日本臨床外科医学会雑誌
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胃癌患者血中CEA値の検討
江崎 友通中谷 勝紀宮城 信行白鳥 常男
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1982 年 43 巻 3 号 p. 233-240

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抄録
胃癌患者93例の術前血中CEAを測定し,癌の肉眼的所見,組織型,進行度,リンパ節転移程度,腹膜播種および肝転移の有無,深達度,浸潤増殖様式および癌腫の大きさ別にCEAを検討した.
術前胃癌患者93例の血中CEA平均値は4.1ng/mlであり, 2.6ng/ml以上の陽性率は29%, 5.1ng/ml以上の陽性率は13%であった.肉眼型ではo型が血中CEA平均値は1.9ng/ml, 2.6ng/ml以上の陽性率は23%, 5.1ng/ml以上の陽性率は0%と最も低く, 3型は,血中CEA平均値は6.3ng/ml, 2.6ng/ml以上の陽性率は38%, 5.1ng/ml以上の陽性率は21%と最も高値を示した.組織型ではpapが最も高値で,血中CEA平均値は7.0ng/ml, 2.6ng/mlおよび5.1ng/ml以上の陽性率はともに43%であり, tub1およびtup2は最も低値で血中CEA平均値はともに2.2ng/ml, 陽性率についてみると2.6ng/ml以上のものはそれぞれ25%, 27%で, 5.1ng/ml以上の症例はみられなかった. stage別にみると血中CEA平均値はstage I, stage IIは2.6ng/ml以下であり, stage IIIは3.8ng/ml, stage IVは8.7ng/mlとstageの進行とともに順次高値を示し,陽性率についても同じ傾向であった. stageの因子別にみると,リンパ節転移では転移が進むにつれて順次高値を示す傾向がみられ,腹膜播種および肝転移についても転移のみられる群が平均値および陽性率ともに高値を示した.また深達度では深達度が進むにつれて高値を示す傾向がみられ,浸潤増殖様式についてもINFα, INFβ, INFγと順次高値を示す傾向がみられた.腫瘍の大きさについては腫瘍の増大とともに高値を示した.
以上の結果を得たが,比較的早期の癌でも血中CEAが高値を示したり,進行した癌でも血中CEAの上昇がみられない場合もあり,組織内CEAや血中への漏出機構などについては更に検討する必要があろう.
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