抄録
青森県の下北半島に位置する汽水湖尾駮沼において,日本の絶滅危惧種の一種に指定されているウネナシトマヤガイ(Trapezium liratum)の空間分布,生息密度および成長過程等について調査した。本種の高い生息密度は,1)水深1.0~1.5 m,2)大きな岩礁,3)多くの転石やマガキの貝殻,および4)アマモ(Zostera marina)の高密度分布,の以上4項目の環境条件が全て備わった水域でのみ観察された。また,フィールドにおけるケージ飼育実験により,尾駮沼における本種の成長過程に関する知見を得た。殻長および重量の増大が確認されたのは春季から秋季にかけての期間(5月から10月)であり,11月から4月の期間は成長停止期であった。成長と水温との関係から,本種の成長は月間平均水温が15℃以上の期間に限られ,15℃未満の期間では成長はほとんど停止状態になることが明らかにされた。