日本臨床外科医学会雑誌
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男子乳癌の3例
石井 康祐渡部 洋三小島 一雄城所 仂
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キーワード: 男子乳癌
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1985 年 46 巻 5 号 p. 575-580

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抄録

男子乳癌は比較的稀な疾患とされ,全乳癌の約1%の発生率で,本邦でも約310例が報告されている.今回我々は3例の男子乳癌を経験したので,それらの症例報告および,過去10年間に報告された男子乳癌症例についてその特徴などについて統計学的分析を試みた.発生要因としてはestrogen投与, androgen優位説,女性化乳房症, Klinefelter症候群などのホルモン的背景,慢性刺激,外傷の既往などの器械的刺激,さらに遺伝等があげられている.近年腫瘍のhormone receptor測定が可能となり男子乳癌ではestrogen receptor陽性例が多いことより将来は治療の面でも活用されるであろう.発症年齢は50歳以上に多く,女子乳癌とはそのピークが10~20歳の差が認められた.また主訴は腫瘤の触知がほとんどであり,腫瘤の占居部位は圧倒的にEに多く左右差を認めない.古くから男子乳癌は予後が悪いとされているが,患者の男子乳癌に対する病識,羞恥心などにより病悩期間が長くなり訪医が遅れるのが現実である.そのために腫瘤が増大し予後が悪くなる一大原因になっている.以上のような特徴をもった男子乳癌症例について若干の文献的考察を加えて報告する.

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