日本臨床外科医学会雑誌
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巨大皺襞に囲まれた穹隆部分化型胃癌の一例
岩瀬 克己三涌 馥川瀬 恭平山口 晃弘近藤 成彦宮川 秀一伊左治 秀孝高村 公範鄭 統圭福慶 逸郎中野 浩
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1982 年 43 巻 3 号 p. 288-293

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抄録
胃に巨大皺襞を呈する病態には種々のものがあるが,そもそも,Menetrierが巨大皺襞が胃癌発生の母地となるのではないかと考えたにもかかわらず, Borrmann IV型癌の巨大皺襞を除くと,癌と巨大皺襞の合併はむしろまれである.今回われわれは,良性の巨大皺襞症と体上部大蛮側の分化型進行癌との合併例を経験した.病理組織学的検索では,癌は一部は中間帯にかかるが,そのほとんどは胃底腺粘膜領域にあり,肉眼型はBorrmann II型で発育態度は周囲に圧排性の増殖を示す限局型で,組織学的には中分化型腺管腺癌であった.この周囲には,肉眼的には脳回転様を示す巨大皺襞があり,組織学的には胃底腺を含む胃体部粘膜上皮の肥厚,増生の所見を示した.胃癌と巨大皺襞症との合併例は散発的に症例報告を見るに過ぎないが,とりわけ本例の如く巨大皺襞内に発生した分化型進行癌はきわめてまれであり,また胃底腺粘膜領域に発生した分化型癌についても癌の組織発生の観点からきわめて興味深いものと考えられる.
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