陸水学雑誌
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原著
  • 田久和 剛史, 臼井 大喜, 松田 烈至, 山口 啓子
    2024 年 85 巻 3 号 p. 125-140
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル フリー

     島根県東部の斐伊川水系の淡水域と汽水域の複数地点において,野生のミナミメダカ山陰型個体群のサンプリングを行い,得られたサイズ頻度分布をもとに,コホート解析を行った。調査期間中に安定してサンプル数を得られた淡水・汽水地点では,いくつかのコホートに分離され,春先に20 mm前後の中生まれ群が個体群を維持する上で主要な群となっている一方,多様なコホート群があることで,長期間に渡る再生産を可能とし,個体群を維持していた。当歳魚集団が新規加入する時期や越年した大型個体が減少する時期に関しては,ミナミメダカ山陰型個体群と東日本型個体群やキタノメダカの個体群との間で大きな違いは見られなかった。体長分布の範囲を比較すると,山陰型個体群の越冬時の体長は,同じ日本海側に生息するキタノメダカの個体群より,サイズの幅が広かった。山陰型個体群のコホートの構成は,淡水・汽水地点ともに,年次変動や地点間で異なる場合があった。また,基本的な個体群動態は,調査2年において,淡水・汽水地点では基本的に同様であったが,汽水個体群ではとくに春から初夏にかけての成長量に,年による違いが見られた。

資料
  • 山室 真澄, 佐藤 登志子, 羅 文焜, 土橋 敬明
    2024 年 85 巻 3 号 p. 141-145
    発行日: 2024/09/25
    公開日: 2024/10/20
    ジャーナル フリー

     河川水中のネオニコチノイド系殺虫剤が節足動物に影響を与える可能性を検討するために,鳥取県の千代川で1年間毎月1回,千代川の上流と下流で採水してネオニコチノイド系殺虫剤の濃度を分析した。ジノテフランは上流・下流ともに全期間検出された。また下流では2022年6月以外はジノテフランが最も多かった。上流・下流ともにジノテフランは8月に最高濃度を示し,上流で24 ng L-1だったのに対し下流で134 ng L-1だった。各ネオニコチノイドの分子量からイミダクロプリド濃度に換算した合計値は下流で最大254 ng L-1,平均44 ng L-1だった。毎月1年間ネオニコチノイド濃度を調べた結果からは,千代川下流では水生昆虫など魚類の餌となる節足動物が8月にはネオニコチノイドの急性毒性の,6~9月は慢性毒性の影響を受けている可能性がある。

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