日本臨床外科医学会雑誌
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異所性乳腺に発生した線維腺腫の1例
越永 従道石井 邦雄荒井 徹新井 徹黒須 康彦森田 建
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1985 年 46 巻 8 号 p. 1085-1089

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抄録
右腋窩異所性乳腺より発生した線維腺腫の1例を経験したので報告する.
異所性乳腺は副乳腺及び迷入乳腺由来とがあるが,両者は, 1) 乳頭, 2) 乳輪,及び, 3) 固有乳管の3つの有無によって区別される.
異所性乳腺に発生した腫瘍の報告例は少なく,我々の調べた限りでは過去50年間に本例を含め本邦報告例は44例であり,その内訳は乳癌34例,乳腺症7例,そして線維腺腫3例であった.また,腫瘍の発生部位は腋窩が圧倒的に多く,その発生母地は副乳腺に多い傾向がみられた.本例は入院時乳癌の発生が疑われたが,異所性乳腺腫瘍の中でも稀れであるとされる線維腺腫であった.本例の如く腋窩に発生し乳頭,乳輪を欠く大きな腫瘤をみた場合,他の体表腫瘤との鑑別も重要であるが,それを異所性乳腺と診断した場合は乳癌の発生も念頭に入れて治療をすすめる必要がある.
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