規模経営」:家族資本の小規模、穀物単作的個人経営、パートタイム就業、混合的働き手による(全経営の8%)。平均PBSは5万7,000ユーロ、中央値2万8,000ユーロである。80%は兼業で、家族働き手に依拠し、場合によって季節労働者を雇用(ETP平均0.6%)し、6%が外部委託を行う。

⑥T2:「作業委託あり、多角化中規模経営」:家族資本で多角経営、フルタイムの経営主により、しばしば配偶者の支援、外部委託による。経営全体の41%を占める。個人経営もしくは有限責任農業経営法人EARL(一人法人もしくは夫婦での法人)であり、PBS平均は14万5,000ユーロ、中央値10万6,000ユーロである。経営主はフルタイム就業で、場合によって家族メンバーの支援もある(作業委託以外では、ETPは1.4)。経営の97%で常雇、21%で季節雇があり、45%は外部委託を行う。作目としては肉牛、酪農、複合作物・家畜である。

⑦T3:「雇用労働利用による多角化、中大規模経営」:家族経営、中規模から大規模、多角化、環境認証に取り組む。経営全体の14%である。パートタイム経営主により、混合的働き手に依拠し(グループ全体の16%)、EARLが多く、PBS平均15万ユーロ、中央値10万7,000ユーロである。しかし法人経営の21%については20万ユーロを超え、40万ユーロに達する場合もある。労働組織としては経営主と家族、農業労働者の混合(作業委託以外のETP平均1.6、場合によっては4.0に達する)、外部委託は少ない(15%のみ)。19%は常雇、37%が季節雇がある。複合作物・家畜の多角化を行い、環境認証による生産のほか、農場での加工・直売もある。

⑧T4:「雇用労働による穀物大規模経営」:家族資本の大規模経営、経営主と一人の雇用による穀物経営である(経営全体の5%)。法人経営(EARL、農業経営民事法人SCEA)により、PBS平均18万ユーロ、中央値12万7,000ユーロで、それぞれの法人の24%と6%については20万ユーロ、40万ユーロを超える。農地の集約化によって大規模経営が可能となっている。多くは家族資本だが、わずかに外部資本の経営もある。フルタイム経営主と雇用労働、場合によって配偶者(作業委託以外ではETP1.5)による。19.8%は常雇、28%で季節雇がある。6%は作業委託を行う。経営の20%について穀物有機農業を行い、農場直売と特定の会社への販売も行う。

⑨T5:「畜産複数法人巨大規模経営」:組合員の形での専門大規模経営、混合的な働き手による(「大規模畜産GAEC」)(経営全体の7%)。大規模法人経営(GAEC、酪農民事法人SCLなど)で、3人以上の組合員を擁し、PBS平均・中央値ともに34万ユーロである。資本構造として複数の親族ないし非親族組合員からの資本出資による。労働組織は組合員と農業労働者からなる混合働き手により、家族支援はあまりない(30%の経営のみ)、作業委託以外のETPは3以上で、7を超えることもある。穀物などの収穫作業は多くの経営の場合、外部委託による。作目は肉牛、酪農が中心である。

⑩T6:「雇用型多部門巨大経営」:複合専門経営で、雇用労働による混合資本の大規模経営である(経営全体の4%)。法人経営で(SCEA、有限責任農業法人SARL)、それぞれの作目に向けた複数の法人が重なっている。例えば酪農と穀物を結合した法人が、輪作と機械利用を共有する法人を形成する場合などがある。PBSの平均49万3,000ユーロ、中央値41万5,000ユーロである。家族と外部からの資本出資により、4人以上の組合員、非経営組合員による法人である。多くは雇用労働により(平均4.4ETP)、経営主の労働時間割合は、経営全体でのそれの39%、雇用労働割合は52%である。84%は常雇、74%が季節雇を利用している。作目は多角的専門化がなされ、ブドウ・ワイン、果樹野菜、施設型畜産、エネルギー生産がなされ、農場での加工と直売、卸が取り組まれている。

⑪T7:「雇用型、混合資本、ワイン巨大経営」:混合大規模経営、付加価値の高い生産への専門特化がなされ雇用労働による(「大規模ワイン・ドメーヌ」)(全体の1%)。資本構成は法人で(SCEA, SARL)、PBS平均61万1,000ユーロ、中央値43万9,000ユーロである。家族と外部から資本出資される。89.5%は常雇、75%は季節雇を利用し、ETPは7.6であり、経営主の労働時間割合は全体労働時間の23%で、家族のそれは9%、雇用労働は52%である。特にブドウ・ワイン部門に多く、わずかに花、果樹野菜、養豚も見られる。

⑫T8:「非家族的、果樹野菜、養豚養鶏」:非家族的巨大経営で、工業部門に統合されている(全体の1%)。法人経営(SCEA, SARL)で、PBS平均100万ユーロ以上、中央値72万6,000ユーロである。多くは外部からの資本出資による。雇われ経営者により、もっぱら常雇と季節雇を利用する(平均ETP23)。作目は果樹野菜、施設型畜産(養豚、養鶏)で、卸も行なっている。

(3)  農業経営の分類と就農のダイナミズム

2014年~2020年の就農者を、上述の経営タイプ別に分類したのが以下の表3である。

表3 経営タイプごとの新規就農者(カッコ内は家族外就農HCF)

就農時年齢(HCF)
年金者割合(HCF)
家族就農の割合(%) 兼業の割合(HCF)
(%)
農業教育なし新規就農者割合(HCF)
T0a 48(42)
28%(14%)
63 72(84) 72(56)
T0b 45(43)
21%(13%)
64 79(85) 69(56)
T0c 45(41)
20(12)
57 79(85) 64(48)
T1a 41(39)
12(7)
63 85(89) 57(45)
T1b 40(37)
10(4)
60 87(91) 53(42)
T2 37(34)
7(2)
61 5(2) 35(28)
T3 35(35)
3(1)
48 8(1) 27(23)
T4 34(34)
3(2)
59 40(2) 30(28)
T5 29(31)
1(0.6)
73 3(4) 11(11)
T6 36(38)
4(3)
64 16(17) 28(25)
T7 40(43)
10(11)
54 41(47) 43(40)
T8 39(39)
5(3)
32 17(16) 30(26)

(出所)Gaozo et al. (2025a) p.32より筆者作成。

読み方:T0aタイプの経営への新規就農の場合、就農時の平均年齢は48歳で、家族外での就農(HCF)では42歳である。年金受給者の割合は28%で、HCFのそれは14%である。家族の経営での就農(親元就農)の割合は63%で、兼業者(引退者含む)の割合は72%、HCFの場合は84%である。農業教育を受けずに就農したものが72%を占め、HCFでは56%を占めている。2020年センサスでは新規就農者(2014~2020年の就農者)について、親族関係の調査はなく、農家出身者でありながらも、親元就農しない農業者も含んでおり、非農業出身者NIMAは正確には把握できない。HCFは親族(自分の親や配偶者の親、第三親等までの親族を含む)の経営から独立した経営での就農である。

Gazoら(Gazo et al., 2025b)はこの12の経営のタイプをさらに三つに分け、新規就農者の特徴と結合させて、以下のように要約している。

①T0a–T0c

高齢者による就農(T0a, T0b)や兼業者によりなされるそれ(T0c)で、小規模(PBS 3,000未満)である。彼らのフルタイム換算での農業就業時間(ETP)は0.2未満で、穀物小規模経営(T0a)であったり、その大部分を外部委託し(T0b)、家族手伝いは時々ありながらも、より多角的な経営である(T0c)。2014年以降の就農者の7%が、この三つのタイプに属する。このグループでは離農者を就農者では補えず、その数は6万8,455(2010)から3万3,439(2020)に半減している。このグループの経営はフランスの経営全体の7%を占めるに過ぎない。多くは農業教育を受けていないことから、高齢の親に代わり、作業委託を活用しつつ、作業を必要としない穀物に特化し、細々と家産を維持する兼業者の姿が浮かび上がる。

②T1a、T1b、T2

小規模経営(T1a, T1b)もしくは平均規模の経営であり(T2)、経営主は兼業で一人のみで働いている。第一のグループとは経済規模により区別されるが(PBSは5万~15万ユーロ)、その他の特徴は同様である。穀物専門経営では一人のみで働き(T1a, T1b)、より大規模、複合作物家畜の場合は雇用労働、作業委託(T2)を利用している。このグループの経営数は2020年での経営の60%を占めるが、2010年以降、24%減少し(30万6,487から23万3,228)、離農者を新規就農者では補えない。典型的な家族的複合経営であるT2は、経営数全体の40%を占めるものの新規就農者の割合は30%ほどにとどまり、縮小傾向にある。

③T3–T8

平均規模から大規模の経営がこのグループに該当し、そのガバナンス及び組織によって複雑な形態をとる。この集団の経営は、大規模(15万~100万ユーロ)、雇用労働の多さ(T5~T8では3ETP以上)に特徴があり、大抵は賃金雇用(T6~T8では、50%~100%)に依拠している。T4、T6、T7、T8は複雑なガバナンスの形態をとり、非経営組合員からの外部資本を導入している。そこでは複数の生産モデル、環境認証行動と結合した活動多角化(T3)、経営の結合(T5)、専用の法人におけるそれぞれの活動を持ったマルチ・スペシャリゼーション(T6)、生産的集中(T4, T7, T8)の形をとる。T8は「企業」の特徴を持ち(非家族資本、雇用労働中心)、T6、T7もこれに近い。こうした就農のダイナミズムが、このグループの経営数の12%増加に貢献している(11万891から12万4,388に)。このグループが農業経営の32%を占める。

Gazoらによるこうした分類分けは、二つのセンサスの間での農業構造の刷新のダイナミズムを明らかにしている。農業構造の複雑化と結合した規模拡大現象が顕著に見られ、それはT3からT8のタイプに対応する経営実数の増加に示され、逆に古典的な家族経営タイプ(T0, T1, T2)が後退している。

(4)  複雑な経営でのHCFの多さ

Gazoらによれば(Gazo et al., 2025b)一般的に、HCFの割合は、それぞれのタイプに存在し30~40%であるが、三つのカテゴリは例外で、「畜産の巨大連結法人T5」ではHCF割合は低く(25%)、逆に「複数法人による多角化経営T3」、「企業型T8」ではHCFの割合が多い(それぞれ50%、70%)。またT5に親元での就農が多いが、とりわけ酪農部門での共同経営農業集団法人GAECは週末の労働を軽減させ、所得水準を確保させ、家族内移譲を促進することで効率的であり、HCFが少ないのである。このT5では農業教育を受け、最も若く就農している。

T3とT8のHCFは、HCF全体に比べ、最も若く就農し(平均35歳)、兼業は少なく(7%)、しかも農業教育を受けている(77%)。その参入コストを考えれば、これらの就農は農作業には従事せず、経営マネージャー組合員として(従業員であろうとなかろうと)、もしくは投資家(非マネージャー組合員)としての就農である。これまでの研究では、集団的形態での、あるいは小規模での非農業出身者NIMAの就農が多いとされてきたが、こうした分析結果は、特定のNIMAは様々な企業家的プロジェクトの担い手であることを示している。資本構造の複雑な経営でのHCF就農は、彼らが農業出身であることも排除しない。こうして2020年センサスからの統計が示唆するのは、T3とT8に見られるように、HCFが経営構造を刷新させ、特定の形態の企業、とりわけ大規模で、多角的で、環境認証行動、企業型農業を促進していることである。

Gazoらの研究が2014年~2020年の新規就農者を分析したものであり、2023年以降のアクティブ・ファーマー規定の導入がT0グループの、高齢者による家産保全を目的とした就農行動に、今後どのような影響を及ぼすことになるのか関心が持たれる。

以上、我々は、フランス農業食料主権省による「新しい農業就業者」にかかる5つの大規模な研究プロジェクトのうち3つのプロジェクトの結果を紹介してきた。

4.  おわりに

2025年に成立した新農業基本法は食料主権を最優先課題としている。鳴物入りで開始された「農場から食卓へF2F」戦略の後退に見られるように、欧州での最近の動向は環境規制の緩和の方向に進んでおり、フランスも国際競争力強化の方向に大きく舵を切っている。そのような中で、どのような新規就農者がフランス農業の競争力を担うか、政策当局の関心が向けられているところである。EUとメルコスールとの自由貿易協定をはじめとして、EUもフランスも情報通信技術に長けた若者による世代刷新が求められている。他方で、国際競争力向上に限界のある条件不利地帯や山岳地帯での農業者の維持は、活力ある農村の維持にとって不可欠である。本稿で紹介した、「新しい農業就業者」についての研究プロジェクトの成果は、同様の課題に直面している我が国にとっても貴重である。

1  農業センサスの意味でのマイクロ経営は標準粗生産額(PBS)2万5,000ユーロ以下を、小規模経営は同25,000~10万ユーロ未満を示しており、後のGazoらとは分類が異なるので注意を要する。

2  この概念について、Indaらは社会学者P. Bourdieu(1978)に言及している。

参考文献
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  • Gorge, S. (2024) Les Nouveaux Visages de l’Agriculture. Terra Nova.
  • Inda, D., Coquard, B., & Senecebe, Y., (2025) Agriculteurs <non issus du milieu agricole> en Bourgogne-Franche-Comte: trajectoires biographiques et entrées en agriculture. Analyse, no.216, MASA.
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  • MASA (2025) Agreste Primeur, no.2.
  • MASA (2023) Adaptations de la politique d’accompagnement de l’installation en particulier vis-à-vis des personnes non issues du milieu agricole. CGAAER, no.23030.
  • MASA (2022) Agreste Primeur. no.10.
  • Mazaud, C. et al. (2025) Portrait social des nouveaux agriculteurs. Parcours d’installation, pratiques et rapports au métier. Rapport final, Projet Agrinovo.
  • Raffray, M. (2025) Quels actifs pour assurer la relève en agriculture? Paysans & société, no.413(5), pp.5–9.
 
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