先行研究では、M&Aを成功させるための組織能力である「M&Aコンピタンス(M&A competence)」を獲得する企業の存在が明らかにされている。しかしながら、中小企業においてもこうした概念が適用できるのかについては、明らかにされていない。
そこで本稿では、中村(2003)が示したM&Aコンピタンスの概念を援用して、M&Aを実施した中小企業の特徴を、質問票調査から探索的に分析した。その結果、以下の5点を明らかにした。
第一に、M&Aを実施した中小企業の多くが戦略目標を策定している。また、戦略目標を達成する手段としてM&Aを選択している企業も多い。
第二に、中小企業では主に経営者がM&Aを推進している。
第三に、M&A推進体制の構築やM&Aプロセスのシステム化が十分でない企業が多い。
第四に、経営者は、戦略目標達成の手段として、M&Aを重要な戦略として認識しているものの、社内に対してはM&Aを重視する意識を浸透できていない企業が多い。
第五に、M&Aを実施する能力が競争優位の源泉となっている企業は多くはないものの、ポストM&A(買収後の経営統合)に必要な能力を有するとする企業が比較的多い。
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