陸水学雑誌
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琵琶湖南湖湖水への栄養塩添加によるアナベナー・ブルームの人為的誘発
手塚 泰彦中野 伸一
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1993 年 54 巻 1 号 p. 85-90

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抄録

1991年8月15日に,琵琶湖南湖の沖帯で湖水を採取し,直ちに実験室へ持ち帰ったのち,4個の三角フラスコに湖水を21ずつ分注し,各種の栄養塩を添加してから,27℃,連続照明下(約2,500lux)で26日間インキュベートした。なお,採取した原湖水中には珪藻のMelosira granulataが最優占しており,湖水のpHは9.0,溶存無機窒素は微量(17μg・l-1)に存在したが,溶存無機リンは検出されなかった。
培養実験の結果,1)無処理の対照フラスコでは,M.granulataに代ってAnabaena spp.(主としてA.affinis)が優占種となり,最大細胞密度は7.4×104・ml-1に達した。2)PO4-P(約100 μg・l-1)のみを添加したフラスコ,およびPO4-P(約100μg・l-1)+鉄(約50μg・l-1)+EDTA(約300μg・l-1)を添加したフラスコでは,Anabaenaの大増殖が起こり,その最大細胞密度は両フラスコとも約4×105・ml-1に達した。3)それに対し,PO4-P(約100μg・l-1)+NO3-N(約2mg・l-1)を添加したフラスコでは,最初に低密度(50細胞・ml-1)に存在していたAnabaenaは消失し,緑藻のScenedesmus spp., Coelastrum cambricum, C. microporum, Pediastrum duplex,およびGloeocystis gigasが優占種となった。
以上の結果から,琵琶湖南湖におけるアナベナ・ブルームの発生に関しては低窒素―高リンが重要な因子であると推定された。

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