陸水学雑誌
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特集:小笠原諸島の固有水生生物陸水環境
小笠原諸島における外来種ヌノメカワニナと固有種オガサワラカワニナの分布,特に河川改修工事が与える影響について
佐々木 哲朗佐竹 潔土屋 光太郎
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2009 年 70 巻 1 号 p. 31-38

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抄録
 オガサワラカワニナは小笠原諸島の陸水に生息する腹足類の固有種である。本種および近縁の外来種ヌノメカワニナの分布を調べる目的で,2005年から2008年にかけて聟島・父島・母島をはじめとする8島39水系で調査を行った。その結果,オガサワラカワニナは聟島・弟島・兄島・父島・母島の5島33水系に,ヌノメカワニナは父島の5水系に分布していた。オガサワラカワニナは淡水域の護岸域と非護岸域に,ヌノメカワニナは感潮域と淡水域の護岸域で確認された。
 2006年の河川改修工事の前後に調査を行った父島の八瀬川では,工事前には工事区間内で両種は混生していたが,工事3ヶ月後と9ヶ月後にはヌノメカワニナのみが高い密度で生息していた。また,ヌノメカワニナは工事3ヶ月後および9ヶ月後に工事区間の上流で新たな分布が確認された。このように河川改修工事などの環境攪乱は在来種と外来種の置き換わりを招いてしまう可能性があると考えられた。
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© 2009 日本陸水学会
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