2007 年 22 巻 4 号 p. 467-472
療養高齢者の垂直位の認識をしらべるために,6ヵ月以上の長期療養高齢者を対象に,健常高齢者および健常若年者を対照群として,座位で上体が自分でまっすぐな状態(垂直位)にあると判断した角度と実際の垂直位との前後方向の角度のずれ(誤差)を調べた。そしてずれの原因を探るため,臥床時間や起居移動能力のレベルとの関係を検討した。その結果,長期療養高齢者の垂直位の知覚は健常高齢者および健常若年者に比べてばらつきが大きくどちらかというと後方に偏位する傾向があり,その判断のための視覚の使われ方に違いがあることがわかった。さらに,起居移動能力のレベルが高くなる療養者ほど,角度のずれの幅が小さくなって正しい値に収束していくという傾向がみられた。このことから,課題のための最適な知覚手がかりを探索して運動に結びつけること,および自らの意思により意識的に垂直位を体験することが長期療養高齢者のリハビリテーションにおいて考慮すべきであると示唆された。