日本臨床外科医学会雑誌
Online ISSN : 2189-2075
Print ISSN : 0386-9776
ISSN-L : 0386-9776
各種胆道疾患(特に悪性疾患)に対する胆汁CEA値の診断的価値について
大西 英胤近藤 喬井上 慎吾津久井 優西野 暢彦大石 崇高浪 厳別所 隆篠原 央宇都宮 利善
著者情報
ジャーナル フリー

1985 年 46 巻 3 号 p. 313-320

詳細
抄録
胆道疾患(特に悪性腫瘍)早期診断の一助として,各種胆道疾患の胆汁中CEA値について検討を行った. CEAはZ-gel法で測定し血漿CEAの正常値は5.0ng/ml以下である.
1) リオンB胆汁のCEA値は,胆嚢癌は平均211.5ng/mlで全例100.0ng/ml以上ではあるが,良性疾患の胆石症においても最高556.0ng,最低0.5ng以下,平均125.6ng/mlと非常にばらつきが多く,消化液中のCEA類似物質の混入が考えられ,現状のCEA測定では診断的価値は低いものと思われる.
2) 術中採取の胆嚢内胆汁は,胆石症で最高213.8ng,最低0.5ng,平均86.8ng/mlとぼらつきを軽度認めるが,胆嚢癌では最高16,238.5ng,最低494.2ng,平均6,291.9ng/mlと著明な高値を示し, stage Iの根治手術可能例でも7,861.6ng/mlであり,胆嚢癌と他疾患との鑑別に有用と思われる.胆管癌,胆嚢ポリープは胆石症とほぼ同じ傾向を示した.又胆石症胆汁のばらつき解明の為の検討では,胆石部位,胆汁中細菌の有無には直接的関係を認めず,術前胆嚢造影陰性例,即ち胆道閉塞が考えられる例に高値を示すものが多かった.
3) 術中又はPTCDより採取の総胆管胆汁は,胆石症は1例を除いて全例5.0ng/ml以下で,平均3.0ng/mlであり,胆嚢癌は平均34.4ng/mlとやや高いが, 1例を除いて胆石症とほぼ同様の傾向を示したが,胆管癌は最高2,171.2ng/ml,平均346.9ng/mlと有意に高値を示した.閉塞性黄疸を示した症例の検討に於ても,減黄処置を行う以前のPTCD胆汁CEA値は,良性の胆石症は全例5.0ng/ml以下で,平均1.8ng/mlであったが,胆管癌は最高2.171.2ng/ml,平均54.5ng/mlで, 1例を除いて全例5.0ng/ml以上を示し,閉塞性黄疸時の良悪性鑑別,特に胆管癌の診断に有用と思われる.
腫瘍より分泌される胆汁CEAは非常に微量と思われ,自験肝門部癌の左右胆汁CEA値の不一致よりみて,胆汁CEAが上昇するには或る期間を要するものと思われる.
著者関連情報
© 日本臨床外科学会
前の記事 次の記事
feedback
Top