〔目的〕被殻出血後の活動予後予測が頭部CT画像を用いて作成した予測式で可能か検討した.〔対象と方法〕対象は,回復期病棟に入棟していた被殻出血72例とし,予測式作成群62例と外的妥当性検証群10例に無作為に分けた.年齢,性別,発症から入棟までの日数と,CT画像より測定した血腫前後最大径・左右最大径・高さ最大径の計6変数を用いて,退棟時FIM運動項目と認知項目の予測式をそれぞれ作成した.さらに予測式の外的妥当性を検証した.〔結果〕運動項目では年齢,前後最大径,左右最大径,認知項目では年齢,前後最大径が予測式作成に用いられた.予測値と実測値の相関係数は運動・認知ともに相関が得られた.〔結語〕作成した予測式は,被殻出血の活動予後予測に用いることができる可能性が考えられた.
〔目的〕通常歩行と干渉波電気刺激歩行における歩行時の代謝の違いを明らかにする.〔対象と方法〕健常成人35名(平均年齢21.1 ± 0.7歳,男性22名,女性13名).時速4 kmでのトレッドミル上で通常歩行,腹部への10 mAと20 mAの干渉波電気刺激を加えた歩行における酸素摂取量を比較した.〔結果〕20 mAの干渉波電気刺激を加えた歩行では,他の歩行条件と比較して酸素摂取量が有意に高値であった.〔結語〕歩行中の腹部体幹筋に対する20 mAの干渉波電気刺激は酸素摂取量に影響することが明らかとなった.
〔目的〕立位カーフレイズ動作の足関節底屈筋群の筋活動を検討した.〔対象と方法〕健常者18名を対象に,メトロノーム音に合わせ立位から1,000 msかけて両踵を最大挙上する動作の右ヒラメ筋,右腓腹筋内側頭の筋電図を測定した.メトロノーム音発生時を基準に200 msごとに5区間で筋電図積分値を求め,立位の筋活動を基準とした筋電図相対積分値で比較した.〔結果〕ヒラメ筋の筋活動は,動作序盤から中盤にかけて増加し,動作終盤で低下した.一方で,腓腹筋内側頭は経時的に筋活動は増加した.〔結語〕本課題の立位カーフレイズ動作において,動作終盤で腓腹筋内側頭と異なりヒラメ筋の筋活動は低下した.
〔目的〕異なる3種類の5本指ソックス着用時の健常成人の静的および動的バランス能力について比較した.〔対象と方法〕健常成人23名を分析対象とした.重心動揺計(バランスコーダBW-6000,アニマ社製)を用いて,静的バランス能力は総軌跡長,矩形面積,前後速度,左右速度を,動的バランス能力はIndex of Postural Stability(IPS)を測定した.ソックスは5本指ソックス,足裏全体にゴム突起を有する5本指ソックス,足裏にパッドを有する5本指ソックス(パッド付5本指ソックス)の3種類とした.〔結果〕パッド付5本指ソックスの着用は,他のソックスを着用した場合よりもIPSの値が有意に高値を示した.〔結語〕パッド付5本指ソックスは,他のソックスよりも動的バランス能力を良好とする可能性がある.
〔目的〕Single Drop Jump Test(SDJ),Single Hop Test(SHT),Triple Hop Test(THT)での関節角度や関節モーメントの変動係数を比較した.〔対象と方法〕対象は,高校・大学で運動部に所属していた健常男性12名とした.測定項目は,体幹と下肢の関節角度,関節モーメントとし,矢状面方向(X方向)と前額面方向(Y方向)を算出した.解析は着地後40 ms時点で行った.〔結果〕体幹や股関節,膝関節の関節角度や足関節モーメントでSHTやTHTの方が変動係数は有意に大きく,足関節角度や膝関節モーメントはSDJの方が変動係数は有意に大きかった.〔結語〕パフォーマンステストによって変動係数が異なることが明らかになった.
〔目的〕超音波を用いて浅指屈筋の筋断面積と筋輝度を測定し,その信頼性を検討した.〔対象と方法〕肘に既往のない成人10名を対象とし,級内相関係数(ICC)で信頼性を検討し,最小可検変化量の95%信頼区間(MDC95)を算出した.〔結果〕ICCは全ての測定において0.77以上であった.MDC95は,検者内日内測定において筋断面積および筋輝度はそれぞれ滑車高位で15.8 mm2と7.5,鈎状突起高位で8.3 mm2と9.9であった.検者内日間測定は滑車高位で16.1 mm2と17.2,鈎状突起高位で16.9 mm2と17.5であった.検者間測定は滑車高位で14.4 mm2と13.3,鈎状突起高位で12.5 mm2と10.8であった.〔結語〕本研究の結果から,超音波を用いて浅指屈筋の量的,質的評価が可能と考える.
〔目的〕本研究は,年長児を対象にランドセルを背負った状態での立ち上がり動作に焦点を当て,体格,運動能力,重心動揺の関連性を明らかにすることを目的とした.〔対象と方法〕A・B保育園に通う健常年長児50名を対象とし,ランドセル(5 kg)を背負った状態での立ち上がり動作を評価した.体格,運動能力,身体重心動揺(前後・左右)を測定し,立ち上がり可能群と不可能群の比較を行った.〔結果〕立ち上がり不可能群は可能群と比較し,体重が有意に軽く,前後の重心動揺幅が大きかった.他の運動能力には有意差は認められなかった.〔結語〕年長児において,体重が軽いことが立ち上がり動作困難に関連し,ランドセルの重さによるバランスの不安定さが示唆された.
〔目的〕本研究は,高校生女子アスリートを対象に,Yバランステストと体組成パラメータとの関連性を評価することを目的とした.〔対象と方法〕高校生女子アスリート31名を対象に,Yバランステストを用いてリーチ距離と体組成を評価した.前方リーチ距離の左右差に基づいて2群に分類し,体組成を比較した.またPhase angleとの相関関係についても分析した.〔結果〕左右差あり群ではBMI,脂肪指数,下肢筋量,Phase angleが高値を示した(p<0.05).Phase angleは体重や筋量と正の相関,Yバランステスト前方リーチ距離と負の相関を示した.〔結語〕高校生女子アスリートにおいて,バランス能力や傷害リスクに関連する体組成を評価する必要性が示唆された.
〔目的〕リハビリテーションへの参加意欲が低下した一症例に対して,Virtual Reality-Based Rehabilitation(VRBR)を実施した.〔対象と方法〕左人工膝関節置換術を実施し,その後,リハビリテーションへの参加意欲が低下をした80歳代の女性1名を対象に,VRBRを2週間,週5回1回20分実施し,Functional Balance Scale(FBS),Pittsburgh rehabilitation participation scale(PRPS)等を評価した.〔結果〕VRBR後にFBSは12から18点,PRPSは2から4となった.〔結語〕リハビリテーションへの参加意欲が低下した症例に対して,VRBRが身体機能や参加意欲の向上の一助となる可能性が考えられる.
〔目的〕両大腿骨頸部骨折患者に対し,体幹前傾角に着目した理学療法を実施し,結果を考察した.〔対象と方法〕自宅で転倒し,左右大腿骨頸部骨折の診断で入院となり,骨接合術と人工骨頭挿入術を受けた80歳代の一女性を対象に,膝蓋下脂肪体(Infrapatellar Fat Pad:IFP)のストレッチ,大殿筋の筋力練習やタイミング練習を実施した.〔結果〕IFPの圧痛やHoffa testは右左とも陰性となり,体幹前傾角は右19°から11°,左13°から7°と左右とも軽減した.歩行時痛は,10段階のNumerical Rating Scaleで,右膝前面が6から0,左膝前面が4から0となった.〔結語〕IFPや大殿筋への理学療法実施により体幹前傾角は軽減し,両膝前部痛は消失した.