日本臨床外科医学会雑誌
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Boerhaave症候群の3治験例と本邦報告例に関する文献学的考察
森田 博義島津 久明紙田 信彦山口 善友
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1982 年 43 巻 7 号 p. 796-804

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抄録

48歳・男, 55歳・男, 67歳・男のBoerhaave症候群の3治験例を報告するとともに,これらを含む89例の本邦文献上報告例について分析した成績を述べた.自験例の1例には胸腔穿刺による誘導, 2例には開胸による破裂部の縫合閉鎖と胸腔内誘導を施行し,その後の経過に多くの問題があったが,いずれも保存的に治療して軽快退院させることができた. 89例の内訳では,平均年齢46.4歳,男女比21:1で, 25例にアルコール中毒症が併存していた.初期症状として咽吐が80%の症例に認められ,その2/3はアルコール飲用後に起っていた.治療では,なるべく早期に開胸して破裂部の一次縫合閉鎖と胸腔内誘導を行うのが望ましいが,現実にその実施が不可能な症例も少くなかった.全症例の死亡率は34.8%であったが, 1970年以降の症例では24.3%と改善され,最近の各種全身管理治療の進歩がこれに大きく貢献していることが推測された.早期死亡例の分析から,重症の縦隔洞炎に関する対策が今後の1つの重要な課題と考えられた.

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