抄録
昭和47年から昭和58年9月までに,当院で経験した食道静脈瘤患者65症例に関して検討した. 65例中,肝硬変症62例,特発性門脈圧亢進症2例,肝前性門脈閉塞症1例で, 42例に手術を, 23例に内視鏡的硬化療法を施行した. 42例の手術例中, 9例に選択的シャント手術を, 33例に直達手術を施行した.当院の最近の主流術式である経胸的食道離断術では術死7.1%, 遠隔生存85.7%と一応の成績を挙げている.また, ICG R15 45%を越えるか,またはChild Cの症例に対して,内視鏡的硬化療法を施行しているが, 23例を経験し,予防・待期症例7例,緊急症例11例,肝癌症例5例であった.緊急出血例(肝癌症例を含む)では,止血率93.8%, 再出血53.3%, 死亡率62.5%であった.予防・待期症例7例では, 4ヵ月後に肝不全で1例を失ったが, 3~13ヵ月の経過中に出血はみられなかった.再出血は緊急症例の8例にみられ, 3例が食道静脈瘤からの出血であった.死亡症例, 11例中8例が,消化管出血を死因とし,このうち2例が食道静脈瘤出血であったが,いずれも肝癌末期症例であった.以上より,内視鏡的硬化療法は食道静脈瘤出血には有効な手段と考えられた.