1998 年 59 巻 2 号 p. 199-206
種の分布域の北限および南限近くの川と,単性および両性個体群とを含んだ4河川で,オオシロカゲロウの羽化の季節的・日周期的パターンを比較した。1991年と1992年の羽化期に毎日,4河川とも同一の方法で,成虫・亜成虫を採集した。羽化の時期とその集中性は,川によって,また年によって異なっており,一定の傾向は認められなかった。1日の羽化開始時刻は,日没時刻の変化につれてしだいに早くなったが,大雨の降った日には例外的に早く羽化した。これらのことは,羽化時刻に照度が影響することを示唆している。単性個体群における雌の羽化時刻は両性個体群の場合よりも早く,両性個体群での雄にほぼ相当する時刻に羽化が始まった。羽化個体のサイズは,羽化期の後になるほどしだいに小さくなった。羽化期間中のサイズ減少の原因について,後期幼虫の発育が春の水温上昇期に起こることを前提とした仮説がこれまでに提出されているが,オオシロカゲロウは水温が年間の最高値付近で変動している夏期に後期幼虫期を過ごすので,これまでの仮説では説明出来ない。