日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
膵損傷の経験
西本 政功木田 宏之佐竹 良章蒲原 博義岡田 勝彦野沢 真澄
著者情報
ジャーナル フリー

1978 年 39 巻 3 号 p. 347-352

詳細
抄録
近年,交通事故の激増につれ,腹部外傷が増多の傾向にあり,従来,比較的まれとされていた膵損傷の発生頻度が高く,なかでもハンドルによる損傷が多くみられる.
われわれの教室において,過去17年間に経験した膵損傷は13例で,原因は交通事故によるものが13例中11例と大部分を占め,うち8例がハンドル損傷であった.その内訳は,膵被膜下血腫3例,裂創3例,完全断裂3例で,他は膵損傷後の合併症と考えられる仮性嚢胞の4例であった.膵損傷の部位は,体尾部が10例,他は頭部の3例であった.治療としては膵被膜下血腫を呈した3例に対しドレナージのみを施行したところ,術後の経過は良好であった.膵裂創が認められた2例に対し創部の縫合とドレナージを施行したところ,いずれも術後膵瘻を形成したが,約2カ月後に自然閉鎖した.十二指腸破裂を合併した膵頭部裂創に対し膵頭十二指腸切除術を施行し,後腹膜,腹腔内の汚染は高度のため,膵管空腸吻合を断念し膵管の結紮を行い,良好な経過をたどった.膵体部完全断裂をきたした症例は3例で,ポリエチレンチューブを利用し膵管再建を行い,さらに離断した断端を端々に縫合した1例は良好な経過がえられたが,体尾部切除術,近位膵断端閉鎖術および遠位膵断端空腸吻合術を施行した2例は術後5日目および12日目に死亡した.受傷3日目から3カ月後に外傷性仮性嚢胞を呈した4例のうち2例に外瘻造設術を施行し, 1例はRoux-YによるCystojejunostomyとCatheter Cystoenterostomyの併用により短期間で治癒せしめた.また他の1例は受傷後3日目頃より嚢胞の形成が認められたが,その後,腫瘤の消失がみられた.
以上,これらの症例の経過,術式などについて検討を行い,合わせて診断,治療に関し文献的考察を加えて報告した.
著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top