日本臨床外科医学会雑誌
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46 巻, 1 号
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  • 廣瀬 輝夫
    1985 年 46 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
  • 坂田 久信, 森 彬, 篠原 啓次郎, 橋爪 陽一, 甲斐 祥一, 田中 教英, 木村 専太郎
    1985 年 46 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    昭和47年から昭和58年9月までに,当院で経験した食道静脈瘤患者65症例に関して検討した. 65例中,肝硬変症62例,特発性門脈圧亢進症2例,肝前性門脈閉塞症1例で, 42例に手術を, 23例に内視鏡的硬化療法を施行した. 42例の手術例中, 9例に選択的シャント手術を, 33例に直達手術を施行した.当院の最近の主流術式である経胸的食道離断術では術死7.1%, 遠隔生存85.7%と一応の成績を挙げている.また, ICG R15 45%を越えるか,またはChild Cの症例に対して,内視鏡的硬化療法を施行しているが, 23例を経験し,予防・待期症例7例,緊急症例11例,肝癌症例5例であった.緊急出血例(肝癌症例を含む)では,止血率93.8%, 再出血53.3%, 死亡率62.5%であった.予防・待期症例7例では, 4ヵ月後に肝不全で1例を失ったが, 3~13ヵ月の経過中に出血はみられなかった.再出血は緊急症例の8例にみられ, 3例が食道静脈瘤からの出血であった.死亡症例, 11例中8例が,消化管出血を死因とし,このうち2例が食道静脈瘤出血であったが,いずれも肝癌末期症例であった.以上より,内視鏡的硬化療法は食道静脈瘤出血には有効な手段と考えられた.
  • 望月 功
    1985 年 46 巻 1 号 p. 17-29
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    閉鎖式一列層々吻合法は,従来の閉鎖式吻合法に一列層々吻合の利点を導入し,開発された術式である.教室では本法をあらゆる消化管の吻合に用いており,好成績をおさめている.
    今回,本法を用いた大腸の吻合をとりあげ,その手術手技と,臨床成績を検討した.さらに本法と他吻合術との手術成績を比較するため,神奈川県下で,大腸吻合のアンケート調査を行ない,集計できた1,144症例に対し検討を加え,特に本法とAlbert-Lembert法(以下A-L法)との比較を行なった.
    また犬を用いた動物実験を行ない,結腸の吻合部癒合の治癒過程と,吻合部組織中の細菌について,本法とA-L法との比較を行なった.
    その結果,本法を用いた大腸吻合74例中の縫合不全は,小腸・結腸吻合1例/24例(4.2%), 結腸・結腸吻合0例/32例(0%), 結腸・直腸吻合1例/18例(5.6%), 吻合部狭窄は, 1例/74例(1.4%), 吻合部出血は, 0例/74例(0%)であった.また, A-L法と縫合不全発生率に関して比較すると,小腸・結腸吻合では両法に差はなかったが,結腸・結腸吻合,結腸・直腸吻合では,有意の差(p<0.05)をもって,本法の縫合不全発生率が低かった.
    犬の結腸における吻合部の治癒過程では,本法はA-L法に比し,癒合が早く,特に粘膜,粘膜下組織の接合に優れており,炎症細胞浸潤も少なかった.また術後3日目の吻合部組織中の細菌について,菌種別にその菌数を検討すると,吻合部組織中の細菌の主体をなすのは,好気性菌群のE. coli, α-streptococcus, Enterococcus, 嫌気性菌群のPeptostreptococcusであり,本法とA-L法を比較すると,嫌気性菌群では差がなかったが,好気性菌群では本法がA-L法に比し明らかに無菌的であり,円滑な創傷治療が期待できるものと思われた.
    以上の臨床例の検討,実験成績より,下部消化管吻合において,本法がA-L法に比し,有用な吻合術式であると推察された.
  • 日前 敏子
    1985 年 46 巻 1 号 p. 30-42
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    経口摂取不能の末期消化器癌患者に対する高カロリー輸液施行前後に,静脈内糖負荷試験を施行し耐糖能の変動ならびに血中アドレナリン,ノルアドレナリン,コルチゾール,乳酸,ピルビン酸など糖代謝に関与する諸因子について検討した.また栄養指標として血清アルブミン,血清トランスフェリン,クレアチニン身長比,末梢血総リンパ球数を測定しその変動を明らかにするとともに,至適投与カロリーについても検討した.
    高カロリー輸液施行前においては,インスリン分泌の低下ならびに,血中グルカゴンの著明な高値が認められた.また,アドレナリン,ノルアドレナリン,およびコルチゾールなど抗インスリンホルモン濃度の上昇がみられ,耐糖能の低下が認められた.さらに,血中乳酸,ピルビン酸濃度の上昇から,末期癌患者では,腫瘍における嫌気性解糖の亢進がうかがわれた.
    高カロリー輸液施行後4週間以上生存した症例について,予め設定した35kcal/kg/日以下投与群, 36~45kcal/kg/日投与群, 46kcal/kg/日以上投与群の3群に分け,耐糖能,糖代謝および栄養指標の面から至適投与カロリーについて検討した.最も高カロリーを投与した46kcal/kg/日以上投与群では,耐糖能が改善され,栄養状態も維持されたが,他の2群では耐糖能は改善されず,栄養状態は低下した.
    以上より,末期癌患者といえども46kcal/kg/日以上の投与が必要と思われるが,高カロリー投与の場合には,病態の悪化による耐糖能低下を念頭におくことが重要と考えられた.
  • 山本 俊二, 中島 芳郎, 田中 久富, 寺崎 充洋, 西尾 利二
    1985 年 46 巻 1 号 p. 43-48
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病に両側乳癌を合併した1例を経験したので報告した.
    症例は, 60歳女性,左乳房腫瘤.左血性乳頭分泌.右乳房腫瘤を主訴に入院した.胸脊部を中心にして,大小不同のcafé-au-lait斑と多発性神経線維腫を認めた.左乳腺の外上部から外下部にかけて4cm×5cm, 右乳腺の外下部に2cm×3cmの硬い腫瘤を認めた.また,左腋窩リンパ節の腫脹を触知した.乳腺超音波検査では,両側の腫瘤は陰性像で,不規則な形態.辺縁の前面の悪性量.不均一な内部エコーを認めた.乳頭分泌細胞診では, Class Vであった.骨シンチグラムでは,右第10肋骨.第9胸椎右側および第3腰椎に異常集積像を認めた.
    骨転移を伴う両側乳癌と診断し,両側の大小胸筋保存乳房切断術(Br+Ax)を皮膚斜切開にて施行した.左乳癌は, CD, G, n1(+), T2aN1bM1, 右乳癌は, D, G, n1(-), T2aN0M1であった.乳癌の組織学的分類では,腫瘤は両側とも乳頭腺管癌であった.エストロゲン・レセプター,プロゲステロン・レセプターは,左乳癌ではいずれも陰性で,右乳癌は両者ともに陽性であった.術後8カ月目に,肝転移で死亡した.
    von Recklinghausen病は,神経線維腫・神経鞘腫などの神経原性腫瘍の悪性化(肉腫化)が問題になるが,非神経原性悪性腫瘍の合併も報告されている.非神経原性悪性腫瘍を合併したvon Recklinghausen病の本邦報告74例の集計とともに,両側乳癌についても若干の文献的考察をおこなった.
  • 末田 泰二郎, 長谷川 隆光, 村下 純二, 浜中 喜晴, 前田 佳之
    1985 年 46 巻 1 号 p. 49-55
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    漏斗胸に先天性心疾患を合併した3例を経験した. 2例はASD合併例で, 1例はPDA合併例であった. ASD合併例のうち1例及びPDA合併例は心疾患と漏斗胸の手術を二期的に行った.このうちASD合併例は,最初に胸骨正中切開を行い,後日単純胸骨翻転術を施行したところ,術後5年目に翻転胸骨が再度陥凹した.このために, Kirshner鋼線を用いて,胸骨挙上術を追加した. ASD合併の第2例は,第1例の反省より,一期的手術を行った.即ち,第2肋間にて胸骨を横断し,変形肋軟骨及び胸骨を腹直筋を有茎として翻転し,体外循環下にASDを閉鎖,その後腹直筋有茎性胸骨翻転術を行った.術後経過もよく満足すべき結果を得た.
    以上の経験から,先天性心疾患を合併した漏斗胸症例の治療にあたっては, (1) 開心術を必要とする際は,心疾患と漏斗胸の同時手術を行う方が,手術回数及び胸郭形成効果の面からも望ましい.この際,腹直筋有茎性胸骨翻転術は,開心術中の胸骨血流温存の点で優れている. (2) PDA等の手術創を異にする疾患の合併例では,一期的,二期的のどちらの手術法でもよい.この際,漏斗胸単独の術式としても,腹直筋有茎性胸骨翻転術は優れている. (3) ヘパリン使用の際は止血に注意し,肋骨,筋膜の固定を充分に行い,翻転胸骨の周囲に死腔を作らない工夫が大切である.
  • 大塚 雅昭, 西島 浩, 豊泉 惣一郎, 小林 敏生
    1985 年 46 巻 1 号 p. 56-60
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    66歳の男性で黄疸を主訴として来院. PTCにて左右主肝管から総肝管にかけて狭窄を認め,肝外胆管切除術兼肝門部肝管空腸吻合術が施行された.術後第25病日に大量の下血と発熱が出現し,以後間欠的に同症状が繰り返し出現した.腹腔動脈造影により,固有肝動脈に発生した肝動脈瘤による出血と診断し,ただちにembolizationを施行した.約1ヵ月後の血管造影で肝動脈瘤の消失を確認し退院した.
    肝道系手術後の肝動脈瘤および肝内肝動脈瘤に対して, embolizationは安全かつ有効な治療として適応があると考える.
  • 森本 雅巳, 井之川 孝一, 杠 英樹, 加藤 邦隆, 山岸 喜代文, 白井 祐二
    1985 年 46 巻 1 号 p. 61-65
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腸骨動脈瘤が孤立性に認められるのは稀とされ,腹部大動脈瘤と比較すると本症はその1/20以下である.本症の特徴は破裂の危険性が高く,また破裂するとその死亡率が高いことで,その理由は(1) 本症が稀れであるので,骨盤内臓器の1つの疾患として鑑別されない. (2) 骨盤内深部発生例では巨大瘤あるいは破裂例でなければ本症と診断されない. (3) 本症による骨盤内臓器圧迫症が本症によるものと考慮されない.とされている.本邦の本症報告例をみると,破裂性動脈瘤では死亡が約半数に認められ予後不良である.本症は診断され難い動脈瘤の1つとして関心が持たれてよい疾患と考えられる.
    われわれは70歳男の左総腸骨動脈瘤および56歳男の両側総腸骨動脈瘤の2例を経験した.いずれも腹部の拍動性腫瘤を触知出来,血管撮影で非破裂性の本症と診断した.手術は人工血管による血行再建術を行い,術後経過は良好であった.
  • 応儀 成二, 伊藤 勝朗, 石黒 真吾, 森 透, 三島 巌, 糸数 俊秀, 湯川 勝託, 神波 澄幸
    1985 年 46 巻 1 号 p. 66-69
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    上腕動脈瘤は末梢動脈瘤の中でも稀れなものであり,報告例の大半は外傷に起因するものとされている.我々は動脈硬化性上腕動脈瘤への一治験例を経験したので報告するとともに,病因につき文献的考察を加えた.
  • 森山 正明, 池尻 公二, 福田 幹, 井上 文夫, 千葉 武彦, 綾部 欣司, 内藤 正俊
    1985 年 46 巻 1 号 p. 70-75
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    外傷性四肢主幹動脈閉塞症はいずれも血行再建の適応で,受傷から血流再開までの許容時間は6~8時間とされている.しかしこれは必ずしも絶対的なものではなく,受傷部位あるいは副血行路の状態によってはこの許容時間をすぎても血行再建が可能でなんら後遺症を残すことなく治癒する症例もある.
    ここでは,最近4年間に当院で経験した外傷性四肢主幹動脈閉塞症5例について報告する.症例は男3例女2例の5例で,年齢は5~55歳,平均33.6歳であった.損傷動脈は右外腸骨動脈,右膝窩動脈,左上腕動脈,左腋窩動脈,右総大腿動脈各1例づつで各部位におよんでいた.受傷原因は労災事故1,交通事故2,転倒打撲1,医原性のもの1例であった.閉塞の原因としては血管挫傷内膜損傷に伴う血栓性閉塞1,骨折片による圧迫1,骨折片による外膜捕捉屈曲によるもの1,筋膜下血腫形成により小胸筋に圧迫されたもの1,内膜損傷による血栓性閉塞1例であった.合併損傷として5例中3例に骨折を伴なっていた. 5例中4例に患肢末梢の動脈脈拍を触知せず,他の1例も時間の経過とともに触知されなくなり,診断にあたっては患肢末梢側の脈拍の検索が重要と考えられた.
    受傷から入院までの時間は医原性のものを除き2時間30分から約100時間におよび,受傷後6時間以内に血流再開し得た症例は2例にすぎなかった.この時間の遅れの主な原因は動脈損傷の診断の遅れであった.
    手術は圧迫除去あるいは動脈剥離を行なったもの3例,損傷部切除血栓除去端々吻合1,血栓除去術1例であった.
    5例全例とも術後経過は良好で,後遺症はみられず,再建動脈も開存している.
    このように外傷性四肢主幹動脈閉塞症では閉塞様式,阻血状態が異なり,症例に応じて手術時期,手術手技が選ばれねばならない.
  • 三浦 敏夫, 綾部 公懿, 母里 正敏, 石井 俊世, 佐藤 哲也, 楢崎 暁美, 謝 家明, 富田 正雄
    1985 年 46 巻 1 号 p. 76-82
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    特発性食道破裂(Boerhaave症候群)は比較的稀な疾患であり,早期診断が予後を左右する重要な因子となる.
    最近,われわれは本症の手術例を経験した.
    症例は38歳女性で,胆石症,十二指腸潰瘍,糖尿病で加療中であったが,胃十二指腸内視鏡検査終了後,ウイスキーを摂取した直後より激しい前胸部痛で発症した.頚部皮下気腫を認め,内視鏡による食道損傷を疑われて来院したが,食道造影により下部食道左側よりガストログラフィンの漏出を認め,特発性食道破裂と診断した,発症後8時間後に開胸し,縫合閉鎖,ドレナージにより治癒, 3週後に退院した.
  • 宇田川 晴司, 鶴丸 昌彦, 鈴木 正敏, 小野 由雅, 渡辺 五朗, 秋山 洋, 海上 雅光, 原 満, 片岡 卓三, 川島 喜代志, 高 ...
    1985 年 46 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    食道の後天性良性狭窄の一因として経鼻胃管留置の影響が古くから指摘されているが,未だこれによる食道完全閉塞の報告は例を見ない.最近我々は頚部食道外傷後, 6日間の経鼻胃管留置により胸部食道の完全閉塞を来たしたと思われる症例を経験した.
    患者は19歳の女性で,誤って割り箸を食道入口部後壁に突き刺して2時間後,皮下気腫による呼吸困難症状を訴え武蔵野赤十字病院に緊急入院, 3日後頚部食道瘻より右膿胸を併発し開胸ドレナージ術を施行した. 6日間の経鼻胃管留置の後これを抜去し1ヵ月前後の間に胸部食道が完全閉塞に陥った.虎の門病院転院後,二期的に食道切除再建術を施行したが切除標本において病変はほぼ粘膜及び粘膜下層に限局しており,短期間に発生した食道の全周性の上皮剥脱とそれに続く創傷治癒過程として完成した食道閉塞と推察された.術創の瘢痕形成過剰,術後早期の癒着性イレウス等患者側の特殊因子も推定された.
    極めて稀な条件下に起った事態とは思われるが個々の誘因に関してはごく一般的に見られるものであり,経鼻胃管留置に際しての留意点を明らかにすべく考察を加えた.
  • 本邦報告例の検討
    村山 祐一郎, 野中 雅彦, 中路 進, 上田 泰章, 前田 米造, 戸田 省吾
    1985 年 46 巻 1 号 p. 91-95
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    胃平滑筋芽細胞腫は,胃の粘膜下腫瘍の中でも比較的稀な疾患で,われわれの調べ得た限りでは自験例も含めて23例であった.
    本症は,その発育形態から,術前に病理組織学的診断のなされることが少ないが,今回,われわれは,術前に,内視鏡的に,病理組織学的診断のできた,胃平滑筋芽細胞腫の1例を経験したので報告する.
    患者は37歳女性で,心窩部不快感を主訴として来院,他病院で,胃透視,胃カメラ等の検査をうけ,胃粘膜下腫瘍を指摘されたが,病理組織学的診断にまでは至らなかった.
    本症23例中,術前に病理組織学的診断のなされたものは,不明を除く19例中4例(21.1%)であり,又,本症の84.2%に,腫瘍に一致した粘膜に,潰瘍形成や,中心陥凹がみられ,この部位での生検が,術前の病理組織学的診断に重要であると考えられた.なお,術前に診断された4例全ては,この部位よりの生検によるものであった.
    手術に関しては,不明1例を除いて,胃全摘1例,亜全摘2例,他は普通切除が行われ,リンパ節郭清を伴うものや,伴わないものと,さまざまであったが,今後,症例の増加に伴い,腫瘍の大きさ,発育形態,悪性度等を考慮した手術術式の確立が望まれる.
  • 河野 研一, 佐藤 重樹, 永野 秀樹, 箭本 浩, 田中 アツ, 松田 正尚, 花上 仁, 北野 善昭, 四方 淳一
    1985 年 46 巻 1 号 p. 96-99
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    5mm以下の単発微小胃癌の術前診断は現在の手技をもっても困難とされているが,その術前診断に焦点が当てられる様になってきたのが実情である.
    現在のところ,その発見は偶然あるいは他病変に合併していることが多い.
    われわれは胃X-Pで胃粘膜下腫瘍と考えられ,胃内視鏡によりIIa型早期胃癌と術前診断し得た症例を経験した.病理所見は3×3mmの深達度mの単発微小胃癌であった.
    微小胃癌は諸家のretrospective studyによりこの特徴が報告されているが,未だ確立したものがない.したがって,わずかな異常所見に対しても積極的に生検を行い,さらに摘出標本についても全割を行うことが,微小胃癌の特徴を碓立するのに必要であり,術前診断の一助となると考えられた.
  • 林 良輔, 竜 崇正, 小高 通夫, 佐藤 博
    1985 年 46 巻 1 号 p. 100-105
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    診断,治療とも困難であった肝内結石症も超音波検査,超音波映像下穿刺により診断も容易となり,これを応用した超音波ガイド経皮経肝胆道鏡下截石法により治療成績も進歩しているが,肝内胆管癌の発生は,肝内結石症における合併症として重要な問題として残っている.われわれは病悩期間12年の肝内結石症に合併した28歳男性の肝内胆管癌症例を経験したので,その臨床経過とともに本邦報告例について集計した.またこのような肝内結石症に合併した肝内胆管癌は,繰り返しておこる慢性肝内胆管炎と胆汁うっ滞を原因として発生すると考えられるため,肝内結石症においては截石後も超音波検査はもちろん,選択的動脈造影,胆汁細胞診あるいは胆道鏡による肝内胆管の生検なども併せて行い,注意深く経過観察を続ける必要があることを強調した.
  • 稲吉 厚, 山崎 謙治, 豊永 政和, 池田 恒紀, 伊豆永 浩志, 外村 政憲
    1985 年 46 巻 1 号 p. 106-112
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    最近の1年3ヵ月間に経験した肝膿瘍6例の超音波断層像の特徴を検討するとともに,肝膿瘍の治療における超音波ガイド下穿刺ドレナージ術の有用性について検討した.肝膿瘍の超音波断層像の特徴としては,腫瘤像の輪郭の不整,低エコー型または混合型を示す内部エコーおよび後方エコーの増強が認められた.治療は,肝膿瘍6例中1例は抗生剤の投与のみで治癒し,残り5例中4例は,抗生剤の投与とともに超音波ガイド下の穿刺ドレナージを施行し,治癒または軽快させることができた.肝膿瘍の治療において,抗生剤の投与と膿瘍のドレナージが基本であるが,超音波ガイド下穿刺ドレナージ術は侵襲が少なく確実なドレナージが可能であり有用な方法と考えられた.しかし,ドレナージ中の合併症を防ぐために,ドレナージ中の注意深い管理が必要である.
  • 十川 康弘, 大山 欣昭, 藤澤 秀樹, 瀬戸屋 健三, 大和田 耕一, 奥井 勝二
    1985 年 46 巻 1 号 p. 113-117
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    一般に小網腫瘍は稀な疾患で,その報告例も少ない.今回原発性小網平滑筋腫の1例を経験したので若干の交献的考察を加えて報告する.
    症例は47歳の男性で偶然の機会から無症状に経過した胃小弯側の腫瘍として発見された.そこで上部消化管造影,胃内視鏡,腹部超音波検査, CT, ERCP,腹腔動脈造影などの諸検査によっても,肝膵と連続性のない胃小弯側胃外の実質性腫瘍という臨床診断のみで確定診断に至らなかった.開腹所見では原発性小網腫瘍で,病理組織によって平滑筋腫と診断された.
    小網腫瘍は本邦では自験例を含め32例で,そのうち平滑筋由来のものは10例(肉腫7例)である.術前診断は困難であるが腹部超音波検査, CT,腹腔動脈造影などが有効と思われる.
  • 野川 辰彦, 小武 康徳, 述 博治, 田代 和則, 関根 一郎
    1985 年 46 巻 1 号 p. 118-121
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    我々は最近組織学的に構造異型を伴った虫垂のcystadenomaの1例を経験した. 71歳女性で虫垂炎の診断にて開腹し,虫垂粘液嚢胞の診断を得た.回盲部切除を施行した.虫垂粘液嚢胞は一部粗〓で, 12×5×5cm,壁は弾性硬で黄白色光沢性を有していた.内部にはゼラチン様物質が充満し,その内面は黄白色粗〓であり,盲腸内腔と虫垂嚢胞内腔とは交通が認められた.病理組織学的には, cystadenomaの一部に構造異型を認めdysplasticな変化を伴ったcystadenomaと診断したが, carcinomaのpotentialを持つ可能性が考えられ興味がもたれた.症例の概略について報告するとともに病理学的に,および治療法に関連し文献的に考察を加えた.
  • 堀川 巳清, 八木 正躬, 堀田 敦夫, 深井 泰俊
    1985 年 46 巻 1 号 p. 122-128
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    1943年Lemmelは十二指腸憩室が総胆管や膵管を圧迫した結果,胆汁や膵液の排出が妨げられ黄疸や膵炎などを生ずる症候群をLemmelのpapillen syndromeと提唱した.最近著者らは本症候群の2例を経験したので報告する.
    症例1は主訴が右季肋部痛並びに嘔気嘔吐であり肝機能障害が長期間にわたって軽快と増悪を繰り返したため精査した結果Lemmel症候群と診断された症例である.本症例は再手術例であり初回術前の胆管造影で結石が疑われたが術中造影にて総胆管結石と確診されたため肝障害の原因が傍乳頭憩室よりはむしろ結石に起因しているものと考え胆嚢摘除兼胆管切開載石術を施行した.しかし術後なお肝機能障害が出現しT字管からの胆管造影で傍乳頭憩室に起因した肝機能障害と診断されたため初回手術後139日目に再手術を施行した.手術所見並びに手術方法は,憩室は膵頭部後面の膵実質内に埋没しており炎症所見はあまりみられなかった.術式は十二指腸切開後憩室を十二指腸内に内翻させて切除し乳頭形成術を付加した.症例2は主訴が右季肋部痛,黄疸である.本症例は結石が無いにもかかわらず胆道感染発作を繰り返したためlemmel症候群と診断され手術を施行した症例である.手術方法は胆嚢摘除後憩室を頚部まで剥離し十二指腸を切開せずに憩室を頚部から切除した.乳頭形成術は行なわなかった.
    Lemmel症候群に対する手術術式は, (1) 憩室切除術, (2) 憩室内翻埋没術, (3) 空置的胃切除術(Billroth II法)に分けられるが最も確実な方法は自験例に行った憩室切除術である.炎症・癒着などの強い症例に本術式を用いる場合には憩室切除時に総胆管,膵管に損傷を加えないように注意しなければならない.自験例2例はそれぞれ術後約1年5ヵ月を経過しているが良好であり愁訴は全く消失している.
  • 栗山 洋, 張 士文, 梅下 浩司, 明石 英男, 水本 正剛, 青木 行俊, 石井 経康
    1985 年 46 巻 1 号 p. 129-132
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    ダウン症候群の16歳女子に発生した甲状腺機能亢進症の手術治験例を報告する.両症の合併は非常にまれで, 1946年Gilchristの報告以来20数例,我国では岡島らの4例が報告されているのみである.本例は甲状腺腫を主訴として精査の結果,甲状腺機能亢進症と診断し, cold nodule様シンチ所見等より悪性腫瘍の合併を疑い,甲状腺半切除をおこなった. Diffuse hyperplasia with microadenomaであった.ダウン症候群と小児甲状腺機能亢進症について文献的考察を加えた.
  • 越智 邦明, 石井 慶太, 安藤 昌之, 佐藤 康, 柴田 光一, 真田 勝弘, 寺嶋 肇, 岡本 浩平, 登内 真, 井上 善弘, 青木 ...
    1985 年 46 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 1985/01/25
    公開日: 2009/02/10
    ジャーナル フリー
    腎良性腫瘍の中でも腎angiomyolipomaは,その特異的な組織像や,結節性硬化症との関連から興味ある腫瘍である.
    今回,我々は,結節性硬化症の19歳の女性で,巨大な出血性嚢胞を形成した腎angiomyolipomaの1例を経験した.入院時,顔面に多発性の母斑を認め, IQ 27と知能障害があり,過去に,てんかんの既往を有していた.腹部は全体に弾性やや軟の腫瘍を認め, CT等にて腎より発生した嚢胞と診断し,開腹術を施行した.嚢胞は,予想通り腎より発育したもので,胃,横行結腸を極度に圧排していたが,後腹膜を切開後,嚢胞を含め,左腎を比較的容易に摘出し得た.摘出標本は,腎上極より嚢胞が連続的に発育し,内腔には,約4,000mlの血液成分が貯留していた.一方,下極には腎外性に胡桃大の腫瘤が2個突出し,割面は黄色調で,比較的境界明瞭であった.組織像では,嚢胞部,下極の腫瘍部共に,血管,脂肪細胞,平滑筋細胞の腫瘍性増殖により構成された.典型的なAngiomyolipomaであった.
    Angiomyolipomaに於る増生血管は,異常なものが多く,破綻しやすく,腫瘍内或いは後腹膜腔へ大出血した例も,多く報告されている.最近, CT, Angio等の診断枝術の向上により,結節性硬化症に合併しない,腎angiomyolipomaも数多く報告され,術前診断も容易になりつつある.結節性硬化症の患者については,高率に合併する腎angiomyolipomaが予後を左右すると言われ,定期的なCT, angio等の検査により,病態を常に把握し,適切な治療をすることが肝要である.
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