日本臨床外科医学会雑誌
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鈍的腹部外傷による遅発性小腸狭窄の1例-本邦報告例の検討-
鈴木 俊輔森 昌造鈴木 克佐藤 雅夫吉田 博斎藤 和好桑田 雪雄高山 和夫
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1985 年 46 巻 12 号 p. 1649-1653

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抄録
鈍的腹部外傷による小腸損傷の極めて稀な合併症として遅発性小腸狭窄がある.今回我々は術前に診断し得た鈍的腹部外傷による遅発性小腸狭窄の1例を経験したので,自験例1例を含めた過去20年間の本邦報告例9例を集計し,文献的考察を加え報告した.
症例は21歳男性で,鈍的腹部外傷後17日目に腹痛と嘔吐を主訴として来院した.精査の結果,外傷後の遅発性小腸狭窄の診断で手術を施行した. Treitz靱帯から肛門側約1.9mの空腸に狭窄があり,その付近の腸間膜は瘢痕化しており,腸切除を行った.病理組織学的には小腸潰瘍であった.狭窄の原因として腸間膜損傷にもとずく腸管の循環障害による器質的変化が考えられた.また自験例では特にlong intestinal tube (Dennis tube) を挿入したが,この方法ではイレウスの症状の改善を計るばかりでなく,狭窄の部位およびその程度の診断にも有効であった.
本邦報告例の検討
記載の明らかな8例全例が男性で,年齢分布は4~60歳,受傷から症状出現までの時間は4日から1ヵ月で,平均16日であった.術前の診断法としては小腸造影,血管造影,腹腔鏡検査などが行なわれており,これらによって腸狭窄の診断が得られていた.また小腸の狭窄部位については一定の傾向はなかった.
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