抄録
大腸の非上皮性良性腫瘍は稀なものであある.そのなかで大腸脂肪腫は比較的多いものであるが,本邦での臨床報告は1977年までに38例にすぎない.
われわれは下血を主訴として入院した66歳女性に盲腸ポリープの診断で手術を施行し,組織診断で脂肪腫と判明した症例を経験した.
術前の注腸Ba検査でで盲腸のIleo-coecal junctionちかくに示指頭大の無茎性ポリープ様陰影を認め,開腹術を施行, colotonyを施行して内腔を精査したところ, 1.4×1.0cmの腫瘤を認めた.表面は平滑で正常粘膜に被われ,一部に小出血点を認めた.正常粘肩を含めて腫瘤を剔除し,迅速氷結切片検査により脂肪腫と判明したため,織切除術は施行しなかった.
術後11日目に退院し,健康な日常生活を送っている.
脂肪腫の発生部位については,欧米では大腸が最も多く,本邦では小腸,胃についで大腸が多い.今後,本邦においても診断技術の進歩に伴ない大腸発生例が増加するものとみられる.本邦での盲腸腸発生例はいまだ少ない.
大腸脂肪腫の症状に特徴的なものは少なく,腫瘤が増大してはじめてなんらかの症状を示すものとみられた,成人腸重積の原因の一つに挙げられることは注目される.
術分診断は必らずしも容易ではなく, X線検査,内視鏡検査が必要であるが,確定診断のためには術中,術後の組織診断にまたねばならない.
従来までの本邦報告例の大部分に結腸切除術がなされているが,腫瘍が非常に大きい場合を除いて,小さなものでは腫瘤剔除術のみで充分であり,腸切除術等の無用な手術侵襲は避けねばならない.そのためには術中迅速切片検査が必要である.
本邦での結腸脂肪腫はいまだ少なく,とくに盲腸脂肪腫の報告は数少ないので,文献的考察とともに報告する.