抄録
我々は1966年以降に十二指腸を除いた原発性小腸腫瘍を12例経験したので,これらの臨床像ならびに病理組織学的検討を加えて報告するとともに,小腸腫瘍の臨床病態,診断などについて考察を加えた.対象症例は良性腫瘍5例(平滑筋腫2,脂肪腫2,血管腫1),悪性腫瘍7例(癌腫2,悪性リンパ腫5)の計12例である.発生部位は良性5例中4例と癌腫2例が空腸で,悪性リンパ腫と脂肪腫1例が回腸終末部であった.病悩期間は比較的短かく,入院時症状では,脂肪腫は腸重積,筋腫と血管腫は大量下血或は急性腹症,癌腫はイレウス,悪性リンパ腫は貧血,腫瘤触知,イレウス等が主たる症状で,全例に緊急ないし準緊急手術が行なわれた.術前診断は種類により異なっていたが,大部分の症例は無症状に経過し,来院時は進行した状態で緊急開腹されており,早期診断はなされていない.腹部の不定愁訴或いは通過障害,腫瘤触知,下血などの症例では積極的な小腸造影,血管造影などで検索することが大切で,とくに筋腫,癌腫,内腫などでは血管造影が有用な検査法であることを強調したい.