日本臨床外科医学会雑誌
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下肢血行再建術後のリンパ瘻について
高場 利博石井 瑞弥堀 豪一山城 元敏稲生 紀夫
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1980 年 41 巻 3 号 p. 517-523

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抄録

本邦においても慢性下肢動脈閉塞症に対する外科手術例が増加しているが,この血行再建術後には種々の合併症もみられている.術中のリンパ管損傷による術後リンパ瘻はほとんどの例では重大な合併症とはならず,数週間で治癒するが,リンパ管損傷の程度が大きかったり,また混合感染を合併してくると難治性となり長期の入院を余儀なくされる.
教室では最近4年間に5例を経験し, 4例は短期間に治癒したが, 1例は難治性で長期の入院を要した.
下肢血行再建術に際し,リンパ管の損傷は解剖学的なリンパ管の走行からある程度は止むをえないことであるが,これまで本症の報告はあまりみられない.これはリンパ管の再生が早いことと,大きな合併症に発展する例が少ないために看過される例が多いものと考えられる.
しかし自験例のごとく難治性となる症例もあり,術中操作でできるだけリンパ管の損傷を避けるように努めることが大切である.また一旦発生すれば下肢へのリンパ流量を減少させるように安静,患肢の挙上,弾性ストッキングの着用などの内科的治療と早期に発見して漏れのあるリンパ管の結紮を行う外科治療とがあるが,いずれにしても混合感染の予防のための抗生剤投与を忘れてはならない.

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