日本臨床外科医学会雑誌
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原発性重複癌58例の検討
及川 郁雄平田 公一秦 史壮桂巻 正大久保 衛丸山 芳朗臼井 朋明白松 幸爾戸塚 守夫早坂 滉
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1984 年 45 巻 8 号 p. 1195-1199

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抄録

当科において昭和49年10月から昭和58年9月までの9年間に経験した重複癌患者58例について検討を加えた.この頻度は同期間に入院した悪性腫瘍患者2,349名の2.47%に相等する. 58例中異時性発生は47名,同時性発生は11名であった.性別発生比は1:1.71で女性に多い傾向を示し,年齢は50歳以上の症例が大部分を占めていた.
臓器別では,いずれか一方の癌としては胃癌,大腸癌が各25例,生殖器癌24例,乳癌9例,口腔,咽喉部癌,甲状腺癌が各6例といった順で多く,男性では胃癌が,女性では子宮癌が多かった.このように重複癌としての組み合わせでは一方が消化器癌である割合が最も多く,このうち胃癌及び大腸癌が各々35.6%であった.
予後は一般に不良でfollow upできた57例中, 39例は3年以内に死亡している.男性の方が予後不良であり, 3年以内に16例すべてが死亡し,そのうち72%に相等する13例は一年以内に死亡している.長期生存は女性において10例見られたが,この大部分は比較的予後が良いとされる子宮癌,乳癌,甲状腺癌を組み合わせた症例である.
家族歴の検討では2親等内に重複癌のうち少なくとも一方の癌の発生を認めたものが15%と高頻度であった.また重複癌発見前に放射線照射療法をうけたものが23%と高頻度であった.

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