日本臨床外科医学会雑誌
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慢性膵炎の外科治療成績
とくに膵管非拡張例について
渡辺 栄二平岡 武久加藤 哲夫水谷 純一田代 征記宮内 好正
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1985 年 46 巻 6 号 p. 832-839

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抄録

術後6ヵ月以上の経過観察が可能であった慢性膵炎32例のうち,主膵管径が6mm未満の膵管非拡張例の臨床像,手術成績を分析し,本症に対する外科治療のあり方について検討した.
膵管非拡張例8例のうち,限局性病変を示したものは5例で,これらの膵内外分泌能障害,膵線維化は比較的軽度のものが多かった.頭部に病変のみられた1例は主膵管の狭窄,その他の副病変もなく,疼痛除去のための乳頭膵管口形成術でよいと思われた.尾部に病変のみられた4例は同部主膵管の狭窄,嚢胞,膿瘍などの副病変を伴い,疼痛除去または副病変に対して膵尾側切除術が必要と思われた.
びまん性病変を示したものは3例で,膵内外分泌能障害,膵線維化は中等度ないし高度であった.これらに対しては膵全摘を含む膵広汎切除が適応と考えられるが,単に疼痛除去の目的のみで膵広汎切除を行うことには疑問が持たれる.この観点から主膵管硬化剤注入,膵神経叢全切除術を検討しているが,硬化剤注入に関してはその種類の開発が今後の課題でありその臨床応用には今一つ問題があると思われた.膵神経叢全切除術に関しては未だ1例の経験で,経過観察も3ヵ月と短いが,術後はきわめて良好に経過しており,今後本症に対して期待すべき手術術式と思われた.

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