陸水学雑誌
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原著
柑橘園地域のため池において水草の豊かさに及ぼす水質の影響
香川 尚徳四方 政樹木田 真由美下田 路子
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2008 年 69 巻 1 号 p. 1-23

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抄録

 柑橘園地域でため池の水質が水草種数に及ぼす影響を明らかにするために,松山市内北条地区で,水草のない森林中の5池を含む43のため池を,各池で1回,1998年から2003年の間に8月または9月に調査した。全体で25種の水草が認められたが,1池当りの種数は平均して2.8種であった。水質については,主成分分析により,2つの重要な成分,肥料成分を含む集水域からの主要イオン類の溶脱を反映するPC 1と,CO2の供給と消費を反映するPC 2が認められた。水面または池底を覆う水草の植被率が30%未満の池群(n = 21,水草のない5池を除く)では,1池当りの水草種数がPC 1の得点及び全窒素濃度と有意な負の相関を示した。また,10 g m-3以上の懸濁物質を伴う高栄養塩濃度の下で,沈水植物が消滅する傾向が認められた。栄養塩,特に窒素の濃度の増大は沈水植物を減少させて,1池当りの水草種数を減らすと見られた。他方,植被率が30 % 以上の池群(n = 17)ではこのような明白な関係が認められなかった。この池群ではPC 2が低く,CO2の消費に比べて供給が多かった。高栄養塩濃度下で,両池群は濁水と清水の二者択一的安定状態(alternative stable states)にほぼ該当すると見られた。

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© 2008 日本陸水学会
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