肺葉外肺分画症は稀な先天性肺疾患である.肺葉内肺分画症に比べて頻度も少なく,解剖学的にも,発生・成因についても種々の学説がある.今回,著者らは4歳女児で,巨大なニボー状陰影を呈した肺葉外肺分画症を経験したので,文献的考察を加え報告する.
症例は4歳1ヵ月女児で,発熱を主訴として来院した.胸部単純X線上,前中肺野内側に6.5×5.5cm大のニボー状陰影がみられ,抗生物質を投与するも解熱しないため手術を行った.前縦隔に位置する肺葉外肺分画症であり,異常動脈は不明確であった.また,合併奇形は認められなかった.術後19日目に全快退院した.
肺葉外肺分画症は,剖検2,000~10,000例に1例と言われ稀である.本邦では本症例も含めて33例が報告されており,これらの文献的考察を行った.男女差はなく, 10歳未満が61%と幼年者に多く,発生部位も左側76%, 横隔膜上58%と最も多く,左側横隔膜上が好発部位であった.また,半数近くが無症状であり,有症状では呼吸器感染症状が最も多かった.術前に診断が下せたのはわずか20%であり,すべて血管造影がなされていた.異常動脈が不明確30%, 還流静脈が不明確53%であり,血管系の発育が乏しく,またその起始部にばらつきがみられた.合併奇形は58%と過半数以上であり,先天性横隔膜異常症が19%と最も多かった.
小児で感染をくり返す症例や,縦隔腫瘍と鑑別困難な症例,横隔膜ヘルニアなどの症例では肺葉外肺分画症も疑って術前検査を行い,手術へもっていくべきである.また,肺葉外肺分画症の発生・成因は,血管系の発育が乏しく,合併奇形が多いことより,血管系の発育を二次的とした副芽説がより妥当な説と思えた.
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