陸水学雑誌
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大森奥山(岐阜県・可児市)の湧水湿地群―地形,水,及び水生生物相―
村上 哲生久野 良治岡田 真衣堀田 祥貴南 基泰
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2020 年 81 巻 1 号 p. 45-58

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抄録

 岐阜県可児市大森地区に位置する湧水湿地群の陸水学的な性状を報告する。湧水湿地とは,基盤の砂礫層上にほとんど泥炭層が見られない湿地を指し,泥炭湿地と対比させて使われる。各湧水湿地は小規模であり,独立した生息場としては寿命が非常に短く,1990年代までは重視されてこなかった。そのため,今もほとんど報告例がない。
 大森奥山湿地群の各湿地は5~20°の斜面に発達し,典型的なものは特定の表面流入水路を持たず,湿地上部から滲出する水で涵養される。斜面表面近くの鬼板 (板状の褐鉄鉱) 層が難透水層となっているが,流下と共に水量が減じるため,湿地下部程面積は縮小し,湿地全体は扇状の形となる。
 低pHや低電気伝導度で特徴付けられる湿地の水質や,Tribonema affine (黄緑色藻綱) とツヅミモ類から構成される藻類群集の組成は,高山域や寒冷地の腐植栄養型池溏のそれと一致する。一方,水棲昆虫群集は,低地の池沼と共通する種類のみで構成される。

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© 2020, The Japanese Society of Limnology
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