抄録
急性腸間膜動脈閉塞症は欧米では多い疾患であるが,本邦では比較的少ないものであるとされてきた.しかしながら,本邦でも年々その報告例は増加してきており,その早期診断と早期治療の必要性が強調されてきている.
私共は最近,早期に上腸間膜動脈血栓症と診断し,血栓摘出術を施行して救命し得た症例を経験したので報告する.
本症は全身性の疾患の一部分現象として表われることが多く,単に閉塞血管を処置すれば充分といえるものではなく,殊に心・血管系の老化現象にいかに対処して行くかが,その術後予後を良好にするものであることを強調したい.