日本臨床外科医学会雑誌
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非機能性上皮小体嚢胞の4例と本邦集計例の検討-特にその発生について-
石田 茂登男佐瀬 正博吉田 博佐々木 純森 昌造瀬田 孝一
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1982 年 43 巻 7 号 p. 834-840

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抄録

上皮小体の非機能性病変の一つに上皮小体嚢胞がある.従来,上皮小体嚢胞あるいは嚢腫として報告されているものにはここに報告する非機能性上皮小体嚢胞の他に,上皮小体機能亢進症を伴う上皮小体腺腫あるいは過形成が二次的に嚢胞変性を起こした,いわゆる機能性上皮小体嚢胞も含まれ混同して論じられていた.しかし,これらは機能的にも組織学的にも,また発生学的にも異なり両者は区別して論ずべきものと思われる.
我々はこれまで非機能性上皮小体嚢胞を4例経験した. 4例とも前頚部腫瘤を主訴としており,前頚下部に表面平滑で弾性軟の腫瘤であった.甲状腺機能および上皮小体機能検査ではいずれも異常を認めず,手術により全例下上皮小体より発生した嚢胞であることを確認した.組織学的には上皮小体嚢胞の壁内面を一層の円柱あるいは立方上皮が'被っており,その外層の結合織中には正常な上皮小体組織が島状に散見された.嚢胞内容は無色あるいは淡黄色透明の漿液でPTH含量が高値であった.発生学的には組織学的検討あるいは文献的にも下上皮小体の発生過程における胎生遺残説が有力と思われる.

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