陸水学雑誌
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地球温暖化と陸水環境の変化
とくに河川の水文特性への影響を中心に
森 和紀
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2000 年 61 巻 1 号 p. 51-58

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抄録
湿潤温帯気候下に位置する河川流域を対象に,気温上昇に随伴する水文気象要素の長期変化の特徴について検証し,続いて過去に出現した典型的な気温上昇期における河川水質の変化の事例に関し考察した。木曽三川流域における過去102年間の年降水量・年蒸発散量,および年流出量の長期変化について検討した結果,1980年代以降,年降水量の減少に加え年流出率も低下傾向にあることが認められた。この事実は,流量の減少に伴う希釈効果の低下が今後引き起こすと予測される平均的な流況のもとでの河川水質の悪化を示唆するものである。次に,過去に出現した気温の上昇現象として最も典型的であった1994年夏期の事例に基づき,木曽川における河川水質の周年変化について1984年~1993年の10年間の平均値との比較検討を行った。例年にない高温が夏期に記録された1994年の河川水質には,水温の上昇と流量の減少を背景としたBODの上昇,溶存酸素濃度の低下,大腸菌群数の増加が認められ,気候変動が河川水質に顕著な影響を与えたことを指摘した。
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