日本臨床外科医学会雑誌
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胆道癌の進展-手術例及び剖検例の検討-
斉藤 敏明横山 勲新井 健之山田 良成
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1984 年 45 巻 11 号 p. 1423-1428

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抄録

切除22例,剖検46例の胆道癌について検討を行った.
切除例については胆管癌7例,胆嚢癌12例,乳頭部癌3例で,胆管癌では非治癒切除となったのは3例で,癌の進展がHinf, Vによるものであった.リンパ節転移は比較的少なくn2は1例であった. 6年以上生存は治癒切除の2例のみであった.胆嚢癌では治癒切除9例,非治癒切除は3例で,癌の進展はHinf,術中診断の誤りなどであり,またリンパ節転移ではn3が3例に認められた. 3年生存は1例, 6年生存の1例は早期癌であった,乳頭部癌については3例とも治癒切除であったが2例にPancが認められ再発死亡した.
剖検例について癌の進展をみると,胆管癌17例ではHinf (50%), H (50%),肺転移(15%),リンパ節転移は肝門,膵周囲に15%程度に認められた.胆嚢癌25例においてはHinf (89%), H (26%), P (52%),肺転移(36%),リンパ節転移は肝門,膵周囲に多く,旁大動脈にも36%に認められた.乳頭部癌3例については1例を除き,肝,肺,膵周囲リンパ節転移が認められた.
組織像との関連をみると,胆管癌では高分化腺癌76%,中・低分化腺癌24%で,肝転移は高分化型の30%に対し,中・低分化型では100%に認められた.胆嚢癌では高分化腺癌52%,中・低分化腺癌40%で胆管癌より低分化の傾向にある.中・低分化型では肝転移50%,肺転移60%,旁大動脈リンパ節転移70%に認められ,高分化型より多い.
以上の所見から胆管癌においては遠隔転移,リンパ節転移は比較的少なく,拡大手術により局所を完全に切除出来ればその予後は比較的期待出来るものと考えられる.これに反し胆嚢癌においては癌の進展は高度で,早期発見,早期手術の必要性が痛感される.

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