日本臨床外科医学会雑誌
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膵嚢胞腺腫-特に画像診断と病理組織との対比を中心に-
高橋 寿久大沢 寛行原口 義座斉藤 慶一若林 利重
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1985 年 46 巻 3 号 p. 299-312

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抄録

膵嚢胞腺腫の臨床所見,上部消化管造影,血管造影, ERP, CT検査,超音波検査等の画像診断所見を,われわれの経験した漿液嚢胞腺腫2例,粘液嚢胞腺腫1例の3例をもとに検討を加えた.
膵嚢胞腺腫は病理組織学的に,生物学的性状の異なる漿液嚢胞腺腫と粘液嚢胞腺腫の2型に分類される.前者は高齢女性に多く,膵頭部に発生し,小嚢胞の集籏からなる.嚢胞の上皮はglycogenを含む扁平あるいは立方状細胞よりなり, malignant potentialを有さない.後者は膵体尾部に多く,導管上皮由来といわれ,上皮は高円柱状,粘液産生を示し著明なmalignant potentialを有する.
腫瘍は大きくなってから発見されることがほとんどで,周囲臓器の圧迫所見が中心となっておこる.したがって臨床所見は腹部腫瘤とともに上部消化管の圧迫症状として出現する.画像診断では,病理組織学的なちがいや腫瘍の発育形式,発生部位のちがいから,それぞれの特長が得られる.血管造影とCT検査にて特に優位な差がみられた.漿液嚢胞腺腫では,血管造影所見はvascularityが高く,腫瘍血管増生と毛細管相での腫瘍濃染を認める.粘液嚢胞腺腫では,膵周囲の血管の圧排が文体となり, hypovascular, ないしはavascularな所見を示す.いずれにおいても炎症所見や血管の侵蝕像はみられない. CT像では漿液嚢胞腺腫では腫瘍の内部は不規則な網状構造を示し,造影剤静注後の造影では腫瘍周囲のstainが著明となる.粘液嚢胞腺腫では,嚢胞部分が主体となり,特長としては腫瘍内に隔壁構造が描出される.これらの特長から比較的正確に両者の診断が可能である.膵嚢胞腺腫の治療は,癌化の問題,膵実質の進行性の変化,他臓器への圧迫による影響を考慮し切除が望ましい.

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