日本臨床外科医学会雑誌
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胃癌穿孔症例の検討
自験6例の報告と本邦文献上報告例の分析
前田 守島津 久明小堀 鴎一郎古田 雄一団野 誠古山 米一富山 次郎草間 悟
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1981 年 42 巻 6 号 p. 647-654

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抄録

著者らはきわめて稀な早期胃癌穿孔2例と残胃癌の被覆穿孔1例を含む6例の胃癌穿孔症例を経験したので,これらの症例について報告するとともに,本邦報告例に関する文献的考察を行った.
自験例のうち3例はBorrmann II型あるいはIII型の進行胃癌の穿孔例で, 1例には穿孔部の縫合閉鎖のみを, 2例には胃亜全摘を施行したが,後者の2例もそれぞれ1年後と3年2カ月後に再発死亡した.早期胃癌穿孔の2例はIII+IIc型とIIc+III型のIIIの穿孔例で, 1例は術後合併症のために2カ月後に死亡したが,他の1例は穿孔後1年2カ月の現在健在である.残胃癌被覆穿孔の1例には,消化管の通過障害のために空腸瘻造設のみを施行したが, 4カ月後に死亡した.
今回調査し得た範囲では, 1950年以降の本邦文献上に自験例を含めて223例の胃癌穿孔症例の報告がみられたこれらのうち主な報告者の成績から胃癌穿孔の頻度をみると,その平均は全胃癌手術症例の0.58%であった.年齢は50歳代と60歳代に最も多く分布し,男女比は3.9:1であった.穿孔前に無症状であった症例が12.2%に認められたが,大多数の症例には何らかの腹部愁訴が先行しており,また穿孔の誘因としては,吐血を含む嘔吐が39.5%の症例に認められ,そのほかには胃X線検査や内視鏡検査に続発したものがそれぞれ12.3%と8.7%の頻度にみられた.手術および病理学的所見では,占居部位MまたはAのBorrmann II型とIII型の穿孔が大多数を占め,また肉眼的な癌進行程度では過半数がStage IVの高度に進行した症例であった.自験例以外に早期胃癌穿孔は10例,残胃癌穿孔は2例の報告がみられるに過ぎなかった.治療の内容に関して治癒切除と非治癒切除の別を多数の症例について知ることはできなかったが,一応68.0%の症例に何らかの胃切除が行われていた.しかし,上述のように高度に進行した症例が多数を占めていたために,その転帰は一般にきわめて不良であった.

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