陸水学雑誌
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特集:釧路湿原達古武沼の自然再生に向けて
トンボ成虫群集による湖沼の自然環境の評価
―釧路湿原達古武沼を例に―
生方 秀紀倉内 洋平
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2007 年 68 巻 1 号 p. 131-144

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抄録

 北海道釧路湿原,達古武沼の岸沿いの11調査区でトンボ目の成熟成虫のセンサスを行い,6科18種2,572個体のトンボ目を記録した。環境要因として,ヨシ原の奥行き,水草の被度,水深および底質(細礫以上とシルト以下)を分析に用いた。各調査区のトンボ群集によるDCAの散布図上の配置パターン(平面上の相対的位置関係)は地図上の調査区の配置パターンとほぼ一致したが,環境要因によるDCAでは調査区の配置パターンは地図上のそれとほとんど一致しなかった。CCAの結果,沼の水辺は,水草が多くヨシ原が広くやや深い場所(沼の南岸),水草が少なく深い場所(北岸),ヨシ原が狭く水草が少なく浅い場所(東岸キャンプ場付近,西岸の護岸沿い)および水草が多くやや浅い場所(東岸)の4類型に分かれた。水草の被度と相関するクロイトトンボなど8種,ヨシ原の奥行きと水深に対して相関するルリイトトンボなど7種,水草と負の相関するコサナエなど3種,ヨシ原の奥行きおよび水深と負の相関を示すシオカラトンボ,深い場所を好むキトンボなど2種を列挙し,これらの種が環境変化の指標として有効性を持つことを指摘した。また,DCAとCCAの結果の比較を元に,沼におけるトンボ成虫の局所分布に影響しうる上記以外の環境要因について考察した。

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© 2007 日本陸水学会
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