抄録
琵琶湖南湖の沈水植物の分布と現存量を,魚群探知機を用いて推定した。GPSの位置情報と対応した魚群探知機像に基づいて,沈水植物群落の分布を地図上に示した。また,魚群探知機の像と潜水調査で得られた現存量との対応関係をモデル化し,これを南湖全域から得られた魚群探知機像に当てはめて,群落の面積および現存量を算出した。沈水植物群落の面積は32km2(南湖全域の58%),現存量は乾重量で7.1×104tと推定された。この面積と現存量はともに,1960年代に沈水植物の減少が明らかになるよりも前の記録と同程度かそれ以上である。
地図上に示された沈水植物の分布と,透明度から予測される分布可能域を比較検討した。1994年には,光条件の上で生育可能と考えられる場所の多くに群落が分布していなかった。一方,2001年における沈水植物の分布は,透明度から算出された補償深度によりほぼ説明できた。1994年以降の沈水植物の増加は,光条件の上で生育可能な場所に,沈水植物が徐々に侵入・定着することによって起こったと考えられた。