1990年頃に,中池見湿地(福井県敦賀市)の陥没により生じた笹鼻池の陸水学的な性状を報告し,この池が在来の湿地生物の生息場として適切であるかどうかについて議論する。笹鼻池は,今や面積1.9 ha,水深3.9 mまで成長している。池は,dyseutrophic型(生産の大きい腐植栄養型)の湖沼類型に分類されるが,水色や光の浸透,pH,藻類の現存量は季節的に大きく変動する。この池に特徴的な高pHや高い電気伝導度と硬度は,池の基盤となる石灰岩の影響によるものである。風の撹乱効果を弱める椀型の地形と底層への水温の低い水の供給は,夏季の成層を安定したものとし,その結果,水の鉛直循環が抑えられ,表層の浮遊藻類の大きな生産も相まって,底層の貧酸素状態を招く。表層の溶存酸素濃度も,周年不飽和状態である。我々は,高pHと底層の貧酸素状態は,在来の湿地生物の生息場としては,不適当であると判断した。水位は,降雪のある冬季に特に高くなる。2012年から2017年にかけての水位観測や,地元住民の証言から,池は拡大し,水深を増す傾向にあると考えられる。