陸水学雑誌
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原著
純水の透明度の計算画像による推計
佐藤 信也
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2020 年 81 巻 2 号 p. 119-136

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抄録

 純水の透明度は,透明度を解析する際に上限値として把握しておきたい数値であるが,実験による直接的な確認が難しく,理論的にも普遍的な数値が得られていない。そこで,筆者は,水の分子散乱については一次で近似してSecchi円板の方向から来る光と背景光の三刺激値を計算し,輝度を校正して表示した液晶画面を見て,透明度を観測した。このカラー画像による透明度(CITs)は,水面における平行光線の入射角0, 10, 20, …, 80, 89 度について101±2.6 m~124±1.1 mの範囲であった。透明度判定機構を調べるために求めたモノクロ画像による透明度(MITs)は,95±1.3 m~117± 3.4 mの範囲であった。誤差は,繰り返し測定の誤差と一次散乱近似による透明度の真値からの偏差の和である。色差またはコントラスト閾値により自動判定した透明度の平均二乗誤差は,対CITsが6.3 %または対MITsが3.6 %であった。CITsの推計精度を改善するには,水の分子散乱近似の高次化及び画像観測精度の向上が必要と考えられ,併せて,精度評価を確かにするためには,評価の基準となるものが必要であり,純水に光を吸収する物質を添加してスケールダウンした透明度測定実験により純水の透明度の近似値を得ることも方法の一つと考えられる。

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© 2020, The Japanese Society of Limnology
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