日本臨床外科医学会雑誌
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切除不能食道癌の治療
細井 英雄米沢 健池田 義雄鈴木 馨一郎土屋 周二
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1978 年 39 巻 6 号 p. 971-978

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抄録

過去16年間に横浜市大第2外科で取り扱った切除不能食道癌症例は221例である.手術療法別では胃管バイパス術53例,結腸バイパス術17例,空腸バイパス術3例,食道挿管術31例,胃瘻または腸瘻造設術56例,非手術61例である.放射線療法及び化学療法別では放射線療法単独(Rad)群52例,放射線化学療法併用(Rad+BLM)群16例,化学療法単独(BLM)群26例,未施行127例である.これらの症例を対象として治療効果を平均生存月数,腫瘍縮小効果より検討し,併せて放射線,化学療法の副作用及び合併症についても検討を加え,以下の結論を得た.
1. 切除不能食道癌においては経口食餌摂取を直接的に改善するバイパス手術,特に胃管バイパス術,食道挿管術に合併療法として放射線治療を施行した症例の平均生存月数が長く,経口食餌摂取に直接影響を与えない胃瘻または腸瘻造設術の平均生存月数は非手術と差はなく延命効果は認められなかった.
2. 放射線療法及び化学療法施行例の平均生存月数は非施行例に比し長く,明らかに放射線療法及び化学療法の効果が認められた.
3. 平均縮小曲線よりみるとRad+BLM群の治療効果がもっともすぐれており,以下Rad群, BLM群の順であった.
4. 腫瘍縮小効果よりみると,放射線療法とBleomycinの同時併用により相加効果以上の結果を得た.
5. Rad群, Rad+BLM群, BLM群の3種の療法の治療効果を定量的に比較すると, Rad群5,000Rad, Rad+BLM群2,900Rad+70mg, BLM群300mg以上がほぼ同等な効果を有すると考えられた.
6. 放射線療法とBleomycinを同時併用しても,単独使用に比し合併症,副作用の発生の増加は認めず,治療の中断または中止の可能性は殆んどないと考えられた.

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