イノベーション・マネジメント
Online ISSN : 2433-6971
Print ISSN : 1349-2233
最新号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
論文
  • ―経営理念と企業変革力―
    片山 郁夫
    原稿種別: 論文
    2026 年23 巻 p. 1-20
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    本研究は、ダイキン工業創業者・山田晁の企業家活動を対象に、その経営理念と意思決定の特徴を歴史的に再構成し、経営学理論との接点を明らかにすることを目的とする。日本の企業家史研究は、渋沢栄一や松下幸之助など代表的経営者を対象に、理念や思想に着目した多くの研究成果を積み重ねてきた。他方で、そうした研究の多くは経営者本人の著作や言説に依拠する傾向が強く、理念と戦略的意思決定や技術革新を結びつけた分析は必ずしも十分に展開されてきたとは言い難い。本研究では、一次資料(社史など)および二次資料を用いて山田の経営実践を歴史的に再構成し、イノベーション・マネジメントや両利きの経営といった理論的枠組みとの接続を試みた。

    山田は1930年代に軍需事業に従事しながらも冷凍機や空調機といった民需製品の開発を進め、戦後は米軍特需を活用しつつ空調産業へのシフトを実現した。さらに1960年代以降は海外展開を強化し、グローバル企業への基盤を築いた。これらの意思決定は、既存事業と新規事業の両立を図る両利きの経営の先駆的事例と位置づけられる。本研究の成果は、①理念と戦略・組織の相互関係に着目することで企業家史研究を補完すること、②歴史的事例を通じてイノベーション理論の適用可能性を検討すること、③日本的経営理念と国際戦略の連関を示すことにある。以上、山田晁の事例は「理念に根ざした企業変革力」を考察する上で重要な学術的意義を持つ。

  • 佐野 竜平
    原稿種別: 論文
    2026 年23 巻 p. 21-32
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    障害者の就労を実践するシェルタードワークショップは、世界各国、特に先進国において、構造的な課題を抱えている。国内に目を向けると、シェルタードワークショップに該当する就労継続支援B型事業所がその圧倒的多数を占めるが、これらは労働関連法の適用除外下に置かれている。その結果、訓練という名目のもと、低い工賃水準に留まり、障害者の経済的自立を阻害し、公的支援への恒常的な依存構造を生み出している。さらに、本来期待されている開かれた労働市場への過渡的ステップとしての機能が滞り、障害者の長期滞留を招いている点が深刻な問題として指摘されている。国際的な視点では、国連の障害者権利委員会が2022年に発出した一般的意見第8号が、シェルタードワークショップのあり方に強い警鐘を鳴らしている。しかし、シェルタードワークショップの安易な廃止を求める二択モデルは、現行制度が担う特に重度障害者に対するセーフティーネットとしての機能消失という潜在的リスクを内包する。本稿は、これら複合的な課題に対し、拙速な廃止論に終始するのではなく、シェルタードワークショップの質の向上と構造的転換を目指す、具体的な政策論議の必要性を提示する。

  • 田中 洋, 天野 恵美子
    原稿種別: 論文
    2026 年23 巻 p. 33-48
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    違法なオンラインカジノの蔓延や若者のギャンブル依存症の増加が社会問題となる一方で、日本初のカジノ開業に向けた準備が進んでいる。カジノ開業に際しては、青少年の健全育成や依存症防止の観点から、カジノ施設への入場が禁止されている20歳未満の者、既にギャンブル依存症等の問題を抱えている者をギャンブル行為へと誘引するおそれのある広告やマーケティングから適切に保護することが重要な政策課題の一つとなっている。健康への悪影響が広く認識され、未成年者に対する広告やマーケティングが厳しく規制されてきたアルコールやたばこと異なり、カジノを含むギャンブルの広告やマーケティングと脆弱な消費者(20歳未満の青少年や既にギャンブル問題を抱えている、もしくはギャンブル問題を抱えるリスクが高い成人等)との接触、それらが及ぼす影響等に関する研究は日本のマーケティングの領域において十分に蓄積されてこなかった。

    本研究の目的は、カジノを含むギャンブルの広告と青少年の接触、それらが青少年等に与えうる影響について海外の研究をレビューし、脆弱な消費者を適切に保護するための広告規制に示唆を得ることにある。

  • Tetsuji Kawamura
    原稿種別: Article
    2026 年23 巻 p. 49-68
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    This paper analyzes the transformation of the U.S. wartime economy during World War II and its formative role in establishing the postwar corporate system and the Pax Americana regime. It sheds light on one of the major pillars of the postwar U.S. corporate system, the American-style mass production system, by showing how wartime production control during World War II directly shaped the institutional foundations of the postwar American-style mass-production system. The wartime production control—particularly the Production Requirements Plan (PRP), the Controlled Materials Plan (CMP), and the Components Scheduling Plan (CSP)—institutionalized nationwide coordination among military demand, industrial supply, and administrative management. In particular, the CMP vertically integrated industrial coordination, aligning critical material flows of steel, copper, and aluminum across firms and sectors. It extended American-style mass production techniques, which operated on the basis of the Bill of Materials and the Order Board system, to the entire wartime economy, creating a vertically integrated framework for synchronizing materials, balancing aggregate demand and supply, and reinforcing large corporations’ dominance. Overall, the wartime experience of these production controls transformed ad hoc mass production into an integrated managerial regime grounded in data reporting, forecasting, and synchronization.

    The paper also traces the postwar diffusion of these control systems into the Defense Production Act (1950), Material Requirements Planning (MRP), and modern global supply-chain management (GSCM). The wartime rationality of forecasting, allocation, and synchronization evolved into the managerial and informational architecture of global production. Thus, wartime mobilization was not an exceptional episode, but a key stage in the institutional evolution of modern capitalism and the foundations of the enduring economic order of the Pax Americana regime, even in the era of globalization.

査読付き投稿論文
  • 杉原 成幸
    原稿種別: 査読付き投稿論文
    2026 年23 巻 p. 69-84
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    組織の中で「歴史」を経営資源として活用する事例が見られる。「歴史」は「過去の事実(史実)」と異なり、活用する企業の主観が加わったものである。本研究では、えちぜん鉄道と沿線自治体、沿線住民組織の歴史活用、中でも「集合的記憶」の活用を考察した。えちぜん鉄道の路線は、かつて京福電気鉄道(以下、京福電鉄)が運営をしていた。京福電鉄は2000年、2001年とわずか半年の間に越前本線で正面衝突事故を起こし、それを契機に福井県下の鉄道事業から撤退した。その後、約2年間にわたり、バスによる代行輸送が行われた。しかし、このバスによる代行輸送は地域社会に大きな混乱をもたらす結果となった。そのような状況を受けて誕生したのが、第3セクターのえちぜん鉄道である。本研究では、2度の事故とそれによって始まった2年間のバスによる代行輸送が地域社会にどのような影響を与えたかを検証する。そしてえちぜん鉄道や地域社会が、バスによる代行輸送の体験という集合的記憶をどのように活用したのか、その活用は意識的なのか、そうでないのかを考察する。

  • ―経営資源劣位企業における新製品開発の事例研究―
    廣澤 祐
    原稿種別: 査読付き投稿論文
    2026 年23 巻 p. 85-102
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    本論文は、経営資源が相対的に乏しい中小企業やベンチャー企業でも、独自の構想力を発揮し、優れた製品コンセプトに基づいた製品開発を実現することで、新たな市場カテゴリを生み出し得ることを明らかにすることを目的としている。具体的には、資源制約下にあるベンチャー企業が、外部のODM(Original Design Manufacturing)メーカーとの協働を通じて新たな製品コンセプトを創出し、市場カテゴリを変革したプロセスを検証した。本研究では、そのプロセスを可視化するために、ヘアケア市場において「ボタニカルシャンプー」という新たな製品カテゴリを確立し、短期間でシェアを急拡大させた株式会社I-neのヘアケアブランド「ボタニスト」の事例を分析する。本研究では、I-neがボタニストを上市するまでに実現した、(1)革新的な製品コンセプトの創出と柔軟な再構築、(2)技術的に有力なODMパートナーを含む外部連携による資源の動員、(3)製品コンセプトに基づいた製品設計と意思決定の三つの行為とそのメカニズムに焦点を当てる。これについて、構想ドリブン・モデルや社会的形成・構成、オープンイノベーションなどの理論に基づいた製品開発アプローチなどの先行研究との関連を検討した。結果として、経営資源の乏しさが、むしろ柔軟な発想と迅速な対応を促し、創造的な製品コンセプトの創出や自社の能力の再解釈による新たな手段の構築など、大手企業にはない革新的アプローチを実現できる可能性が示唆される。

  • ―社会物質性概念の観点から―
    米田 晃, 梅木 隆守
    原稿種別: 査読付き投稿論文
    2026 年23 巻 p. 103-118
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    本研究は、DX推進における新技術導入の成功要因を明らかにすることを目的とし、社会物質性理論、とりわけLeonardiの「鱗状重層(imbrication)」モデルを援用し分析を行っている。調査対象は、Skip Cart®と呼ばれる購買支援カートを導入した株式会社トライアルカンパニーとそのIT子会社であるRetail AIである。2012年から2024年にかけての導入プロセスを6フェーズに分けて詳細に追跡し、人間のエージェンシーと技術の物的制約性との相互作用を動態的に描出した。技術導入は、現場の反発や利用者の混乱、業務負担の増大といった課題に直面したが、反復的な実験と技術の改良、関係者間の信頼構築を通じて徐々に制度化され、最終的には正統性を獲得した。本研究は、従来の技術決定論や社会構成主義的アプローチを超えて、技術と人間との相互進化的な関係に着目し、新技術の定着プロセスを「反復」「安定」「正統性獲得」の3段階として理論化した点に貢献がある。

  • Tsuyoshi Sato
    原稿種別: Refereed Article
    2026 年23 巻 p. 119-139
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    This study explores how internationalization influences firm performance in the semiconductor industry, emphasizing the moderating roles of R&D intensity, institutional quality, and competitive intensity through a two-way and three-way interaction framework. Drawing from resource-based theory, institutional theory, and the dynamic capabilities perspective, we investigate how internal capabilities and external environments jointly shape financial outcomes. Using a 10-year panel dataset of 499 semiconductor and semiconductor equipment firms, we apply Random Effects GLS regression to test a series of curvilinear and interaction effects. The results reveal that the relationship between internationalization—captured via geographic scope and international revenue share—and return on invested capital (ROIC) is nonlinear. More importantly, we find that three-way interactions among internationalization, R&D intensity, and institutional or competitive context significantly affect firm performance. Specifically, firms with strong R&D capabilities operating in high-quality institutional environments or highly competitive markets derive greater benefits from internationalization. These findings suggest that international performance gains are contingent not only on internal resources or external conditions but their alignment. The study contributes to international business literature by offering a nuanced understanding of how three-way interactions moderate internationalization-performance outcomes in innovation-driven sectors.

研究ノート
  • ―鹿児島県大隅の事例を手がかりに―
    木村 純子, 二階堂 行宣, 佐野 嘉秀, 藤本 真
    原稿種別: 研究ノート
    2026 年23 巻 p. 141-157
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    本研究は、日本の地域振興モデルを模索し、特に農水産業を起点とした地域振興のあり方を検討する。イタリアのテリトーリオモデルを参考にしつつ、日本の農村の現状に即した日本型テリトーリオの構築を目指す。イタリアのテリトーリオモデルは、農村コミュニティと市場経済の交易層が相互に支え合い、地域の持続可能な発展を促進するボトムアップ型のアプローチを特徴とする。他方、日本では農村コミュニティが必ずしも確立しておらず、政策的支援も限定的であるため、イタリアのモデルをそのまま適用することは難しい。そこで本研究は、鹿児島県大隅地域を事例に、農水産物生産者と第2セクターのアクターとの協力関係や互酬的な取引関係に着目し、地域ブランドの形成やコミュニティ意識の醸成を通じた持続可能な地域発展の可能性を探る。政策的には、こうした自律的な地域農村コミュニティの支援、およびネットワーク形成や販路開拓の促進が重要であることが示唆される。

  • ―農業食料主権省のプロジェクト研究から―
    須田 文明
    原稿種別: 研究ノート
    2026 年23 巻 p. 159-174
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    新農業基本法の制定とその実施に資するべく、フランス農業食料主権省は2023年に、「新しい農業就業者」について研究プロジェクトの公募を行なった。採択された5つのプロジェクトは2025年に成果を公表しており、本稿はそのうちの3つのプロジェクトについて紹介する。フランスの新規就農者、とりわけ農外からの新規参入者のプロフィール、その経営プロジェクトなどの検討から、こうした新規参入者が農業経営をダイナミックに進化させていることが確認できる。

  • ―11代当主を中心に―
    安士 昌一郎
    原稿種別: 研究ノート
    2026 年23 巻 p. 175-185
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    明治大正期に活動した倉敷の林源十郎商店(現株式会社エバルス)の11代目当主について考察した。林源十郎商店は1657(明暦3)年、土佐屋初代治郎衛門の子半右衛門由義が分産分家し、紀伊國屋と称して薬種業を開業したことにより始まった。

    11代目当主、甫三は9代目の長男として生まれた。甫三は1892年に家督を継いで源十郎を襲名した。彼は自社を株式会社化し、製薬事業を始めたほか、岡山への進出などを行った。またクリスチャンであり、倉敷紡績の大原孫三郎とも交流があった。

    林源十郎商店の行動は、他の薬業者あるいは他業種の企業家とも共通するものがある。主食代用品「労研饅頭」に関しては、田邊五兵衛商店が試みた保健栄養剤としての乳製品の製造および販売と通じるものがある。

    本稿では十一代林源十郎の事績を追うと共に、同時期の薬業者や、異業種ではあるが同郷の企業家である大原孫三郎などとの比較を行った。それにより彼が果たした役割を明らかにし、企業家としての特性を考察した。

    結果、十一代林源十郎は倉敷の名望家である林家が、同地の人々からどのような評価を受けるかを第一に考え行動してきたことが明らかとなった。彼の活動は総じて、短期的な利益よりも地域との信頼構築を選び、自商店ひいては林家の価値を維持向上させる為に行われたと考えられる。

査読付き研究ノート
  • 今井 佐知子
    原稿種別: 査読付き研究ノート
    2026 年23 巻 p. 187-204
    発行日: 2026/03/31
    公開日: 2026/03/31
    ジャーナル フリー HTML

    本稿では、製薬企業の国内研究開発部門の技術者を対象に、リーダーシップ行動が技術者個人のプロジェクトへの貢献および技術成果に与える影響を定量的に調査する。質問票調査を実施し、技術者の6つのリーダーシップ行動特性を見出し、それらのプロジェクトへの貢献および技術成果への影響を分析した。その結果、技術者は、研究開発組織内での役割分担および期待される技術成果あるいは貢献に応じて、リーダーシップ行動を最適化する必要があることが示唆された。特に、部下管理型のリーダーシップ行動は、技術者のアカデミアにおける成果にマイナスの影響を与える場合があり、逆に、部下育成型のリーダーシップ行動についてはプラスの影響を与える場合があるということが明らかとなった。

書評
feedback
Top