抄録
愛知県において漁業害虫として注目されるコイズミエグリトビケラNeophylax koizumii(Iwata)は,本州の東北地方から本州中部にかけて分布し,愛知県の寒狭川はこれまで確認された地域の中で最も西の河川であった。本稿において,愛知県寒狭川から約180 km西に位置する,紀伊半島紀ノ川水系の1支流である和歌山県丹生川から本種の幼虫が採集されたことを報告する。このコイズミエグリトビケラの幼虫には,後胸および腹部第1節の腹面中央にキチン板がないことから,本州西部や紀伊半島から記録されている近縁種のNeophylax sp. NAの幼虫とは明確に区別できる。コイズミエグリトビケラの新産地として,紀伊半島北部の丹生川が加わり, 愛知県よりもさらに西にも本種が分布することが確認された。