日本臨床外科医学会雑誌
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Morgagni孔ヘルニア
とくにヘルニア門と肝鎌状靱帯との関係について
山田 公雄水口 嘉治須田 厚馬場 秀文臼田 正敏物部 長暢監物 久夫川原 英之加藤木 利行
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1980 年 41 巻 1 号 p. 85-95

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抄録
Morgagni孔(胸骨後裂孔)は横隔膜の胸骨部筋束の左右両側に1対として存在する生理的脆弱部位であり, Morgagniが1761年にこの部のヘルニアについてのべたことから,この裂孔を通って腹腔内臓器が胸腔内あるいは縦隔内に脱出または嵌入するものをMorgagni孔ヘルニアと呼ぶようになった.一方,後年Larreyが腹腔より心嚢に到達する経路として左胸骨後裂孔をあげたことから,左側裂孔のみをとくにLarrey孔とよんでMorgagni孔と区別し,さらには左側に生じたヘルニアをもLarrey孔ヘルニアとよぶ報告がみられるようになった.しかし, Morgagniがこの裂孔について,さらにはこの部のヘルニアについてはじめて記載した歴史的背景から,この部のヘルニアは左右の別なくMorgagni孔ヘルニアと呼ばれるべきであるとする意見が内外ともに多いが,依然としてLarrey孔ヘルニアの名称も用いられている.
われわれはわが国において過去53年間に自験例2例を含めて122例のMorgagni孔ヘルニアを集計し,内外文献をもとに検討したが,とくに腹腔側においてMorgagniに隣接する肝鎌状靱帯がしばしばMorgagni孔ヘルニアのヘルニア嚢に関与する事実に注目し,ヘルニア門(Morgagni孔)と肝鎌状靱帯の位置関係をもとにMorgagni孔ヘルニアを3型に分類して考察を加えた.この結果,実地臨床上Morgagni孔ヘルニアにおいてはその左右が必ずしも容易に区別しえない場合がありうることを推察するにいたった.このことをもとに,従来一部で用いられている左右を区別した人名呼称の不合理性を強調したい.
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