イノベーション・マネジメント
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論文
  • ―「企業内マイクロ・データ」と「質問紙調査」の統計分析―
    梅崎 修, 武石 恵美子, 林 絵美子
    原稿種別: 論文
    2023 年 20 巻 p. 1-20
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    本稿の目的は、自律的なキャリア意識が主観的および客観的なキャリア・サクセスに与える影響を分析することである。本稿では、日本企業1社を対象として企業内マイクロ・データと質問紙調査を結合したデータセットを使い、自律的なキャリア意識としては、Briscoe et al.(2006)が開発したプロティアン・キャリアとバウンダリーレス・キャリアを利用した。分析の結果、まず、同じ自律的キャリア意識であってもプロティアン・キャリアの下位尺度である「自己指向」は、客観的、主観的キャリア・サクセスの両方に対して正の効果、「価値優先」は客観的キャリア・サクセスに対して負の効果であった。加えて、バウンダリーレス・キャリアの「移動への選好」が主観的キャリア・サクセスに対して正の効果が確認された。「移動への選好」が客観的キャリア・サクセスに対して正の効果を持たないのに、主観的キャリア・サクセスの正の効果がある理由を議論した。移動できるという選択肢を心理的な負担を感じないで選択できるのだ、という意識が、キャリア満足度を高めている可能性が考えられる。以上の分析結果は、先行するドイツ企業の分析や日本の全国調査の分析結果とも異なる。本稿では、分析結果を比較し、結果が異なる理由を検討した。

  • ―第二次大戦期の戦時労使関係による制度・組織転換を中心として―
    河村 哲二
    原稿種別: 論文
    2023 年 20 巻 p. 21-46
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    第二次大戦後1950年代・60年代のアメリカ経済の「持続的成長」は、企業レベルの構造、とりわけ、アメリカの基幹的量産産業における大企業・巨大企業の戦後企業システムを、国内を中心とする経済成長連関の中核とするものであった。それは、アメリカ型大量生産システムとそれに適合的に確立された戦後「伝統型」労使関係、「ビューロクラティック」な経営管理組織を伴う「成熟した寡占体制」を主要な支柱とするものであった。そうした戦後企業システムは、長期の歴史的展開の産物であるが、最も直接には、第二次大戦の戦時経済における戦時産業動員体制によって決定づけられた制度的・組織的変容を画期として、戦後初期の戦後再転換過程で、一定の修正を受けて確立されたものであったとみることができる。本稿は、そうしたアメリカの戦後企業システムの重要な支柱となった「伝統型」労使関係」の形成と確立にとって最も重要な、1930年代に始まるアメリカ労使関係の歴史的転換を受けながら展開した、第二次大戦期の戦時産業動員と戦時経済のもとで生じた、「長期戦略・政策形成」、「団体交渉・人事政策」、「職場・個人/組織関係」という三つの層全体にわたる制度・組織転換のプロセスと主要点を明らかにする。

  • 菊谷 正人
    原稿種別: 論文
    2023 年 20 巻 p. 47-84
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    1988年12月に消費税法によって公布され、1989年4月に施行された消費税は、油・酒類・タバコを除く広範な物品・サービスの供給に課される間接税である。わが国おける消費税は、製造・流通過程の各段階で課税され、かつ、その製品の最終消費者に担税させる附加価値税(VAT)でもある。VATとは、事業者が販売時に課税され、税務当局に売上税額を報告するが、事業者自身の購入品に支払う仕入税額を取り戻すことができる多段階一般消費税である。わが国では、消費税導入時から仕入税額控除の方法として会計帳簿に基づいて帳簿方式が採用されてきた。2023年10月1日には当該税額控除の方法は、インボイスに基づいて仕入税額を売上税額から控除するインボイス方式に変更される。インボイスは、課税事業者が他の課税事業者に課税物品を供給する際に交付する必要がある。本稿では、帳簿方式とインボイス方式における特徴と問題点が比較的に検討される。

  • ―2010年以降の変化を中心に―
    丹下 英明
    原稿種別: 論文
    2023 年 20 巻 p. 85-100
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    近年、中小企業の国際化が進むに伴い、関連する研究が蓄積されている。しかしながら、2010年以降の先行研究をレビューし、現在の到達点と今後の課題について論じたものは少ない。

    そこで、本稿では、2010年以降に公表された日本中小企業の国際化に関する先行研究を中心にレビューを行い、中小企業の国際化研究の現状と課題を示すことを試みた。その結果、以下の2点を明らかにした。

    第一に、中小企業の海外進出に着目した研究をみると、研究の焦点が変化している。具体的には、①海外市場開拓、②非製造業、③急進的な国際化(ボーングローバル企業)、④越境ECやトランスナショナル創業などの多様な進出形態に着目した研究がみられる。

    第二に、中小企業における海外進出後に着目した研究をみても、研究の焦点が変化している。具体的には、①海外子会社における販売などの新たな機能の獲得、②外国人人材の活用など、海外子会社のマネジメント、③日本国内拠点にプラスの影響を及ぼすルートの解明に着目した研究がみられる。

    2010年以降、中小企業の国際化は大きく変化している。中小企業の海外進出および海外進出後の変化について、引き続きさらなる深堀が必要と考える。

  • ―システマティック・リテラチャー・レビューに基づいて―
    李 瑞雪
    原稿種別: 論文
    2023 年 20 巻 p. 101-134
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    経済のグローバル化に伴いロジスティクス・クラスターは重要性を増しており、世界各地でロジスティクス・クラスター創成を目指すプロジェクトが数多く推進されている。何がロジスティクス・クラスター創成の成否を決めるのか。この問題は政策の立案と実行および企業の経営にとって重要な研究課題であるにもかかわらず、十分な研究蓄積ができておらず、理論の構築は政策の実践より遥かに遅れている。本研究ではこのギャップを埋めるべく、システマティック・リテラチャー・レビュー手法に依拠し、ここ20年間に刊行されたロジスティクス・クラスターに関わる208篇の英文査読論文に散在する関連知見を体系的にレビュー・分析することを通して、ロジスティクス・クラスター形成のメカニズムを構成する命題を導出する。

査読付き投稿論文
  • ―グローバル人材不足を補完する組織マネジメント―
    相原 君俊
    原稿種別: 査読付き投稿論文
    2023 年 20 巻 p. 135-148
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    中小企業の対外直接投資が珍しくない時代となった今、グローバル人材が不足しがちで、さらに確保、育成するための資金が十分でない中小企業は、どのように海外子会社へ組織文化を移転させることができるのであろうか。人材面のみならず、中小規模ならではの独自の組織マネジメントを探るべく、調査対象企業におけるインタビュー結果についてSCATを用いて分析したところ、海外子会社に国内本社の意向を押しつけず、国内本社と並列に扱うことで一体感を生み出し、海外子会社への知識移転と、海外子会社での創意工夫も両立させていた。これらは大企業の規模では難しく、中小企業に優位な組織文化移転の組織マネジメントである。海外子会社を国内本社の延長線上にある一部門と見なす組織体系が組織文化を移転しやすくさせていた。また、海外子会社に長く勤務する現地社員が組織文化移転における実践コミュニティのブローカー役を担い、海外子会社の組織文化を維持、継続させていた。

  • ―テンセントSNSにおけるユーザーネットワークの構築・収益化の実現―
    宮川 幸子
    原稿種別: 査読付き投稿論文
    2023 年 20 巻 p. 149-165
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    本論文の目的は、中国テンセント社の事例を通じて、中国SNS市場で成長する企業の経営戦略における間接的アプローチに関する新たな仮説を提示することにある。本論文では「中国SNS市場において経営資源劣位にある企業は、どのようにユーザーネットワーク内の顧客と関係性を構築すればよいのか」という問いを設定し、中国SNS市場におけるスタートアップ企業であったテンセントの短期的な企業成長に着目して事例研究を行う。

    本論文では、「間接的アプローチ」とは、「企業が顧客個人ではなく、顧客集団に対して、新たな顧客間関係の創出を目指して顧客間相互作用を促進する働きかけを行うこと」と定義し、間接的アプローチの方法論を明らかにする。

    テンセントは、間接的アプローチを通じて、顧客間相互作用を意図的に生み出すことより、自社ユーザーネットワークの量的拡大・質的充実とユーザーネットワークの収益化の両方を実現した。その背後では、顧客のあらゆる行動特性分析、心理的特性分析、顧客評価を通じて顧客知識と開発ノウハウを組織内に継続的に蓄積し、企業が直接コントロールし難い消費者主導のコミュニティを活性化させるための製品開発に活用していた。

    テンセントの事例研究を通じて、経営資源劣位企業の戦略として、企業が意図的に顧客間の相互作用を生み出す間接的アプローチの有効性に関する仮説を提示する。

研究ノート
  • ―イタリアのテリトーリオ戦略の適用―
    木村 純子, 二階堂 行宣, 佐野 嘉秀
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 20 巻 p. 167-182
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    本研究は、持続可能な地域発展の実例として注目されるイタリアのテリトーリオ戦略の実践より地域発展のモデルを抽出したうえで、日本における地域発展のモデル構築に向けた試論を行う。調査から、イタリアのテリトーリオ発展モデルをそのまま日本に適用することは難しいことが明らかになった。日本の特徴として、第1に、テリトーリオの範囲は、行政区によりフォーマルに区切られながらも、行政区の中に散在する同業者団体や個別の企業を多元的な核としつつ、これらのアクターがそれぞれ想定する地域ブランドや地域アイデンティティの重なり合う範囲として緩やかに成立している。第2に、交易がコミュニティ形成の契機となる。交易をつうじて地元地域や日本の市場、さらに世界の市場へと開かれた市場に向けた経済活動が、地域ブランドや地域アイデンティティを形成する。第3に、交易の担い手となるのは、農業・漁業等のほか、関連する加工製造・流通・飲食・宿泊などを営む事業主やその業界団体といった複数セクターのアクターである。日本型テリトーリオの形成には多様なアクターの自律的活動や、アクター間のネットワーク形成に向けた仲介や支援が欠かせない。企業活動が重要であることから、そこで働く社員について、ワークライフバランスを実現できる雇用機会や、消費者としての生活の充実も欠かせない。外部からの環境整備や支援も重要であり、行政の役割が期待されるプロセスである。

  • ―FASBによる公開草案―
    中野 貴之
    原稿種別: 研究ノート
    2023 年 20 巻 p. 183-194
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    米国の会計基準設定主体であるFASB(財務会計基準審議会)は、2022年10月に、セグメント会計基準に関する改定案を公表した。本稿の目的は、同改定案公表に至る経緯を跡づけるとともに、提案内容について検討することである。当初、FASBは、(1)セグメンテーションにおける集約基準の改善、および、(2)開示項目の拡充という二つの主題の検討に着手した。(1)については審議の結果、コスト効率的に集約基準の改善を図ることは難しく、最終的に審議の対象から外された。一方、(2)については、現行基準の維持を前提に、CODM(最高経営意思決定機関)に定期的に提供され、かつ、セグメント利益に算入されている、重要な費用項目の追加的開示が改定案で提案されている。かかる重要な費用の原則の導入により、研究開発費や人的投資をはじめ、企業における重点投資分野および企業の戦略がより鮮明化することが期待される。ただし、一部のFASB委員は重要な費用の原則の有効性を疑問視しており、当該原則がどの程度機能するかは未知の要素を含んでいる。米国は、これまでセグメント会計基準の形成を主導してきているだけに、今後の審議が注目される。

査読付き研究ノート
  • ―北海道光生舎の取り組みを事例に―
    佐藤 俊恵
    原稿種別: 査読付き研究ノート
    2023 年 20 巻 p. 195-213
    発行日: 2023/03/31
    公開日: 2023/03/31
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    本稿では、社会的企業やソーシャル・ビジネスという概念が生まれる前、いわば黎明期に、障害者に「働く場」を提供するという社会的課題を掲げ、1956年に障害者の自立のためにクリーニング業を興した北海道光生舎を事例として取り上げる。当事者団体として発足した北海道光生舎は、日本のWISEの草分け的な存在である。現在は、光生舎グループという非営利の社会福祉法人と営利法人である株式会社で構成されるハイブリッドな組織となり、北海道でもトップクラスのクリーニング業者に成長している。北海道光生舎が、どのように生まれ、どのように成長したのか。その取り組みを創業から創業後10年までのプロセスに焦点を当て、時代背景を視野に入れ時系列に分析した。北海道光生舎は、事業を模索、展開する組織構築のプロセスの中で最適解を選んだ結果、ハイブリッドな組織へと変遷していったことが明らかになった。また、北海道光生舎には様々なステークホルダーの関与があったが、官との関係性が強いことが窺われた。こうした北海道光生舎の取り組みから、日本のソーシャル・ビジネスの原点を見出すことができる。

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