日本企業において、DXを推進するための組織要件は何か。本研究では、サイモンの人工物論を用い、組織のインフォーマルな側面がその鍵ではないかと試論し、検証する。いわゆる日本的経営では組織のフォーマルな構造からは抜け落ちる、インフォーマルな側面が濃く存在していることが知られている。マニュアル・ルールにはない、ジョブ・ディスクリプションに書かれていない仕事や部門間でのヨコの調整である。そうしたものがあって日本企業の経営は成立しているとされる。
しかし第4次産業革命を引き金とした変化のなかで、この日本の経営の特徴が不適合を引き起こしている可能性が想定される。サイモンの人工物論に拠れば、組織のかたちと、そこから生み出される人工物のかたちは基本的に一致していることが求められる。ITシステムという人工物の要求する組織のかたちは、インフォーマルな側面が最小化された組織だと想定される。それゆえ日本企業はDXを進めづらいと考えられるのである。
日本企業のいまを捉えようとした組織調査2020のデータを用いた分析からは、確かに組織のインフォーマルな側面が少ない:マニュアル・ルールが充実しており、またヨコのコミュニケーションの必要性が少ないほどに、DXが推進されやすいことが明らかになった。このことから、第4次産業革命の中、日本企業はその特徴でもある組織のインフォーマルな側面とどう向き合っていくのかを考えねばならないことが指摘される。
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