抄録
原発性小腸癌は,近年報告例が増加しているが,依然頻度は低く早期発見・診断が困難な状況である.今回我々は,術前に小腸内視鏡にて診断できた空腸癌を1例経験したので文献的考察を加え報告する.
症例は, 34歳女性で,嘔吐を主訴とし,小腸二重造影,小腸内視鏡にて空腸癌と診断し,空腸部分切除とリンパ節郭清を行なった.病変は, Treitz靱帯より20cm肛門側の空腸に存在し,病理組織学的には高分化型腺癌であった.
原発性小腸癌は,全消化器癌中0.1~0.3%の低頻度であり,特有の症状もないため術前診断は困難である場合が多い.予後の面から考えても早期発見・診断が重要であるため,予想されうる場合には積極的に小腸二重造影,小腸内視鏡を行なう必要がある.治療は,手術療法が基本であり小腸切除術,右半結腸切除術などのリンパ節郭清を含めた根治手術を行なう必要がある.予後は,術前診断が遅れがちなので根治的手術例でも5年生存率20%と不良である.