狭くて細長い水路によって外海とつながれている汽水湖では,その水路の水理学的特性と湖の形状は湖内の水位変動に大きな影響を及ぼす。例えば,水路の浚渫や湖の埋立てなどが行なわれ,湖への流出入水量や貯水量が変化すれば,湖内の水位変動の特性も大きく変化する。
したがって,浚渫や埋立などによる水位変動に対する影響を,できるだけ簡単な手法で近似的に予測する関係式を導いておくことが望まれる。
そこで,われわれは過去の研究をもとに中海側の水位変動から宍道湖側の水位変動を求めるために次の3通りの数値計算を行なった。一つめは流速が水位差に比例する場合,二つめは流速が水位差の平方根に比例する場合,三つめは石飛による水位差,流速の経験的ループ曲線による場合である。
その結果,3通りの近似解法のどれを用いても4周期以後の時間では宍道湖の水位変動の実測パターンにほぼ一致することが分かった。このことから適当な流量係数を用いれば,もっとも解析解が得やすい水位差と流速の比例関係を用いても近似的には差し支えないことが示された。したがって,水位差と流速の比例関係を用いて,中海,宍道湖のような連系した湖における振動特性を決定することができる。