陸水学雑誌
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総説
  • 東川 航, 吉村 真由美, 八木 剛, 前藤 薫
    2019 年 80 巻 3 号 p. 107-124
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

     里山の水田地帯において人々に親しまれたトンボ科アカネ属の数種(赤とんぼ)は,近年における農地条件や農法の変化に伴って激減している。いくつかの保全研究によれば,赤とんぼの衰退原因は,各種の生息地利用の違いに従って種特異的と考えられる。すなわち,アキアカネ等の止水性種の卵および幼虫は農薬の悪影響を受けて減少することが知られている一方で,緩流水を伴う水域に生息するミヤマアカネの幼虫は農薬の影響を受けにくく,水田水管理の近代化による生息水域の減少に伴って衰退したことが示唆されている。また,卵の耐乾性が他種よりも強いノシメトンボにとっては,不耕起栽培による水田の土壌表面の乾燥化は衰退原因となりにくいことが分かっている。赤とんぼを総合的に保全するためには,各種のそれぞれの成長段階における生息地利用について理解を深め,衰退原因を把握し,生息地環境を適切に整備する必要がある。保全生息地においては,赤とんぼ各種が必要とするそれぞれの微小環境をバランス良く配置してやることが重要である。そうした生息地環境のデザインは,赤とんぼのみならず,里山の水田地帯において減少している他の多くの湿地性水生生物の保全にも寄与すると考えられる。

  • 横山 寿
    2019 年 80 巻 3 号 p. 125-144
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

     アジア原産のシジミ属二枚貝が1920年代に北アメリカに侵入し,その後,南アメリカ,ヨーロッパに拡散した。1980年代には日本国内にも侵入し,世界各地の生態系や経済に負の影響を及ぼしてきた。この問題への関心を喚起するため,どこを原産地とする何というシジミが,どのように,なぜ新地への侵入に成功し,分布を拡大させ,在来生態系や地域経済にいかなる影響を及ぼしてきたのか,いかなる対策が必要かを2報に分けて解説する。第1報の本報では分類の問題点,外来シジミの起源,侵入・拡散経路の推定に寄与した形態と遺伝子分析による系統分類および侵入・拡散のメカニズムを概説した。最近の系統分類研究の成果は次のとおり:1) 形態のみでは種,系統を同定できない;2) 雄性発生する雌雄同体,淡水性の数系統が外来種となっている;3) 在来のマシジミと外来のタイワンシジミ間の形態・分子遺伝学的差異は微小であり,両種はごく近い近縁種か,前者は後者の一系統と推定される。生息場所,形態,核型,精子形態,生殖様式,ミトコンドリア・核の遺伝子マーカーの分析により,外来シジミの系統,起源と侵入・拡散経路の一端が明らかになりつつある。

  • 横山 寿
    2019 年 80 巻 3 号 p. 145-163
    発行日: 2019/09/25
    公開日: 2020/09/30
    ジャーナル フリー

     アジア原産のシジミ属二枚貝が20世紀に南北アメリカ,ヨーロッパ,日本に侵入・拡散し,定着した高密度個体群が水界生態系と地域の経済に負の影響を及ぼしている。この問題への関心を喚起するため2編の総説を執筆し,第1報において外来シジミ類の分類,原産地,侵入・拡散経路に関する既往知見をまとめた。本総説(第2報)では,生殖様式,食性,環境要因に対する生理的耐性など外来シジミ類の生物学的特徴,定着したシジミ個体群が生態系や経済に及ぼす影響とこれら個体群への生態系の反応を概説するとともに,外来種対策と今後の研究課題にも触れた。外来シジミの侵入・拡散の成功は環境耐性(塩分,水温,酸素など)より生殖・生活史特性(雌雄同体,双鞭毛の非減数精子,雄性発生,卵胎生;速い成長,早い成熟,強い繁殖力,高い分散能力といったr戦略的特質),二様(濾過食,堆積物食)の食性と高い濾水率により説明できる。

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