抄録
〔目的〕体幹の側屈と頚部の立ち直りの有無が嚥下動態に与える影響を明らかにすること。〔対象〕研究に同意が得られた健常者12名(平均年齢21.3歳)とした。〔方法〕安楽にした椅子座位,体幹30度側屈・頚部の立ち直り有りと無しでの3条件について,表面筋電図を用いて,おかゆ10 gを嚥下した際の舌骨上筋群の活動持続時間(嚥下時間の指標)を測定した。〔結果〕舌骨上筋群の活動持続時間は,安楽にした椅子座位に対して,体幹30度側屈・頚部の立ち直り有りとの間では有意差は認められず,体幹30度側屈・頚部の立ち直り無しでは有意な延長が認められた。〔結語〕嚥下時間は体幹の側屈のみでは延長せず,頚部の立ち直りの有無に左右されていた。嚥下時間の延長は,誤嚥の危険性を高めるとされているため,摂食姿勢を整える際,特に頭部の垂直位保持に留意することの重要性が示された。