抄録
新学習指導要領では高等学校において新たに数学と理科を横断する教科である「理数」が登場し、新科目として「理数探究」、「理数探究基礎」が新設されるなど、探究的な学習の重要性が高まっている。しかし、現状として生徒たちの主体性の欠如といった大きな課題が見られている。探究的な学習における初等教育理科の役割とは何であろうか。探究活動をおこなう前提には、自分の中で生まれた「問い」と「必要感」が必ず存在している。この2つの要素を生み出すのは好奇心などの「豊かな感性」と他者を意識した探究へと向かう原動力となる「自己肯定感」である。これらの探究活動の土台となる2つの要素は初等教育段階から伸ばしていきたい。そして、これからの社会では柔軟な姿勢で諸問題に向き合い、新たな価値を生み出す「創造性」が求められている。これらの力を育んでいくために、これからの初等教育に必要とされる「探究的な学習」の意義と可能性について考察したい。