抄録
習慣性嘔吐を主訴に来院した患者のうち,口中の吐物を再嚥下する反芻症の10名について,レ線透視検査・レ線映画・食道胃内圧測定・自律神経機能検査・バルーンテストを用いてその病態を究明した.今まで習慣性嘔吐については,その原因が食道側にあるものとして食道機能の研究が数多くなされてきたが,胃側より研究された報告は少ない.とりわけ反芻症については極めて少なく,反芻動物の反芻機構を考慮に入れて病態を解明した報告はない.反芻時に胃内容が食道側に逆流するとき,食道と胃は,主に胃底部の収縮により直線的な位置関係を形成し,食道胃接合部は上方すなわち胸腔におしあげられる.しかし食道胃接合部はけっして横隔膜の線をこえることはない.反芻現象の発現に先立って噴門前庭部に不規則な活動電位Burstが認められ,反芻現象が胃側よりはじまることが確認された.バルーンを食道に停留放置し,胃内に落下する状態を繰り返しおこなって観察するに,反芻症においては反復操作は胃内容通過移動の単なる通路でしかないことが考察された.これら反芻症患者のうち,定型的反芻症をしめした男子1例は3回にわたる開腹手術を行ない,特異な反芻症の病状と経過を観察した.