〔目的〕理学療法士養成校における遠隔授業の学習効果と学生の情報通信技術(ICT)リテラシー,受講環境の関係性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕遠隔授業を受講した4年制大学理学療法学科3年生のうち,分析できた62名を対象とした.Grade Point Average(GPA)上位群と下位群に区分したうえでアンケート調査を行い,ICTリテラシー,遠隔授業の受講環境を調査した.〔結果〕GPA上位群は,ICTリテラシーのうち表現力と収集力が有意に高値となった.受講環境は有意差が認められなかった.〔結語〕遠隔授業の学習効果に対し,ICTリテラシーが影響することが明らかとなった.特に収集力と表現力は深く関与し,それらの修得により遠隔授業の学習効果を向上させる可能性があると考えられる.
〔目的〕初回片側人工股関節全置換術(THA)を施行した患者において,術後1ヵ月後時点での主観的quality of life(QOL)に関連する術前予測因子を明確にすることである.〔対象と方法〕対象は,片側人工股関節全置換術を受けた女性51名(65歳以上の高齢者群30名,65歳未満の非高齢者群21名)とした.術後の主観的QOLとして日本整形外科学会股関節疾患評価質問票を使用し,術前予測因子を検討した.〔結果〕THA術後1ヵ月の主観的QOLを予測する因子として,高齢者群,非高齢者群において日本語版Central Sensitization Inventoryが抽出された.〔結語〕術前の中枢性感作症候群の重症度が,THA術後早期の主観的QOLの予測因子となることが示唆された.
〔目的〕人工呼吸器(MV)管理中から早期歩行とセルフケアを獲得した重症肺炎の症例を経験した.〔対象と方法〕82歳男性,重症肺炎と敗血症性ショックによりICUへX日に入室した.X+5日よりMV管理中に歩行を含めた早期離床,および口腔ケアや整容などセルフケア指導を多職種で開始した.歩行練習は,理学療法士1名と看護師2名で5 mから開始し,50 m × 2セットまで漸増した.また,医療スタッフが必要物品を準備し,口腔内吸引,歯磨き,うがいを模倣して指導した.〔結果〕挿管下MV管理中のX+9日にセルフケアが自立し,歩行はX+12日に独歩見守りまで可能になった.〔結語〕本疾患例のように挿管下MV管理中においても,早期歩行およびセルフケアを獲得することは可能である.